面接や願書で使う際は細心の注意を! 魔法の言葉「自主性」の落とし穴
「自主性のある子に育ってほしい」そう願う親御さんは多いと思います。ですが、自主性という言葉は便利で使いやすい反面、面接や願書などでは逆効果なこともあるそうです。
そこで今回は、魔法の言葉「自主性」の正しい考え方や使う際の注意点について、伸芽会の飯田先生、牛窪先生、木村先生にお話を伺いました。これから幼稚園・小学校受験を控えた親御さん、必見です!
目次
面接や願書で使うとかえってマイナスになる場合も
__そもそも、子どもの「自主性」はいい言葉なのでしょうか?
飯田先生:「自主性=主体性を育てること」はとても大事ですから、ぜひ高めたい力です。
一方で、対照的な「社会性や協調性」もなくてはなりませんよね。
小学校受験の願書を見ていると、多くの方が「主体性」「自主性」という言葉をよく使われていますが、「自主性」の使い方って実は難しいのです。
たとえば、お友達との協調性や社会性に重きをおいている幼稚園の願書に「わが子は主体性がある子なので、そこを伸ばしていきたい……」と書いたとしたら、学校側はどう思うでしょうか? 願書や面接で使用する際は、志望する幼稚園や小学校で「自主性」をどのように考えているかをよく調べて使わないと、かえって逆効果になってしまう場合もあるんです。
他にも、たとえ面接で上手にわが子の「自主性」について親御さんがお話できたとしても、行動観察やお子さんとの面接で、それを感じられなかったら、学校側はどう思うでしょうか。
このように、自主性という言葉は、便利な反面、実は深いワードなのです。
集団生活では「自主性があればOK」ではない
__幼児における「自主性」とはどのように捉えればいいでしょうか?
木村先生:自分で判断して行動できる子が、将来の日本を担うことになるでしょうし、自主性は幼少期にぜひとも育みたい力ですよね。
「自主性を重んじるために、わが家では子どもの話をしっかり聞いています」とおっしゃる方は多いです。
お子様の話をしっかり聞いてあげることはとても大切なことですが、それと同時に、ご両親の価値判断をしっかり伝えることも大切ですね。幼稚園や保育園の集団では、自分の意見がいつも通るわけではありません。
わがままと自主性を取り違えないようにというところが「自主性」の難しいところではないでしょうか。
親御さん自身が自主性をもって行動できていますか?
__親はどんなことに気をつけてわが子の「自主性」を育んでいけばいいでしょうか?
牛窪先生:小学生になると、一人で通学するようになりますから、さまざまな問題を自分で解決しなければいけません。
そういった「自分で判断できる」という意味の自主性はぜひ身につけてほしい力です。
ただし、私が懸念しているのが、「お子さんに自主性を求める以上、親御さんにも自主性が備わっていないといけないですよ」ということです。
某キリスト系の名門幼稚園がどんな親御さんを望んでいるか、「こんなことに気をつけてお過ごしください」という合格した後に渡す資料にはこんなことが書いてあります。
・園外での親同士の交際については、集団で集まることのないようにしてください。
・幼稚園の教材を持ち帰ったら、お子さん自身で返させてください。
「それぞれのご家庭が軸(自主性)をもって行動してください」ということですね。
つまり、流されてほしくないということです。
幼稚園や小学校受験で志望校を決定の際に「お友達の〇〇ちゃんが受けるからうちもここを受けたい」などという方もいますが、「それは、自主性をもって決められたことですか??」と聞き返したくなってしまいます。
自主性とわがままはどう違うか
__自主性とわがままはどう違うのでしょうか?
飯田先生:伸芽会でも非認知能力、自己肯定感を育む上で、お子さんが自主的に動けることは大事にしています。
ただし、「自分がやりたいから他の子は関係ない」ではわがままに見えてしまいますよね。
ただ意見を主張すればいいのではなく、「がまんもセットになった自主性」じゃないとダメなのです。
近頃の子どもたちを見ていると、コロナ以降そのバランスが悪くなっている気がします。
親御さんとばかり過ごして、自分の要求が通りやすい環境にいることが多いせいなのではないかと危惧しています。
木村先生:それは同感です。
自制心や粘り強さは小さい時期に身につけたい力ですが、これらは集団で身につきやすい力です。
そのために家庭ですべきことは、「どんなルールをもってお子さんと接しているか」だと私は考えます。
「ここを超えたら叱る」という自主性の線引きについて、保護者の方も悩まれているように思いますが、「ここまではいいけど、ここからはちゃんとやろうね」というルール決めをぜひご家庭で話し合ってみてください。
ご家庭で自制心が発揮できなければ、集団でも発揮できません。
そして、お子さんは親御さんの対応をよく見ていますから、ルールがぶれることがないようにしたいですね。
おうちルール作りの注意点
__おうちでのルール作りについてアドバイスいただけますか?
飯田先生:受験においては、特に伝統校であればあるほど、“おうちルール”を重視しています。
おうちルール=ご家庭での叱る基準と考えるとわかりやすいと思いますが、叱る基準は世の中の常識であってほしいですね。
叱らない子育てをはき違えて、お子さんが何をしても注意しない、お母さんが自分の都合の悪いことがあると理不尽に怒るのも違います。
木村:特にルールは決めていないというご家庭も多いと思いますが年相応の発達に応じたおうちルールを決めているご家庭は素敵だなと思いますね。
飯田:しつけをきちんとされていないご家庭に限って、自主性という言葉を好まれるような気もします……。
面接や願書で使う際は、自主性だけで終らずに、自主性とルールをセットで盛り込むと説得力が増すのではないでしょうか。
牛窪先生:私は、自主性を「ここまでは自由にやれる」という基準で決める方法もあるのではないかと考えます。
ですから、保護者の方には「これだけは譲らないという部分をご両親・ご家庭で決めてください」とお伝えしていますね。
学校側はそのご家庭の基準を面接などで見ていますし、親御さんとそれを話し合うのが、私どもの役割なのではないかと感じます。
飯田先生:最後に補足しますと、幼稚園では一斉指導と自由保育というのがありますが、国立幼稚園などで多くみられる自由保育の園長先生がよくおっしゃるのは、「我々は自主性を重んじますが、決して放任ではありません」ということ。
「自主性に任せることは放任ではない」という言葉をぜひ親御さんも忘れないでほしいですね。
1960年福井県生まれ。早稲田大学政治経済学部在学中に伸芽会の創立者・大堀秀夫と出会い、入社。子どもの目線に寄り添い子どものやる気を引き出す人気教師として男の子の指導に定評があり、これまで3,000人以上の教え子を難関校へと導く。著書に『9歳までの男の子の育て方』(世界文化社)。本サイトのYoutubeチャンネルであるSHINGA FARMちゃんねるへレギュラー出演中の他、AERA with Kisds+、朝日新聞 DIGITALなど多くのメディアにも取り上げられるなど、幼児教育業界の第一人者として活躍中。
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SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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