出願しても受験できない、合格しても辞退する理由とは? 小学校受験4塾による「2023年度 小学校入試の振り返り」
ジャック幼児教育研究所、伸芽会、みつめる21、理英会の小学校受験塾による共同イベント。今回のテーマは、「2023年度 小学校入試の振り返り」。首都圏私立小60校の回答による受験者数の推移や入試内容の分析はもちろん、受験を終えた現年長~実際に私学に入学した小1、2年生の保護者を対象にしたアンケートによるリアルな声も。小学校受験を考えるご家庭必見です!
目次
出願数と受験数に注目! 出願だけして受験しない理由とは?
__新中先生は、出願者の数と実際の受験者数に注目されたそうですが、今回のアンケートから、どのようなことが見えてきましたか?
今回のアンケートでは、出願者3,264名に対し、実際に受験したのが2,717名、つまり願書は出しても試験を受けなかった人が約500名いました。
理由としては、
1位 面接日が重なったため
2位 健康上の理由
3位 試験前に第一志望に合格した
という結果でした。小学校受験では圧倒的に1位の「面接日が重なったため」という理由があげられます。なぜなら、性別や月齢順に考査をする学校が多く、出願してみたいと、わが子の詳しい考査日がわからないのです。ちなみに、今年の試験日程では学習院は5日、慶應義塾幼稚舎では1週間とっていました。
今回の保護者の声の中にも、早稲田実業学校初等部or立教小学校、早稲田実業学校初等部or暁星小学校、早稲田実業学校初等部or学習院初等科、暁星小学校or立教小学校、暁星小学校or学習院初等科というように、考査日が重なりどちらかしか受けられないという方が多数いらっしゃいました。
今後は、あらかじめ考査日を開示したり、重なった場合は試験日程を選択できると、より多くの学校が受験できるのではないかと考えています。(みつめる21 新中義一先生)
女子校の運動課題が拡大! ジェンダーレス化が見られた
__吉岡先生は、2023年度の入試問題について、どのような感想をお持ちですか?
総じて、難しすぎる問題は見られなかったと感じています。幼児の理解の範囲でできるものが多く、少し難しくても工夫すれば解けるものであったと思います。
印象的だったものとしては、西武学園文理小学校のマジックボックスの問題では、答えが何通りもあるという、複合的な能力を問う問題が出題されました。
また、女子校では運動課題が拡大しており、昨今のジェンダーレスが反映されていると感じています。例えば、東洋英和女学院小学部では「ボール付き」の課題が初めて出されましたし、東京女学館小学校や立教女学院小学校では、「早く終わったチームが勝ち」というような競争させる課題が女子校でも出されるようになったのが印象的でした。
面接官の対応や校内掲示物、給食の有無も入学辞退の理由に!
__今回の保護者アンケートの結果では、どのようなことに注目されましたか?
私が注目したのが、複数合格をいただいた際などに入学を辞退した理由です。
1位 給食がないこと(ダントツ)
2位 学力レベルや進学実績に不安
3位 面接や試験での教職員の対応
4位 校内掲示物
共働きが増えた今、「選べるなら給食がある学校を」と考えるのが保護者の本音なのかもしれません。また、面接や試験での教職員の対応がいまいちだったり、説明会などで訪れた際に見た校内掲示物の印象がよくなかった、なども辞退の理由になるというのも興味深かったです。一方で、入学辞退の連絡時の対応が素晴らしいと、その学校が好意的に感じるという声もありました。(ジャック幼児教育研究所 吉岡俊樹先生)
複数校受験する人と1校のみ受験する人の二極化
__宮内先生は、2023年の入試をどのように分析されていますか?
理英会2023年の受験生の入試動向としては、私立のみの受験が74%、国立併願者が10%、国立の実の受験者が16%という結果でした。平均併願数は都内が3.43校、神奈川が2.37校、埼玉が3.56校と埼玉地区の受験者が増えている印象です。全体の併願数としては、多い人が8~10校受けるのに対し、1校しか受けない人が47.8%おり、2極化していると感じています。
入試内容としては、洗足学園小学校や筑波大学附属小学校の推理思考問題など、瞬時の情報処理が求められる難易度の高い問題を出題した学校もありました。
行動観察に関しては、共同でコミュニケーションをとりながら行うものが増え、徐々にコロナ前のような試験に戻りつつあるなと感じています。
__今回の保護者アンケート結果で印象的だったものはありますか?
「魅力を感じていたが出願しなかった理由」で、
・説明会がいつも同じでよくわからない
・縁故が必要だと感じた
・兄妹の合格時に辞退した、また不合格だった
というものがありました。学校側は、こうした情報をオープンにし、学校の魅力をさらに発信していただけることを期待しています。(理英会 宮内仁志先生)
コロナ禍以降、体験の幅が狭く自立の機会が減り、幼い子が増えている
__飯田先生は、2023年の入試をどのように分析されていますか?
行動観察テストが復活したり、ほとんどの面接が対面になったりと“ウィズコロナ”への切り替えが進んだ入試であったと感じます。
一方で、お子さんたちを見ているとコロナ以降、体験の幅が狭まったと感じることがあります。たくさんと大人と接する機会が減り、いつも会う人としか関わらず、加えて親がリモートで家にいるので自立できない。総じて幼くなっている傾向があるように感じます。
私学の幼小一貫教育で少子化をとめる意識改革を!
__アンケート結果からはどのようなことに注目されましたか?
出願校が少ないという点に関しては、共働きが増え「仕事を何日も休めない」という理由や、「感染対策や移動の負担を最小限にしたい」さらに「小学校の時点でこの先の進路を一貫校でいいのか決めかねる」という理由も一定数あるようです。とはいえ、共働きで小学校受験をするには課題もあります。
ワーキングマザーに「仕事と受験の両立で難しかったこと」を聞いたところ
・受験準備にかかる時間と体力
・入試時期と仕事との重なり
・入学後の情報が少なく不安
といった声がありました。
このあたりも今後改善されていくことを期待します。
昨今、先取りで学力をあげ優位に大学進学を目指す中高一貫校にばかり注目が集まっていますが、出生数が80万人を切り人口減少が加速する今こそ、これからの社会を生き抜く力や、そのために必要な力を養う幼小一貫教育の素晴らしさをアピールすべき時なのではないかと感じています。少子化をとめるための意識改革を私学からぜひとも発信してほしいと願っています。(伸芽会 飯田道郎先生)
1960年福井県生まれ。早稲田大学政治経済学部在学中に伸芽会の創立者・大堀秀夫と出会い、入社。子どもの目線に寄り添い子どものやる気を引き出す人気教師として男の子の指導に定評があり、これまで3,000人以上の教え子を難関校へと導く。著書に『9歳までの男の子の育て方』(世界文化社)。本サイトのYoutubeチャンネルであるSHINGA FARMちゃんねるへレギュラー出演中の他、AERA with Kisds+、朝日新聞 DIGITALなど多くのメディアにも取り上げられるなど、幼児教育業界の第一人者として活躍中。
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