「常に時間に追われている」と感じるママこそ、アタッチメントプレイを取り入れてみよう!
働くママが増えたこともあり、家事の時短に関するヒントはネット上だけを見てもたくさん出回っていると思います。そのおかげもあって、家事に関しては、時短や手を抜く、省略することもだいぶ浸透してきた気がしますが、家事をマックスに省略したとしても、育児自体、大変な仕事なので、それでもなお忙しいというのが実情です。
家事は時短が可能、では育児ではどうなのでしょうか?
目次
働くママが7割を超えた今
2017年に、働くママの割合が初めて7割を超えました(厚生労働省による国民生活基礎調査)。この調査によれば、18歳未満の子どもがいる世帯のママで、「仕事あり」と回答した方が70.8%だったそうです。その内訳は、正規が24.7%、非正規が37.0%、自営業などを含むその他が9.1%でした。
私自身、日々、育児相談やカウンセリングを通じ、ここ数年で、働くママが増えたことを実感しています。それにともない、ママの時間的な忙しさも過酷になってきたという感があり、時間の圧迫が、お悩みにつながっているケースも多々見られます。
もともと育児中というのは、やることに追われがちですが、それがこれまで以上にタイトになってきて、「常に追われている感じ」が否めないと訴えるママはとても多い、これがここ数年の実感です。
家事はサボれても、育児で手を抜くのは怖い
これほど働くママが増えたにもかかわらず、多くのご家庭で、働き始めてもなお、家事の分担はほぼ以前のままで、ママに多大なしわ寄せがいっていることが少なくありません。その現状がここ数年でメディアでも多く取り上げられたことで、社会の中でも、日々の家事の大変さが以前よりも認知されてきている気がします。
もちろん、まだ問題は山積みですが、家事に対し、時短する、手を抜く、このような形でしのぐことが、何とかやりくりする術として認められてきつつあると感じています。
その一方で、育児に関しては、時短や手抜きという発想を持つことが現実的に難しく、それがママを苦しめています。
実際、働いていることで、子どもとの時間が少なくなってしまったことを「申し訳ない」と後ろめたさを感じているママはとても多く、仕事をしていることで、育児にひずみが行ってしまうことを懸念し、自分の頑張りで何とか乗り越えようと追い詰めていってしまっているケースが多いのです。
アタッチメントプレイセラピーとは?
現実的に見て、1日24時間しかない以上、その中でやりくりするしかない。でも子どもとの時間も大切にしたい……。多くのママが、こんなジレンマを抱えている今、子どもとの限られた時間を、いかに効果的に過ごせるかと考えるのはごく自然なことだと思います。
そこで今回ご紹介したいのが、「アタッチメントプレイセラピー」の存在です。これは、スイスのソルター博士が提唱した親子間向けのメソッドで、子どもの問題行動や育児にまつわる悩みを乗り越えるために作られています。そのベースにあるのが、「遊びの力」を活用するという考えです。
「アタッチメント」というのは言うなれば、親子間の精神的な絆のことで、それが安定していることが、その子を安定させ、ひいては子育てを安定させます。ソルター博士は、遊びにはアタッチメントを強化する力が極めて強いと考えており、それを日々の中に取り入れることで、問題や悩みを改善していこうと試みています。
毎日1つ、濃い遊びを入れてみる
私は、このアタッチメントプレイセラピーの手法は、限られた時間の中で、子どもたちと強い絆を育むコツとしても活用できると考えており、働くママや1人で何人もお子さんを育てているような「忙しいママ」に特におすすめしています。数ある遊びの中から、とくに忙しいママ向けのものをここでご紹介しましょう。
まずおすすめなのが、アタッチメントプレイセラピーの中で、“セパレーションゲーム”と呼ばれているタイプの遊びです。
代表的なものが、「かくれんぼ」です。
なぜかくれんぼがおすすめなのかというと、遊びを通して、子どもが分離に対し、安心感を持てる効果が期待できるからです。かくれんぼの中で、「ママは一瞬見えなくなっても、またすぐに見つかる」という体験をし、「み~つけた」の瞬間に得る安心感や笑いが、ママと離れても大丈夫という信頼になっていくわけです。
実施する際は、難所ではなく、分かりやすい場所に隠れ、「み~つけた」という体験を重ねるのがアタッチメント強化という目的を達するためのコツです。そうすることで、限られた時間でも繰り返しやすいというメリットもあります。
保育園などでお子さんを見送る回数が多いママにぜひ試してほしいのが、このかくれんぼです。
次にご紹介するのが、「協調ゲーム」と呼ばれるもの。これは、親子で一緒に協力しながら、ブロックを高く積み重ねるというような遊び方のことです。
基本的に、ママとお子さんの遊びは協調ゲームに該当するものが多いと思います。これまで自然とやっていたことが、実は絆強化に最適な遊び方だったというわけです。それらはキープしつつ、ここでは新たにユニークな遊び方を1つご紹介しましょう。
それは、「アタッチメントプレイ版・イス取りゲーム」です。普通のイス取りゲームは、音楽をならして、音楽が止まったときに、イスを確保できなかった人が1人ずつ抜けていくというのがルールですが、アタッチメントプレイ版では最後まで全員参加です。
人が抜けない代わりに、1回ごとにイスの方を、1脚ずつ減らしていきます。1曲終わるごとに、イスが少なくなっていく分、お互いのシェアする気持ちが大事になります。最後は、1つのイスに、全員が協力して、お尻を乗せていきますが、小さなイスを選ぶと、より盛り上がります。
これは人数が多いほど楽しいので、週末などパパやお友だちなどメンバーが揃うときに活用するのがいいかもしれません。
実践する際のコツ~トライアングルを断ち切る
最後に、アタッチメントプレイを行う際に、心がけたい点が1つあります。それは、集中すること、他のことを考えないことです。
1日に多くのことをこなしていると、それらのことを心の中でもひきずってしまうことがよくあります。仕事のときに家事のことを考え、家事のときに育児のことを考え、育児のときに仕事のことを考える……。このような心ここにあらずのトライアングルです。
多忙ゆえに、それぞれが完結しておらず、頭の中で回想してしまうのですが、アタッチメントプレイをする際は、ぜひこのトライアングルを意識的に断ち切って、その瞬間は童心に返って、思いきり遊んでみてください。
アタッチメントという親子間の精神的な絆がしっかりすると、子育てはスムーズに行くことが非常に多く、その点からも、日々の悩みに1つ1つ対症療法的に解決しようとする以上に、まずは土台となるアタッチメントを強化し、全体に好影響をもたらした方が得策です。
時間的に限られているからこそ、短期集中で遊びの質にこだわることで、母子間に好循環が生まれやすくなります。
育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/