ワーキングペアレンツの教育フォーラム&合格報告会 前編「脳研究者、池谷裕二先生の幼児教育」
2020年第一回目となる伸芽会セミナーは、共働き家庭に向けた教育フォーラムです。第一部は脳研究者である東京大学薬学部教授、池谷裕二先生が語る幼児教育について。第二部では2019年の名門幼稚園・小学校に合格された共働き家族によるインタビューです。これから受験をお考えの共働きの親御さん必見です!
東京大学薬学系研究科で薬学博士号を取得後、コロンビア大学・生物科学講座・客員研究員を務め、2014年から現職である東京大学薬学部の教授に。脳の海馬を研究し、文部科学大臣表彰 若手科学者賞(2008年)、江橋節郎賞(2017年)他数々の賞を受賞している。著書に『生きているのはなぜだろう。』(ほぼ日)、『メンタルローテーション』(扶桑社)などがある。
目次
子育てに苦労が多いのはヒトが知的生物である裏返し
脳の研究から申しますと、生まれたばかりのヒトよりもヒヨコの方が賢いんです。それは人間の脳が学習していくものだから。つまり、子育てに手間暇がかかり苦労が多いのは、ヒトが知的生物である裏返しと言えます。他の生き物に比べて親の努力が高い分、赤ちゃんは堂々と未熟でいられるのです。
幼児の脳は大人の言うことを聞くようにデザインされていない
なぜ子どもは親の言うことを聞かないのでしょうか。大昔の原始時代などをイメージすると、お母さんは常に乳飲み子を抱えるか妊娠しているか。つまり、多くの子どもたちは兄弟によって育てられてきたので、子どもの脳は親よりも周囲の子どもの言うことを聞くようデザインされていたのです。現代においても子どもは子どもから影響されやすいことは変わりませんから、親はどういう環境に子どもを置くか、といった学校選びはすごく重要ということなんです。極論を言えば、親が子どもにできることは環境を整えることだけかもしれません。
良い子の定義について考えたことがありますか?
良い子=親や先生にとって都合のいい子とも解釈できます。でも果たして、それが本当に良い子なのでしょうか。これからの時代は、親や先生に依存しなくても立派な人間になることが良い子なのではないかと私は考えます。そのためには「場を読む力」、「空気を読む力」が大切です。また、情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、「隠れた部分も悟れる力」も大切です。その部分では、やはり幼少期の親や先生の技量が発揮されると考えます。
脳科学的におすすめする、褒め方と叱り方
褒めると叱るはどちらがいいか、こうした研究はさまざまな見解がありますが、人間は「よくやった、頑張ったね」とプロセスを褒める方が伸び、粘り強い子になると言われています。とはいえ、最近では、ただ褒めたり叱るというのは親のエゴであり逆効果になることもわかってきました。
100点をとったら「偉いね」ではなく「気持ちいいね」、研究でいい結果がでたら「がんばってるね」ではなく「このデータ面白いじゃん」、絵を描いている子に「絵が上手ね」ではなく「お母さんのこの絵とても好きだわ」、こうした感情に訴えるような声掛けが子どもを伸ばすと言われています。
叱る際も、「お片付けしないと遊びにいけないよ」といった二重否定は避け、「お片付けしたら遊びに行こうね」とプラス思考の肯定表現にすること。「片付けなさい!」と怖い顔をするよりも、親が笑顔で片付けはじめて、一緒にやりだしたら「ありがとう」と感謝する。そんな対等な関係でいることが子どもにとっては一番なのです。
やればできる!の罠に気を付けよう
IQを作ったアルフレッド・ビネーは、頭がいいという3つの要素は「論理」(算数)、言語(国語)、熱意だと言っています。日本人は特にこの3番目の「熱意」をないがしろにしがちです。たとえば、褒め言葉のように使う「やればできる!」は、実は熱意が欠けているということ。ほおっておくと、先延ばしにして落ちこぼれてしまいます。
熱意とはワクワクする好奇心、知りたいと思う力です。その過程でのじっくり考えた失敗はむしろいい失敗です。ですから、親は幼児期にたくさんのいい失敗をさせて、失敗の多様性を高めること。失敗を恐れず熱意のある子が、真の頭のいい子の近道なのです。
早期教育の意味を履き違えないように
現在小学生の65%が、今存在しない仕事に就くと言われています。わが子を今ある仕事から選んだ「将来の夢」そんな狭い可能性に閉じ込めてはもったいないのです。大切なのは、将来どんな世界が来ても順応できる柔軟性です。将来を見通す力を養うにはプログラミングはとてもおすすめです。もちろん、自制心や身につけなければいけないこともたくさんあります。ですが、幼児期の教育において最も大事なのは、親御さんが子どもの熱意をそがずに、子どもが持つ内発的動機(楽しそう!)を育ててあげることなのです。
続いて後編では、第二部の、「名門幼稚園・小学校の合格者インタビュー」をお届けします。
SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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