子どもの好奇心を伸ばす!図鑑活用術【第4回 〜あそべる算数図鑑編〜】
図鑑でわが子を伸ばそう第4弾は新刊の『角川の集める図鑑GET! あそべる算数』。家庭で遊びながら算数脳を伸ばすコツとは? 伸芽会教育研究所所長の飯田道郎先生と担当編集者の松山さん&小荒井編集長による対談形式でお届けします。
目次
算数を好きにするコツは恐竜や昆虫と同じように興味を広げること
__3歳から楽しめる図鑑『あそべる算数』を企画しようと思われた経緯とは?
松山さん:これまでさまざまなジャンルの図鑑を作ってきましたが、小学校以降の学びの土台になるような幼児期の「算数」の図鑑は今までなかったので、企画してみました。未就学児にも楽しみながら算数を好きになってもらいたいと思って、Think!Think!の開発者で、ワンダーファイ代表の川島慶先生に監修をお願いしました。写真も多用しコラムなどの豆知識もいれたり、図鑑としての読み応えも意識して作ったのがこだわりです。
__こちらの図鑑をご覧になった感想はいかがですか?
飯田先生:幅広いジャンルが網羅してあって楽しいですね。図鑑はタブレットや動画とはまた違う、自分で触って持ってめくってという五感を刺激できるし、学びを広げる大事な存在です。体験や工作遊びがたくさん載っているのもまたいいですよね。
ただ、この図鑑を親御さんが見たときに「こうやらなきゃダメ」と算数という教科に落とし込まないようにするのがコツ。伸芽会の教材でもそうなのですが、親はすぐ問題にして解かせようとしますが、そうではなくて、子どもは遊びの中に学びを見つけるものなので、幼児期のうちからすぐにお勉強と捉えてしまうのはもったいないんです。
恐竜や昆虫の図鑑はお子さん一人でも勝手に想像して楽しめますよね。それと同じ感じで、数や量という算数の世界にも楽しみながら関心を持っていけたら最高です。
小荒井編集長:そうですね。算数という教科がある以上、親はどうしてもお勉強の方向に持って行きがちなんですが、そうではなくて、興味を持ったところから自由に見てもらえたらなと思っています。
子ども一人でも学べる図鑑が理想ですが、恐竜図鑑のようにはいかないかもしれないので、せめて保護者の方もこの図鑑に載っている遊びをお子さんと一緒にやって「楽しい!」と思えたり、その体験が算数の学びにつながるような存在になれたら嬉しいです。
未就学児に育てたいのは、計算よりも数感・量感
__幼児期でも算数に苦手意識を持つ子はいますか? その理由は何だと思いますか?
飯田先生:算数が苦手だった人が教えると楽しくないし苦手意識をもつ可能性は高いと思います。それと、親も先生も「この問題は簡単だから」などと、上から目線で教えようとするのがよくないかなと思いますね。幼児期は勉強と思わずに、この図鑑でどんどん遊んで広げていったら算数は好きになると思いますよ。
小荒井編集長:今の子は入学前に計算の仕方は知っていても、量感やイメージがないまま小学校の算数に入ってしまう子も多いと思うんですが、数字を記号として学ぶ前に、量感を身につけるコツはあるのでしょうか?
飯田先生:今は一人っ子が多いから、そもそも物を分ける概念がピンと来ない子が多いんです。そんな子にいきなり「2分の1と3分の1はどっちが大きいか」をプリントでやってもよくわからないですよね。それよりも実際にピザを目の前で切って分けて食べてみる。どっちが多くもらえるか、ときに悔しい経験もすることで分数のイメージがつくんです。
おやつのロールケーキを均等に分けるのではなくて、「4分の1と3分の1どっち食べる?」と出すのも楽しいんじゃないですか。
あとは、大人は動物の絵を見るとすぐに足し算引き算させたくなるでしょう(笑)。でも、幼児の男の子なんかには「ライオンがシマウマを食べました、残りは何匹?」というちょっと残酷な引き算だととびつきますし、他にも、ママやパパのスマホにどれだけデータが入っているかを見せるのも数感・量感のイメージ化には面白いかなと思います。
松山さん:それはおもしろそうですね。データは目に見えないから特に子どもは量をイメージしにくいですから、体験の少ない子どもにはいかにピンとこさせるかがカギということです。
飯田先生:そこから小さいものに興味を持って、将来科学者や研究者、建築家になりたいなんて思う子もいるかもしれません。
小学校受験に役立つ算数の知識も満載!
__小学校受験の対策にも役立ちそうなページはありますか?
飯田先生:たくさんありますよ。このP56-57の野菜やフルーツの断面図なんかもよく出題されます。ただし、ここでもすぐに答えを直結させようとしないのがポイント。オクラなんかは切り方でかなり断面が異なりますから、自由に切った断面をスタンプにして遊んだりしても面白いと思います。
そもそも遊びは無駄から入っていくので、特に幼児期は「遊んでないで勉強しなさい」ではなくて、「遊びの中で気が付いて足りない知識を学ぶもの」という認識でいいんです。
飯田先生:他にも、小学校受験では数字は使いませんが、3分程度のお話を耳で聞いたあとにそれに関する問題を解く「お話の記憶」の考査で「うさぎさんがお昼ご飯を食べた後で~」などという時間が出てきますし、入学後は時計を見て行動しなければいけませんから、受験をしてもしなくても小学校入学までには時計を読めるようになっていたいですよね。
デジタル時計しか知らないと、時計の概念を理解するのが難しくなってしまうので注意が必要です。たとえば、「シンデレラは夜の12時になると魔法が解けるけど、そこは長い針と短い針がぴたっとくっつくときなんだよ」などと実際にアナログ時計を見せながら話すと、子どもの印象に残る学びにつながりますよね。
小学校の算数攻略のカギはリアリティを持てるかどうか
松山さん:小学校に入ってから、算数に苦手意識を持っているお子さんに、この図鑑のおすすめの活用法などはありますか?
飯田先生:算数を勉強と思ってしまっている子には、「こういうことなんだよ」とこの図鑑に載っている遊びを一緒にやることで、意識が変わってくるのではないでしょうか。また、伸芽会では、幼少期の学びは幼稚園や保育園と小学校で分断するのではなくて、コツコツ積み上げていく“幼小一貫”であるべきだと考えています。
小学生になったとたん算数を科目と考えて学び一色にしようとするから算数に対して苦手意識が出てくる子がいるので、小学生以降も、図鑑や絵本を活用して楽しみながら学んでほしいと思います。
生活の中でどこまで遊び倒せるかで算数脳は鍛えられる
__幼児期に算数脳を鍛えるためにできることはありますか?
飯田先生:どんな学びでも具体物から入るのが幼児教育です。抽象的な概念は小学校3年生くらいから獲得できると言われていますから、その前に算数の概念から入ろうとすると嫌いになってしまうんです。例えば、伸芽会で幼児と掛け算を学ぶ際は、「123,456,789……」と手をたたいて、リトミックのリズム遊びのようなことをします。
すると、九九はできなくてもこのやりかたで3の倍数がわかるようになります。子どもは知っていることで説明すれば、一見難しいことでも理解できるんです。
算数は生活の中に直結した身近なものなので、幼児期は教えるのではなくいかに広げてどこまで遊び倒せるかで、算数脳は鍛えられると思いますよ。
小荒井編集長、松山さん:この図鑑を通して、親御さんにも勉強ではなく遊びにつなげられるかをアピールしていきたいと思います。体験あそびのワークショップなども企画出来たら楽しそうだなと思いました。本日はありがとうございました。
1960年福井県生まれ。早稲田大学政治経済学部在学中に伸芽会の創立者・大堀秀夫と出会い、入社。子どもの目線に寄り添い子どものやる気を引き出す人気教師として男の子の指導に定評があり、これまで3,000人以上の教え子を難関校へと導く。著書に『9歳までの男の子の育て方』(世界文化社)。本サイトのYoutubeチャンネルであるSHINGA FARMちゃんねるへレギュラー出演中の他、AERA with Kisds+、朝日新聞 DIGITALなど多くのメディアにも取り上げられるなど、幼児教育業界の第一人者として活躍中。
子どもの好奇心を伸ばす!図鑑活用術【第1回 〜恐竜編〜】
子どもの好奇心を伸ばす!図鑑活用術【第2回 〜魚編〜】
SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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