伸芽会、ジャック、理英会が一同に!2020年首都圏小学校入試を徹底分析
森上教育研究所(http://www.morigami.co.jp/)が主催する、教育者向けの私学初等教育セミナー。
448回目となる今回は、伸芽会、ジャック幼児教育研究所、理英会と3社の幼児教室の人気講師らをゲストスピーカーに招いての「首都圏の小学校入試の結果と分析」が行われました。幼児教室3社が一同に会する貴重なセミナーの模様をお届けします!
目次
小学受験者数は本当に増えているのか
第一部は、教育図書21の新中義一氏による、昨今の小学校受験の実情から。
「この5年間で子どもの出生数は3.2%減っているにもかかわらず、小学校受験者は8.7%増加しています。この数字をどう見るか。私たちが行った私立国立小学校のアンケート全61校での総数は増えているが、45校が未回答であること。また、一人当たりの併願数が二極化(1~2校と本命を絞って受験するタイプと、6~7校と多くを受験するタイプ)しているので、実際どのくらい増えているかを数値化するのは難しいのが実情です。さらに、都内の2019年のような新設校ができる年は受験熱がヒートアップします。とはいえ、子どもが減る中、私立小受験者数が増えている傾向は確実であり、印象として震災前の水準に近づいているのは間違いありません」。
続いて第二部では、伸芽会の飯田道郎先生、ジャック幼児教育研究所の吉岡俊樹先生、理英会の宮内仁志先生らによる「受験生動向からみた今春入試大手塾分析」が行われました。
1960年福井県生まれ。早稲田大学政治経済学部在学中に伸芽会の創立者・大堀秀夫と出会い、入社。子どもの目線に寄り添い子どものやる気を引き出す人気教師として男の子の指導に定評があり、これまで3,000人以上の教え子を難関校へと導く。著書に『9歳までの男の子の育て方』(世界文化社)。本サイトのYoutubeチャンネルであるSHINGA FARMちゃんねるへレギュラー出演中の他、AERA with Kisds+、朝日新聞 DIGITALなど多くのメディアにも取り上げられるなど、幼児教育業界の第一人者として活躍中。
伸芽会 飯田道郎先生「ワーキングマザーの私学に関する情報がまだまだ偏っている」
新中先生のおっしゃる通り、少子化のわりに小学校受験の倍率は上昇傾向になります。とはいえ、幼児教室に来られる親御さんを見て思うのが、特にワーキングマザーの私学に関する情報がまだまだ偏っているということ。「自分は中学受験をしたからわが子も中受でいい」とか「私学は敷居が高く、コネがないと入れない」といった情報を信じている方が多い印象です。ではなぜ公立に通わせるのかと聞くと、「公立には特に期待していない」とおっしゃいます。小学校6年間はなんのためにあるのでしょうか。4年生から塾に使う費用を考えると、私学もそんなに無理な話ではありません。こういったお話を踏まえつつ、私学でのさまざまな取り組みや魅力をお伝えすると、小学校受験に切り替える方が多くいらっしゃいます。
つまり、親御さんの私学に対する意識を変えてあげることで、小学校受験の熱はもっと盛り上がるのではないかと思っています。
今の小学校受験で問われているのは協調性と工夫する力です。幼児期の教育は、体験から積み上げる学びの基礎を作り、幼小一貫の学びを意識し、中高にもつながる大切なときです。私たちは決して暗記型の詰め込みではなく、親子での学びを大事にしてもらいたいと考えています。
ジャック幼児教育研究所 吉岡俊樹先生による、2019年有名私学の試験を解説!
学校によりさまざまなペーパーテストがありますが、2019年の傾向としては、生活や理科を問う問題や、答えがひとつではない“考えさせる問題”が多く見られた印象です。
聖心女子学院初等科
ぬいぐるみ(対象物)を懐中電灯で照らした際の影の映り方を問う問題。これは、理科的な知識はもちろん、生活の中での経験が求められるものです。遊びの中でこういった経験をしているかどうかがポイントになります。
桐朋学園小学校
かごの中に用意された5色の磁石を、色が上下左右重ならないように升目に並べていく個別試験。答えがひとつではないので、どのように考えて取り組むのかを見るものです。ペーパー対策を中心にしてきた子は、テクニックに頼り切りで「どうやったら正解か」を求めるあまり失敗ができなくなります。そうではなくて、自由な発想でやり直す、チャレンジ精神を求めていると言えます。
暁星小学校
集団でボール回しゲームをする行動観察の試験です。受けとると1ポイント。マットから出ない、横取りしないがルール。どの子に投げるかは自分が決めるので、「僕のところに投げて!」といった発言力や積極性、協調性や気配りも見ています。点数は自己申告なので正直さも見られます。
慶應幼稚舎
行動観察で「お友達と相談して決めましょう」という問題はよくありますが、実はあまり差が出ないもの。なぜなら、子どもたちは皆対策済みなので、誰かが提案すると「うん、いーよー」と簡単に決まってしまうからです。そのため、慶應幼稚舎では、数人のグループに分かれたボール投げを3戦勝負の競争とし、勝つための相談を合間にすることでその子の特性を見るという試験が行われました。
青山学院初等部
最近増えてきている、生活能力を問う個別テストです。おでかけする荷物を、使う順番を考えて詰めていくというもの。海に行く、ごはんをたべる、水遊びをする……。日頃どうやって準備しているか、楽しみながらできるかがポイントになります。
こういった問題が試験に増えれば、マナーやしつけも気を配り、家庭教育が充実していくと思うので、個人的にはぜひ増やしてほしいですね。
理英会 宮内仁志先生「この先生にわが子を預けるイメージを持てるか」が重要!
幼児教育から受験の世界へと発展していった理英会では、幼児期の成長分析を大事にしています。たとえば、2~3歳は大人の真似をする「模倣期」、自我が芽生える3~4歳は「自立期」、意思が芽生える9歳まではその延長でさまざまな成長がありますが、その間に小学校入試があるのです。
試験で問われる能力としては、思考力と言語力が優れている子はどんな能力も高い印象ですが、今後はただ答えに〇をつけるのではなく、考える問題が増えてくると予想しています。
とはいえ、小学校入試の準備をし始める年中~年長さんの行動は、まだまだ発達途中です。どう見ていくかはすごく難しいですが、自分の中から言葉が出てくる場面があると、その子が光る場面になるのではと考えています。
そのためには、親子の関わりを養う家庭教育は必須です。模擬テストで光る子は、親子のコミュニケーションがよくとれているご家庭です。
試験後に「入試行ってきたけど楽しかったよ!」と子どもたちから聞くと安心します。入試そのものの雰囲気も学校の大切な要素だと思うからです。一方で、「学校の中をもっと知りたい!」という保護者の声も多く耳にします。
私が願うのは、試験を行う学校側に、現場の先生の声をもっと出してほしいということ。「この先生にわが子を預けるイメージを持てるか」。それが見られると、保護者も安心できるのではと思います。
幼児教育のプロたちがこれからの私学に求めること
最後に、幼児教育のプロである4人に、これからの私学に求めることをお聞きしました。
「非認知能力、アクティブラーニング、英語……。2020年教育改革は、これまで私学が行ってきたことなのです。保護者の方々は、まだまだ偏差値で学校を選びがちなので、今こそ、私学はその中身を、自身をもってアピールする絶好のチャンスなのです。学校の連携イベントや、キリスト教系学校イベントなどを実施されている学校もありますが、マスコミを絡めた私学のアピールをどんどんやってもらいたいですね」(伸芽会 飯田先生)
「私も同感です。今はネットやSNSでも手軽にアピールできる時代です。各私学の先生方が生の声でアピールする場を設けて発信していただきたいですね。そうした先生たちの教育論は、保護者にとってもきっと魅力につながるはずです」(ジャック幼児教育研究所 吉岡先生)
「私どもは国立小受験塾も経営しているのですが、国立小の受験者数は圧倒的に増えています。“抽選があるから、チャレンジしてみようか”という敷居の低さはあると思います。ですが、国立志願者の方に私学を受験しないのかと聞くと、“今からじゃ間に合わない”“コネがないと無理”と、私学の情報を持っていない保護者の方が多いんです。たとえば、幼稚園や保育園に私学の説明会を行うなど、国立や私学を受けてみようという小学校受験潜在層へのアプローチはぜひしていくべきだと思います」(教育図書21 新中氏)
「理英会が運営する保育園で受験をする層は10%以下です。日本全体でも共働きが7割を超える今、私学や小学校受験について正しい情報を知る機会は求められており、その市場はまだまだあると感じています。わが子をいい環境に行かせたい、でも学校の実態が掴みにくいというのが実情で、小中高を飛ばして大学のイメージで学校を選ぶ方もまだまだ多いです。そうした保護者の悩みを解消するためにも、早い時期(低年齢)からの説明会を実施するなど、学校のファンを作るための工夫が今後は必要ではないでしょうか」(理英会 宮内先生)
普段中々聞くことができない、幼児教室×私学の先生たちの熱い話し合いの様子はいかがでしたか。今後は学校側も情報を積極的に発信・開示していくことで、保護者の認知が進み、小学校受験が限られた人が行うイメージ先行型ではなく、より多くの人が挑戦できるわかりやすいものになっていくのだと思います。もちろん、SHINGA FARMでもそのための様々な情報をお届けできるよう尽力してまいります!
SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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