中学受験に強い私立小学校が人気の理由とは?【TOMAS×伸芽会対談】
2024年に首都圏で私立・国立中学の受験をした小学生は52,400名と過去2番目の受験者数となり、小学6年生のおよそ4.7人に1人が中学受験をしている計算です(首都圏模試センター調べ )。
そんな過熱する中学受験を回避する目的での小学校受験が増える一方で、中学受験に有利な私立小学校の受験を考える人も増えています。そこで、中学受験に有利な私立小学校が人気の理由や塾選びについて、中学受験のプロである個別指導塾TOMAS の松井誠先生(入試対策室統括責任者)と小学校受験のプロである伸芽会の飯田道郎先生にお聞きしました!
目次
なぜ今中学受験熱が加速しているか
__なぜ今、首都圏で中学受験熱が加速しているのでしょうか?
松井先生:首都圏を例に挙げますと、2015年の中学受験率が12%だったのに対し、2024年は過去最高の15%という結果が出ています(森上教育研究所調べ )。
少子化の今、なぜこんなに増えたかというと、コロナ以降、私立のカリキュラムや教育が評価され、親の意識が変わってきたのが主な理由だと考えられます。また、SNSの普及で多くの情報が手に入るようになり、よりよい教育環境を求める熱心な親御さんが増え、中学受験対策が年々早まっていることも加速の要因だと感じています。以前は塾に通いだすのは新4年(小3の2月)からが主流でしたが、今は小2、小3から通う方も増えています。
親御さんのニーズとしては、
「中高一貫校で人気な学校」
「これから伸びる学校」
「入りやすく出口(大学受験結果)がよいお買い得な学校」
を知りたいという方がとても多いですが、そういう学校はSNSでの発信が非常に上手なので、今の時代にマッチしていると感じます。「20年前は中堅だったあの学校が今やトップ校!」なんていう学校も少なくありません。
御三家中学に受かる子は幼児教育を受けてきた子が多い!?
__難関中学に受かるお子さんは、どのような幼少期を過ごしてきたのでしょうか?
松井先生:TOMASには公立、私立、国立とさまざまな学校に通うお子さんがいらっしゃいますが、私がこれまで見てきた中で感じるのは、「小学校受験を経験した子(幼児教育を受けてきた子)は中学受験に強く、難関校に受かる子が多い」ということです。理由としては、
・学習が小1の時点ですでに習慣化している
・自己肯定感が高い
などが挙げられます。勉強をやらされているのではなく「できる!」という主体的な気持ちで受験に向かうので、指導していてもすごく伸びを実感します。さらに、幼少期から幼児教育をしっかり受けてきたことはもちろん、小学校受験経験者のように教育に関する明確なビジョンのある家庭は中学受験に強いなと感じます。
過去に指導した中で、伸芽会で小学校受験対策をして、宝仙学園小学校→本郷中学・高等学校→東大へ進学したお子さんがいましたが、まさに幼少期からしっかりと準備をして着実に学力をつけていった印象です。
飯田先生:それは嬉しいですね。伸芽会でも幼児期は体験重視の学びがいかに大事かをお伝えしていますが、まさにそれらの経験が学童期の学びの土台を作っていった結果だと思います。
小学校受験の対策では何よりご家庭の教育方針(それがお子さんにマッチしていること)が大事になってきますから、幼児期にご家庭でその方針がしっかりと固まっていると、中学受験でも、学校選びや日々の課題の対策がぶれにくいとも言えますね。
・伸芽会が掲げる3つの教育理念「創造力教育」「体験力教育」「自助力教育」については、こちらをご覧ください。
中学受験に強い私立小学校が人気の理由
__最近では中学受験を見据えた私立小学校が人気だそうですね。
松井先生:小学生はまだ幼いので勉強習慣をつけるのが大変です。加えて、昨今は共働きの家庭も増えているため、自宅で勉強を見る時間もありません。だからこそ、小学校で低学年から学習習慣が身につく指導をしてくれれば、自然と勉強が好きになり、中学受験に対応できる学力もつく。そこにメリットを感じる層が中学受験に強い私立小学校に集まっている印象です。
もちろん公立小学校もすばらしいところはたくさんありますが、いろいろな子がいますから「楽しく学校に通うこと」「いじめ・暴力がないこと」が最優先になります。
親が「勉強をさせたい」と考えたときに必ずしもよい環境にいるとは限らないのに対し、私立小学校は、しっかりした子どもと親御さん(勉強もさせたいという考え)の集まりが教育の質を高めているのではないでしょうか。
飯田先生:確かに、最近では過熱する中学受験を回避するための小学校受験という考え方に加えて、中学受験を見据えた小学校受験をされる方も増えています。
中学受験に強い私立小学校について少し補足しますと、実は私立小学校から上に進む中・高の中には女子校から共学になったというケースが多いんです。たとえば、宝仙学園小学校も元々は幼稚園から小学校までが共学で、中学からは女子校でした。
そのため男子は必然的に中学から出ないといけない(=中学受験必須)ので、「学校でしっかりと中学受験対策をやりましょう!」という流れができたのです。そういう経緯もあって、今の中学受験に強い私立小学校という位置づけになっている背景があったりします。
・中学受験を回避するための小学校受験に関しては、こちらの動画をご覧ください。
『小学校受験と中学受験の違いについて 第3回「中受回避の小学校受験」 』
洗足学園小学校の魅力と中学受験対策について
中学受験を視野に入れた私立小学校では、実際にどのような受験対策をしてくれるのでしょうか? ここでは人気の洗足学園小学校と宝仙学園小学校について解説していきます。
洗足学園小学校の魅力
「社会のリーダーを育てる」という目標を実現するため、望まれるリーダー像を明確にしながら、独自の教育プログラムを導入し、リーダーとしての礎を作り上げている。
さまざまなソフトを内蔵したPCやデジタル機材で楽しみながら科学、工学、数学などを学べる探求教育にも力をいれており、2023年に創設された「Base_C」というスペースでは、STEAM教育ツールを整えた自由な環境で新たな能力や発想、知的好奇心等を引き出す教育も話題です。
学校HP(https://www.senzoku.ed.jp)
・STEAM教育関連について、もっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
『灘高からMIT大学院卒の「リトル孫正義」が起業した小学生対象のオンラインSTEAM・探究教育サービスとは?』
洗足学園小学校の中学受験対策
・「今学ぶことの重要性」に加え「進路を考える」授業も実施
・保護者が必要に応じて中学校選びに関するさまざまな相談ができる
・有名中学に毎年多数の卒業生を送り続けている独自の情報も提供可能
2023年は麻布中学校、開成中学校、桜蔭中学校、渋谷教育学園渋谷中学校など、難関中学に多数合格しており、男子128/129名、女子は126名(内部進学5名)全員が私立中学に進学しています(学校HPより)。
宝仙学園小学校の魅力と中学受験対策について
宝仙学園小学校の魅力
「品格と知性を兼ね備えた人を造る」の建学の精神のもと、仏教哲学を取り入れながら、豊かな人間性と学力を育む教育がモットー。異学年交流の活動が盛んで、学年を超えた仲間意識で学びを活性化させている。また、子ども自身がゴールを設定し、友だちと正解のない問いを探究し課題解決に向かう探究・プロジェクト学習も行っている。
全員が中学受験をするため、小学校生活を通して子ども・保護者と学校が一緒になって、進学先を考えていけるのも魅力のひとつです。
学校HP(https://www.hosen.jp)
宝仙学園小学校の中学受験対策
・5年から国語と算数の習熟度別の特別授業を週2回行い、学力にあった授業を展開
・6年の1学期には小学校の学習内容を修了させ、その後は中学受験に向けた演習授業を行うため、進学塾に通わずに合格する生徒も多い
・6年の2学期に、オリジナルの校内テスト(模擬試験)を実施し、毎年の受験データと照らし合わせ、進学指導を考える上での重要な資料にしている
2023年は麻布中学校、開成中学校、早稲田中学校、慶應義塾中等部、吉祥女子中学校、女子学院中学校など、難関中学に多数合格(学校HPより)。
小学校受験と中学受験、どちらにするか決めるポイント
__最後に、小学校受験と中学受験どちらにするべきか迷っている方に、塾選びを含めてアドバイスいただけますでしょうか。
飯田先生:お子さんの個性や発達段階はいろいろですが、受験を考える時期に「まだ早い」はありません。親御さんが「この学校素敵だな」「この環境いいな」と思ったら学校をお調べになって見学に行くなど、まずは行動することです。
親の本気度は小学校受験でも中学受験でも大事になってきますが、大きな違いがあるとすれば試験内容でしょう。
小学校受験は、6歳という年齢における発達段階をふまえて、学校側は個別的な課題だけでなく集団の中で自分の個性を発揮できる子を求める試験になるため、伸芽会では創設以来ずっと集団指導にこだわっています。
小学校以降の抽象化された学びにおいては、TOMASのような個別指導はとても有効ですが、その前段階である未就学児の時期は、集団で「学びが楽しい」ということをぜひ身につけてほしいと考えています。
松井先生:受験は親御さんが気になったときがはじめどきです。対策する時期については、どちらも早く始めて損はしないでしょう。一般的に、中学受験は親の負担が7割と言われていますが、残り3割の子どもの実力を引き出すのは100%親の役目になります。
中学受験で親御さんがすることは多岐に渡りますし、メンタルのアップダウンも激しく、何より先生の言うことは聞くが親の言うことは聞かないのが12歳ですから、塾選びはとても重要です。
集団塾でも個別塾でも信頼できて相談しやすい塾を選ぶこと。合格には本人、親、塾が三位一体になることが何より大切です。
・小学校受験と中学受験に関しては、こちらの関連記事もご覧ください!
『一貫校に向いているのはどんな子? 知っておきたい「一貫校」のメリット・デメリット 』
中学受験はいつから何を準備すべき?親が知っておくべきこと
SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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