教育の投資効率を日米で徹底比較!数千万円かけて最先端・最高峰を得るアメリカの大学vsコスパ最強の日本の大学
目次
1.アメリカで社会問題化!桁違いの学費
20~30年前には、そこまで大きな差がなかったと言われている、日本とアメリカの学費。しかしその後、アメリカの大学の学費は猛スピードで高騰しています。徹底的競争社会、さらに日本を上回る学歴社会のアメリカでは、大学間で施設や教授陣を競い合い、さらに質の高い教育には糸目をつけない世界中からの需要がその背景にあります。
アメリカの大学の学費は、私立であれば年間500~600万円、居住州の州立大学でも150~200万円。私立の大学に4年間通えば数千万円がかかる計算となり、他の先進国と比較しても、平均的な家庭の収入を考えても、格別に高い金額です。
奨学金制度が充実しているので、平均すると学費の約30%程度の補助がありますが、寮や生活費を含めれば、合計で学費の1.5倍くらいはかかります。さらに、奨学金制度は家庭の収入・各大学の奨学金プログラム・特待生待遇、などによって大きく幅があります。奨学金要・不要で受験カテゴリーが違う、合格してみないと金額がわからない、膨大な提出書類が必要といった事情も、受験をより複雑にしています。学費の安いカナダ、ヨーロッパ、アジアなどに留学するアメリカ人もいるくらいです。
多くの学生が学生ローンを組むため、米国の成人人口の4人に1人、4,500万人近い人々が学生ローンを抱えて暮らしており、全米の学生ローン残高は住宅ローンを超える規模です。若年層の経済基盤の悪化は社会問題化し、大統領選の争点にもなるほど。また、さまざまなサイトでは、各大学の学費や奨学金に関する分析がなされています。
2.困難な新卒就職と着目される”大学ROI”
一方で、雇用が流動的で中途採用市場が大きいアメリカでは、一定数の新卒を一括採用する慣行がありません。大学新卒でも就職は容易でなく、有名大学出身者がアルバイトをしていることもざらです。ビジネス、メディカル、ジャーナリズム、教育などの専門領域を身につけて就職するには大学院が必須で、そのためには数百万、またはそれ以上の追加投資が必要です。
高すぎる学費のため、大学別に、卒業後の給料・学費から算出した”大学ROI”も意識されています。上位にランクインしている大学は、日本人にとって馴染みのあるアイビーリーグなどよりも、STEM(理系)、海洋、ミリタリーなどの専門大学が多いことがわかります。これは、授業料が安い、STEM系(理系)の卒業生の収入が高い、奨学金が充実している、などの要因が関係しています。
3.日本の大学は、安かろう悪かろう?それともコスパは最強?
日本の教育は旧態依然・ガラパゴス化していると批判もありますが、コスパ的にはどうでしょうか。日本の大学の学費は私立文系・4年間で400万円以下。さらに、労働市場では新卒一括採用・社内教育が徹底しており、新卒一括就職のレールに乗ることができれば、生活するのには困らない収入を得ることができます。仮に、大学の学費が4年間で400万円、就職後の年収が500万円で20年、と仮定した場合のROIは、年率38%。アメリカの大学のROIランキング1位22%と比べれば、投資効率としてはアメリカより断然魅力的です。ただ、日本の安泰と安定的な雇用が続く、という前提ありきでの話ではあります。
4.留学生にとっては高嶺の花の米国大学、その価値は?
アメリカの大学を出たグローバル・エリートを、憧れる人も多いでしょう。しかし、日本から受験して正規留学する場合、留学生の学費はアメリカ国籍の学生の約1.5~2倍(私立4年間で3,000万円超)以上、加えて渡航費・生活費がかかります。留学生向けの奨学金制度は限られていて、ビザの問題で留学生はアルバイトができません。さらに、永住権・市民権がなければ米国での就職は難しく、費用対効果を考えるとげんなりします。
それでも、画一的な教育で育つことの多い日本人にとっては、最先端の教育・研究に加え、リスクを取りチャレンジする気風、専攻の変更・転校に寛容な環境など、USの大学の魅力は大きいです。とくに、日本の学生は欧米に比較して圧倒的に理数系に強いので、そこを強みに世界に羽ばたく戦略もありえると思います。費用面でのハードルが高ければ、交換留学や、大学院から留学など、工夫して留学にチャレンジする価値はあるでしょう。
<参考URL>
学費と卒業時の平均学生ローンで、アメリカの大学を分析したサイト
卒業後の給料・学費から算出した”大学ROI”ランキングサイト
http://www.payscale.com/college-roi
世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
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