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学校選び、試験内容、面接対策、【2020年コロナ禍の小学校入試】どうだった? 

学校選び、試験内容、面接対策、【2020年コロナ禍の小学校入試】どうだった? 

2020年のコロナ禍での小学校入試は、受験生はもちろん学校側もイレギュラーな事の連続で、さまざまな対応が迫られました。そこで、品川翔英小学校 教頭の髙山先生と伸芽会教育研究所 所長の飯田先生に、コロナ禍の入試での苦労や私学のさまざまな取り組みを伺ってきました。さらに、両親の働き方の変化で見えてきた学校選びの変化や2021年度の小学校入試の予測も注目です!


(お話を伺った先生)

髙山松三先生(写真左)
品川翔英小学校 教頭。2020年4月からの中学共学化に伴い、小野学園小学校から名称を変更した品川翔英小学校。「6年後に広がる未来を創る」でモットーは、頭と心と体の3つをバランスよく育てる教育を掲げている。学校HP www.shinagawa-shouei.ac.jp/

飯田道郎先生(写真右)
伸芽会教育研究所 所長。子どもの目線に寄り添い、一人ひとりのやる気スイッチを引き出す人気教師。男の子の指導に定評があり、これまで3,000人以上の教え子を難関校へと導く。著書『9歳までの男の子の育て方』(世界文化社)。YouTube「SHINGA FARMちゃんねる」では飯田流子どもを伸ばすコツを配信中。

コロナ禍の入試はどんな苦労や変化があったのか

__2020年コロナ禍の入試で特に苦労したことは何ですか?

髙山先生:やはり感染防止対策ですね。検温や手指消毒等、マスク、三密を避けた安心安全な試験をどうすべきかを第一に考えることとまた、新型コロナに感染された場合、受験生及び保護者の方に対する受験の機会を公平に設けることです。試験中は飛沫を防ぐためにマスク着用で距離を取って対応していましたから、去年までとは試験の雰囲気も全然違いましたね。

飯田先生:春の緊急事態宣言から自粛期間へ突入。幼児教室としては、そんな中でも幼児の指導をどうすべきかすごく悩みましたね。入試は例年通り実施するのか、学校側への情報収集をしっかりしつつ、GW明けには可能な部分はリモートに切り替え授業を行いましたが、やはり夏合宿ができなかったりと体験不足は否めませんでしたね。さらに、マスクをしながらの面接では、子どもの表情が見えにくい、マスクが気になってしまうといった点も苦労しました。
髙山先生のところは、学校名を変えて最初の入試ということで、本来ならば何か独自色を出した試験にされたかったのでは?

髙山先生:そうですね。ですが、かえって本質に立ち返って自分たちの学校が求める4つの子ども像(自分でできることをしっかりやれる、自分を大切にする、友達と仲良くできる、人の話を聞ける)を見直し、それを問う試験になったかなと思っています。

__コロナ禍での試験は、実際にどのような変化がありましたか?

髙山先生:密を避けるため、学校に来る時間を短縮し、試験内容の時間も例年より短くなりました。よって試験内容も、基本を中心にした試験問題となり、例年に比べるとどこの私学も易しめで基本を問う問題が多かったのではないでしょうか?

飯田先生:おっしゃる通りです。加えて、密を避けるために行動観察や運動テストをなくした学校や、少人数にして子ども同士の接触がない課題に切り替えたり、面接にzoomを使った学校もありました。どの学校側も手探りでの試験だったのではないかと感じています。

__学校選びに関して、受験者の動向に変化は見られましたか?

髙山先生:今年はコロナ禍でのはじめての入試で、感染状況によっては入試がなくなるかもしれないという先が見えない不安からも組み入れて、1人あたりの受験する学校がやや増えた印象です。学校説明会はzoomを使ってオンラインで何度か行ったのですが、手軽に自宅で見られるということで、例年よりも多くの方がご参加いただけました。

飯田先生:学校選びについては、実際に足を運んで見られないのは厳しかったですね。学校側もちょうど感染状況が落ち着いた夏頃に、年長児だけは事前予約して来校できる日を設けたりと、密を避ける工夫をされていたと思います。あとは、親御さんたちがコロナ禍でオンラインやリモートワークが加速し、必ずしも会社から近い都内に住む必要もなくなったご家庭は、千葉や埼玉といった関東近郊の私立小学校も候補に入れるという流れも出てきました。

ピンチをチャンスに変えた私学の対応とは?

__休校でのオンライン対応の早さは、私学ならではと感じましたが、私学にとってコロナは追い風にもなっていますか?

飯田先生:大いにあると思います。私学はやはりICT導入の面でも既にタブレット1人1台は当たり前という学校も多いので、学校が休校になった際も、公立小学校と比べてオンライン授業への切り替えといった対応の早さが浮き彫りになりましたね。とはいえ、ご苦労も多かったのでは?

髙山先生:うちの学校では、4月5月を休校としオンライン授業に切り替えましたが、最初は教材をどうするか、どのように配信するか、誰が行うか、家庭側のICT環境はどうかなどすべてが手探り状態でしたね。とはいえ、先生たちが工夫しながら授業を配信したり、児童たちの宿題をオンライン上で提出してコメントを書いて返すといった流れも次第にできるようになりました。

__学校行事なども例年通りにはいかなかったと思うのですが、私学の対策とは?

髙山先生:大規模な公立校などは運動会などの行事がすべて中止というところも多かったと思うのですが、品川翔英は1学年1~2クラスという小規模なので、学年を分散させて運動会も行いました。やはり1年生や6年生などは特に思い出になる年ですから、学校側としてもなんとかやってあげたいなと。

飯田先生:まさに私学は学校判断のトップダウンで物事をジャッジできるという例ですよね。ある私立一貫校の先生に、休校の3ヵ月間の遅れをどう取り戻すのかとたずねたら、「1年では埋められないけど、一貫校は中学校まででも9年間ありますからね。中学とも連携して行事や学びを巻き取れますよ!」という言葉がとても印象的でした。私学はフットワークの軽さでピンチもチャンスにできると確信しましたね。

コロナ禍の試験でも「変わらないこと」

__一方で、コロナ禍の試験でも「変わらないこと」とは何でしょうか?

髙山先生:家庭生活がきちんとできているか、でしょうか。自粛期間で幼稚園や保育園がなくなったとしても、だらだらとパジャマで過ごすのではなく、規則正しくメリハリをもって生活できていたご家庭は強いと思います。加えて、ご両親が在宅ワークになったことで、面接をしていてもお父さんとの関わりがよく見られたと感じています。

飯田先生:おっしゃる通り。家にいた時間をどう過ごせていたかは合否の分かれ道だったと思います。願書でも、例年だと「地方の〇〇博物館へ出かけた」とか、「こんなところへ旅行にいって体験をしてきた」といったものが多いのですが、今年は「お家の車の洗車を手伝ったらホースの先に虹が出た」とか、「毎日自転車で近所を散歩してこんな発見があった」とか、家族との時間をより感じられた年でしたね。ここでもピンチをチャンスに変えられたかどうかがポイントだったのかと思います。

コロナ禍でもブレない私学は強い!2021年の入試はどうなる?

__2021年の入試はどのように見据えて対策をされる予定ですか?

飯田先生:この冬の感染状況やワクチンの状況にもよるところは大きいですが、現状では、おそらく2021年も2020年とほぼ同じなのではないかと見ています。またどこかで緊急事態宣言が出ないとも言い切れませんから、伸芽会でも細かい対策を考えているところです。ただ、幼児は発達段階に適した負荷が子どもを伸ばすので、何でも前倒しにすればいいということではありません。

髙山先生:同感です。まずは子どもたちの安心安全が第一ですから、おそらく2020年がベースになった入試になるのではないかと考えています。学校側は、受験生はもちろん、在校生の学びや体験も安心安全に確保することも考えていかないといけませんから。

__最後に、来年以降、小学校受験を考えている保護者の方へメッセージをお願いします!

髙山先生:予測不能な今の時代では、新しい思考の在り方が問われています。そんな新しい時代に打ち勝てる子、自分で調べて発信できる子を育てていきたいと思っています。
時代に打ち勝てる子、「思考力・表現力・判断力」すなわち自分で調べて自分で消化して、自分の言葉で発信できる子を育てていきたいと考えています。

飯田先生:学校が休校になって小学生の親御さんたちは、いかにこれまで学校がわが子を守ってくれていたかを実感したはずです。だからこそ、対応の早さや内容がコロナ禍でもブレない私学は強いんだと感じています。一方で、決して公立を批判するわけではありませんし、先生一人一人はとても頑張っていらっしゃると思いますが、公立小学校は、コロナ禍でそもそも行われるはずの2020年の教育改革が後ろ倒しになったことも否めません。公立は、さまざまな対応の限界があることが分かり、今まさに見直すときなのではないかと思っています。ぜひその辺も考慮した上で、小学校受験をご検討いただければ幸いです。

監修者プロフィール
飯田道郎

1960年福井県生まれ。早稲田大学政治経済学部在学中に伸芽会の創立者・大堀秀夫と出会い、入社。子どもの目線に寄り添い子どものやる気を引き出す人気教師として男の子の指導に定評があり、これまで3,000人以上の教え子を難関校へと導く。著書に『9歳までの男の子の育て方』(世界文化社)。本サイトのYoutubeチャンネルであるSHINGA FARMちゃんねるへレギュラー出演中の他、AERA with Kisds+朝日新聞 DIGITALなど多くのメディアにも取り上げられるなど、幼児教育業界の第一人者として活躍中。


著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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