最近急になぜ…? 5歳の子の怖がりになる心理と原因を解説
お化け、鬼、注射はもちろん、ちょっとした高さが怖い、夜暗いからトイレが怖い……。これまで平気だったのに急に怖いと言い出す5歳のころ。その理由や親が意識していきたいことを心理学的に解説します
目次
子どもは本来怖がりではない
「2~3歳のころは大丈夫だったのに、最近になって何でも怖がって……」
「トイレもわざわざついて行かなくちゃいけないし、何だか成長が戻ってしまったみたい」
こう悩むのが幼稚園くらいの時期。以前は大丈夫だったのに、5歳くらいになると妙にビクビクするようになるのは、色々なことが分かってきた成長の証でもあります。
それを裏づけるのが、子どもは本来怖がりではないというデータです。アメリカの大学が11ヵ月~40ヵ月の赤ちゃんを対象に行った研究によると、大人が怖がるようなヘビやクモなどの生き物も、赤ちゃんたちは大好きだったのだそうです。この研究では、ヘビやクモなどの生き物を怖がるのは、人間が生まれ持った性質ではないとしています。
“恐怖症”が作られてしまう原因や心理とは?
一方で、”恐怖症”を作りやすい対象が存在するということも分かっています。つまり、「○○恐怖症」の○○には頻出するものとそうでないものがあるということです。特に多いとされるのが、
●生き物系(ヘビ恐怖症、クモ恐怖症など)
●環境系(暗所恐怖症、高所恐怖症など)
●外傷系(注射恐怖症、血液恐怖症など)
などです。
ここで、「あれ?」と思われたかもしれません。そうです、クモやヘビはこの対象なのです。赤ちゃんのときには大丈夫だったのに、なぜそうなってしまうのでしょうか?
そこで質問ですが、わが子がクモやヘビに手を伸ばしたら、ママだったらどう反応しますか? その瞬間に、「危ない!」「ダメだよ」などと声をかけたくなりますよね。先述の研究でも、それらを怖がるようになるのは、学習によるもので、しかも、親から学ぶ部分が大きいだろうと結論づけています。
もちろん、親はそのとき、子どもを恐怖症にしようとしているわけではありません。大人はクモやヘビには毒を持っているものがいるのを知っていますから、とっさに身構え、わが子に注意喚起するのです。わが子を危険から守ろうとする「防衛反応」とも言えます。世の中の危険を教えていくことは親の役割ですので、恐怖症にしてしまうほどでなければ正しい学習になります。では、恐怖症になってしまうパターンとはどんな状況なのでしょうか?
親が子どもに恐怖心を抱かせない工夫
昔の心理学実験で、ある赤ちゃんがネズミを触ろうとするたびに、鉄のハンマーで大きな音を立てて驚かすと、その子はネズミ恐怖症になってしまったという内容のものがあります(今の倫理概念で言えば、赤ちゃんに恐怖心を作り出す実験など許されない行為ですが、今から100年ほど前は、そのような実験が行われていたのです)。
その子に対し、白いネズミ⇒触ろうとする⇒大きな音⇒びっくりする……、これを繰り返したところ、7回で、その子は白いネズミを怖がるようになってしまったのだそうです。鉄のハンマー音はないのにもかかわらずです。
これで分かるのは、親が何らかの対象物に対し、おおげさにリアクションするのは、子どもへの恐怖の植えつけにつながりかねないということです。ちなみに、この男の子は、はじめは白いネズミだけを怖がっていたのに、だんだん似たようなものにまで反応を示すようになってしまったのです。白いうさぎ、毛皮のコート、サンタクロースのひげ……。恐怖心というのは、いったん作られてしまうと、広がるのは容易ということが分かります。
親が子どもに世の中の危険について教えることは、しつけの大事なプロセスです。でもそのときに余計な尾ひれをつけたり(「○○したら食べられちゃうよ)」、力で行使したり(○○しようとする⇒叩く)するのはやり過ぎです。真摯な姿勢で、危険なものは危険だと伝えていきましょう。
次回では、「怖いものが出きてしまった際の対処法」をお伝えするいく予定です。そちらもお楽しみに!
育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/