慶應義塾幼稚舎を目指す方必見! 幼児教室の「慶應義塾幼稚舎クラス」をレポート
私立小学校の最難関と言われる慶應義塾幼稚舎。その入試にはペーパーテストや面接はなく、絵画制作や集団遊びといった行動観察で決まるといいます。そこで今回は、幼児教室伸芽会の「慶應義塾幼稚舎クラス」の授業にお邪魔して、どんな子たちがどんな授業を受けているのか、レポートしたいと思います。
お話を伺ったのは、伸芽会自由が丘教室で慶應義塾幼稚舎クラスをご担当されている黒田善輝先生と大橋徹也先生です。
目次
慶應義塾幼稚舎の入試にペーパーテストがない理由
__慶應義塾幼稚舎の入試にはなぜペーパーテストがないのでしょうか?
黒田先生:約30年前までは慶應義塾幼稚舎(以下:幼稚舎)にもペーパーテストや親の面接はあったのですが、大学の湘南キャンパス設立などと同じ頃にペーパーテストを取りやめ、「遊び」を主体とする入試に変わりました。その理由としては、学校側が「これからは何かひとつの学問や見方だけで問題を解決できるような時代ではなく、ものごとをさまざまな角度から見たり、関連づけて解決できる人材が必要である」と考えたからです。そのために必要な、年齢に応じた経験や想像力、友達との協調性、表現力といった資質をテストで見極められるよう、遊びや絵画制作といった、いわゆる“答えのない課題”を取り入れているのです。
慶應義塾幼稚舎に合格するために必要な資質とは?
__幼稚舎に合格するのは、どんなタイプのお子さんですか?
黒田先生:個々の想像力や表現力はもちろんですが、集団行動における協調性やリーダーシップも大事な資質になってきます。
たとえば4~5人で1グループの集団ゲームは、一人では目的を達成できないものになっていますから、パッと考えを思いつく個人の瞬発力に加えて、初めて会うお友達への声がけや仲間との連帯感も不可欠です。幼稚舎に合格されるお子さんたちは、人の意見を聞かず自分だけが前に出るのではなくて、お友達の意見を聞いたり共感したり、ときに提案しながら、全体を見て行動できる力があるお子さんが多いと感じます。
気になる伸芽会の「慶應義塾幼稚舎クラス」が他のクラスと違う点
__伸芽会の「慶應義塾幼稚舎クラス」では、ペーパー対策は行わないのでしょうか? 皆さん幼稚舎以外の対策はご自身でされるのでしょうか?
黒田先生:このクラスを受講される方の多くは幼稚舎を志望されますが、併願で他の学校も受験されます。幼稚舎以外の学校はペーパーテストがあるので、「対策は大丈夫?」と不安になられるかもしれませんが、ご安心ください。
なぜなら、幼稚舎クラスで行う絵画やグループ遊びでは、作品や遊びに対する思いやアイデアを伝えることに重きがおかれているからです。他者に浮かんだことを伝えるには、「画用紙に何をどのように配置して描いたら表現できるか」「誰のどの考えを活かせば問題解決に繋がるか」など、部分と全体を考える力が必要です。そうした体験は、数や図形などのペーパーの問題解決などにも通じるため、知らず知らずのうちにペーパー校の問題にも強くなっていくのです。
__伸芽会の「慶應義塾幼稚舎クラス」で大事にしていることは何でしょう?
黒田先生:このクラスはいわば「定まった答えがない」授業ですから、「難しい」よりも「楽しい」という気持ちを大事にしています。正解がないということは間違いもないということですから、自信さえつけてあげればいいのです。相手に何かを伝えるには「自信、表情、意欲」がとても重要です。これらは子どもに限らず、コミュニケーションにおける大事な部分ですよね。ですから、授業ではお子さんたちを非難するのではなく、自分を出しやすい環境作りと、その子のいいところを引き出すような指導を意識しています。
ご家庭でも、「できた」と思えるような体験や自己肯定感を持てる声がけをお願いしています。
絵画制作の授業で大事なのは自信と表現力!
__具体的にどのような授業をしているのでしょうか?
大橋先生:絵画制作ではお題を与えられて、それに対する絵を描いたり、制作をしていきます。その過程で教師が「何を描いているんですか?」などと質問をしていきます。そこで見ているのが、「その子がこれまでどんな体験をしてきて、今どんなことに興味があって、将来どのような夢を持っているのか」。つまり、子どもたちの表現する絵や制作物には、ご家庭の教育方針や価値観があらわれてくるということなんですね。
この日は魔法のランプがテーマでした。課題としては4つ。
① 自分で考えた「壺」を粘土で作る
② 魔人を出す「おおまじないのことば」を考える
③ 魔人に出してほしい「もの」の絵をカードに書く
④ 出してもらったもので願いを叶えている様子を絵で描く
これらを集団遊びや運動も含めた90分くらいの時間の中で、順番にじっくりと取り組んでいきます。頭を使いながらも楽しい作業なので、皆飽きることなく集中して取り組んでいます。最初は慣れないと手が止まってしまうお子さんもいますが、周りのお友達の様子を見たりしながら、回数を重ねるうちに表現できるようになっていきます。
__制作途中は、どんな声がけをしたり、お子さんたちのどこを見ているのでしょうか?
黒田先生:②のおまじないの言葉を作るのが難しい場合は、たとえば「椅子と机」をさかさまに読んで「えくつとすいー」、自分の名前を逆から読んで3回繰り返したりと、ヒントを出しながら、聞いていて楽しくなる言葉を作ってみましょうと声がけします。
① の願いごとは、想像をいかに遠くまで膨らませられるかがポイントです。「魔人にお金を出してもらっておもちゃを買う」ではちょっと想像力に乏しいと感じてしまいますが、「雲の上に遊園地を出してもらって、そこで空を飛びながら遊びたい」だったら聞いている方もワクワクしませんか?
__相手の心に響く絵画制作のコツはありますか?
大橋先生:やはり、「恐竜」「虫」「宇宙」「宝石」「お菓子作り」など何でもいいので、今熱中していることや得意なことがあるお子さんは、自信を持って表現できていますし、話を聞いていてもこちらが「もっと聞きたい」と感じます。
本番の試験でも、先生が「この子の話をもっと聞きたいな」と思うような受け答えをしたお子さんが合格していきます。たとえば過去に、生き物が大好きな男の子が絵画制作の試験で虫の絵を描いて、質疑応答で先生と虫談義で盛り上がり、「先生にあとで一匹あげるから住所を教えてください」と言ったそうです。その子の虫に対する愛や熱中度と共に、出会った人の興味や心に寄り添おうとする温かさが伝わるエピソードですよね。
集団ゲームで大事なのは状況判断力と友達とのコミュニケーション力
__集団ゲームでは、どんなことを行って何を見るものなのでしょうか?
大橋先生:運動を含めた集団の課題では、サーキット(連続運動)や集団ゲーム(行動観察)があります。5人程度のチームに分かれた集団ゲームには、勝ち負けがあります。ですから、いかに仲間とコミュニケーションをとりながら勝利に向かえるかがポイントとなるわけです。
この日は、「サイコロの出た目の人数だけ前に出て、お題の物になりきる」というもので、周囲との連携を臆すことなく行うことを学ぶ活動でした。
黒田先生:お子さんの性格によって、「常に前に出ようとする子」「もじもじして出られない子」がいますから、周りを見て一度も出ていない子がいれば、誘ってみたり譲ってあげることができたらいいですね。
消極的なお子さんには、途中で「やらないでそこに立っていて楽しいですか?」と聞くと、「嫌な気持ち。気持ちがモヤモヤする」と教えてくれました。「だったらどんどん前に出た方が楽しいですよ」と、前に出ていける気持ちを盛り上げる声がけを行いました。
大橋先生:この日のサーキットでは、「素早く走り、クマ歩きでコーンを2周した後、帰りは途中で足を替える片足ケンケンで戻って来る」というものでした。お手本で教師が本気でやるよう意識しています。でないと、子どもたちは競走というスイッチが入らないことがあるからです。
サーキットでは、
① 指示を理解しているか
② 素早く一生懸命できているか
がポイントになりますが、もし手順を間違えてしまったら、もう一度間違えた箇所から戻ってやり直すでもいいのです。一番よくないのは、間違えた場で固まってしまい助けを求めたり、間違えたり失敗した気持ちを引きずりながら中途半端な活動になってしまうことです。
いかがでしたか。一連の授業を拝見していて、取材している私たちにも全く恥ずかしがらずに自信を持って自分が描いた絵の説明をしてくれたり、元気よく挨拶してくれる様子がとても印象的でした。生き生きとした個性に加え、協調性やリーダーシップが自然と身についていく授業は、決して「受験のための対策」というものではなく、まさにこれからの時代を生きるのにふさわしい力だなと感じました。
SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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