一人っ子では“かわいそう”…本当にそうなの?

一人っ子では“かわいそう”…本当にそうなの?

これまでに近しい方から「一人っ子はかわいそう。2人目は?」なんて言われたことはありませんか? こんな風に言われてしまうと、一人っ子のママは「そうなのかな…」と思わず不安になってしまいます。

今日は、そんなママの不安を払拭すべく、子育て心理学から見た「一人っ子を強みにする秘訣」をお伝えしていきます。

生涯に産む子どもの数、ついに2人を下回る!

少子化が深刻な問題となっている昨今、周りを見ると、たしかに一人っ子が多いような気がします。実際にデータとしてはどうなのでしょうか?

国立社会保障・人口問題研究所が定期的に行っている「出生動向基本調査」の結果によれば、夫婦の完結出生児数(結婚して15~19年経過した夫婦の平均出生子ども数)が、2010年にはじめて2人を下回ったそうです

それをもとに出された「出生子ども数分布」を見ると、2010年の段階で、

  • 子ども0人の家庭が6.4%
  • 子ども1人の家庭が15.9%
  • 子ども2人の家庭が56.2%
  • 子ども3人の家庭が19.4%
  • 子ども4人以上が2.2%

となっています。

これだけを見ると、主軸は子どもが2人いる家庭。実はこの状況は過去40年変わっていません(56%前後を推移)。しかし、ここ最近、それ以外の分布が変わってきています。

以前は多かった3人兄弟が減り、その分、「一人っ子」「子どもなし」というご家庭が増えているのだそうです。やはり、データ的にも一人っ子家庭は増えているのですね。

一人っ子育児で親がやってしまいがちな過ち

では、一人っ子はかわいそうなのでしょうか? 筆者はそう考えてはいません。一人っ子育児の強み弱みを理解し、いいとこ取りすれば、アドバンテージになるとさえ思っています。

まずは、一人っ子育児でやってはいけない3つのNGをご紹介しましょう。

その① 過管理

その子の1日を過度に親が管理することを指します。親が管理すればするほど、子どもは考えなくなってしまいます。すべて決められているので、考える必要がないからです。決断してきた回数が圧倒的に少ないため、大きくなってからも「決められない大人」になってしまいます。

その② 先回り

子どもが「不安な思い」や「イヤな気持ち」にならないようにと先回りして、あれこれと整えてあげてしまうことを指します。失敗から学ぶ経験を積み重ねられないと、いずれ、困難に立ち向かえない、やらずに諦めてしまうという現象が出てきてしまいます

その③ 物質的な充足

「欲しい」と言えば買ってあげる状態を指します。親が物に依存した子育てをしてしまうと、その子が大きくなってからも物に依存した生き方をしやすいことが分かっています。アメリカの研究では、親がご褒美として「物」をあげ続けると、その子は大人になって物質依存症になりやすいというデータもあるので要注意です。

いずれも一人っ子だけに起こることではありません。ただ、1人を育てるのと、3人を育てるのでは、当然、親が注げる力が違います。もっとも起こりやすいのが、その力配分を、愛情と勘違いしてしまうことです。

本来、成長する中で身につけていくべき能力、たとえば、思考力、判断力、決断力、自立心、我慢力などは、親が黒子になることで伸びていきます。親が前に出過ぎない子育て、これが一人っ子育児に最適なパワーバランスなのです。

甘やかすと依存する、でも、甘えさせると自立する

一般的に、「一人っ子は甘やかされている」というイメージがあるようですが、それは、上記のような「過管理」「先回り」「物質的な充足」がある場合です。親が力配分を間違えなければ大丈夫。甘やかすのではなく、甘えさせてあげる、それが一人っ子育児を強みにするポイントです

「甘やかす」と「甘えさせる」、似た言葉ですが、中身は大きく違います。甘やかすと、自立できず依存的になりがちですが、しっかりと甘えさせると、子どもは自ら外へと歩み出すようになります。子どもが親に十分に甘えられると、なぜ自立心が促されるのか、そのカラクリをご説明しましょう。

心理学で「情緒的対象恒常性」という言葉があります。簡単に言えば、「ママのことを心の中で思い浮かべる力」のことです。赤ちゃんはママが視界から見えなくなると泣きますよね。あれはまだこの能力が備わっていないからです。「ママが見えなくなった=ママがいなくなった」と解釈されるため、赤ちゃんは急に不安になってしまうのです。

しかし、3歳くらいまでにしっかりと甘えさせてあげると、その子はママが見えなくなっても、心の中でママの姿を思い浮かべて安心し、離れていても遊び続けることができるようになります。これが、十分に甘えさせることで自立が進むカラクリです。

一人っ子育児成功の秘訣は母子のバランスにあり

といっても、親がベッタリと関わり過ぎてしまうと、上にあげた「過管理」や「先回り」に陥ってしまいます。上手に甘えさせるポイントは、お子さんの発信する言葉、行動、表情などに適切にリアクションしてあげることです。これを心理学では「Responsiveness」と言いますが、ママの反応の良さを指します。何でも「ハイハイ」と言うことを聞いてあげるという意味ではありません。

例を挙げると、

  • 「そうなの、でも今はね…」のように、ダメなものはダメと伝えてあげる
  • 子どもが靴下をはくのを手伝わずにじっと見守り、できたらほめてあげる
  • もじもじしているわが子を見て、その不安な気持ちを察し、寄り添ってあげる

のように、我が子にきちんと向き合い、1つ1つ丁寧に応答することが、ここで言う「反応の良さ」です。

一人っ子育児は、距離の取り方がポイント。手を貸すよりも、待ってあげるのが愛情という場面は多々あります。待つ間、放っておくのではなく、そばで見守ってあげる、その距離感が情緒的対象恒常性の確立に役立つのです

「ママはいつも見てくれている。だから、ちょっと離れても大丈夫」と思わせる育児ができれば大成功。一人っ子だからこそかけられる時間、それを「察する」「待つ」「見守る」に活かしてほしいと思います。

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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