ママが知っておきたい幼児食の基礎知識~お悩み編~
離乳食完了後から未就学児までの食事と言われる「幼児食」。好き嫌い、かなりの偏食、兄弟で好みが違うなど、悩まれているママは多いはず。そこで、ご自身も2児のママである管理栄養士の板垣好恵さんに、幼児食のお悩みについてアドバイスいただきました。ママが無理なく実践できるヒントが満載です!
◆板垣好恵(管理栄養士・上級食育アドバイザー)
大手料理教室にて料理・パン・製菓の講師を務めたのち、本社ヘルスケア事業部の管理栄養士としてレシピ開発、書籍の出版、栄養学の講演、企業との商品開発などに携わる。現在は独立し、「心とカラダを豊かにする食育」をモットーに、食育関連のコラム執筆や親子で学べる食育料理教室の開催、イベント出演などを行う。自身が主宰する「食の専門家ユニットFoodRing」では、プロの料理家、フードコーディネーターと共にレシピ開発、スチール・動画撮影などのフードコンテンツ制作を行っている。プライベートでは2児の母。
https://foodring.jp/
目次
幼児食でも、1歳半と5歳では意識することが違う!
__何歳から何歳までが幼児食になりますか?
幼児食とは一般的に、離乳食完了期を終える1歳半~6歳未満の食事のことを言います。1歳半~2歳代の[幼児食前期]は食材の形や固さを変えながら、手づかみ食べやかじり取り、スプーン・フォークの練習を通してかむ力や自分で食べる意欲を育てる時期。3歳~5歳の[幼児食後期]は食べられるメニューのバリエーションも広がるので、苦手な食材にも挑戦しながら食の体験を増やしていくといいですね。とはいえ、まだまだ消化も未発達ですし、かむ力も大人の半分程度なので、すぐに大人と一緒の量や味つけはNG。大人食への移行期間と捉え、食べるスキルや社会性を育てていきましょう。
【与える量の目安】
■摂取カロリー
成人男性(18~49歳)2650kcal
成人女性(18~29歳)1950kcal、(30~49歳)2000kcal
※身体活動レベルが普通の場合
1~2歳:男の子950 kcal、女の子900 kcal ※大人の4割くらい
3~5歳 :男の子1300 kcal、女の子1250 kcal ※大人の5割強
■塩分量
1~2歳:3~3.5g未満(1回の食事で1g程度→しょうゆ小さじ1。ウスターソース小さじ2。ケチャップ大さじ2程度。)
3~5歳:4~4.5g未満(大人の半分くらいの薄味)
ママたちを困らせる幼児食のお悩み、どう解決すればいい?
「食べさせたいVS食べない」親子の意地の張り合いは本当に疲れますよね。せっかく作った食事を食べてくれないと、気持ちも凹みます。ママたちから寄せられる幼児食に関する6つの代表的なお悩みについて、解説していきたいと思います。
お悩み1 とにかく好き嫌いが多い!
与えられていたものを食べていた離乳食が終わり、自我も芽生え、意思が表れてきた証拠。「幼児期の好き嫌いはあって当然で、そのうち食べるようになる!」くらいのおおらかな気持ちで乗り切りましょう。おいしい=味覚の学習です。新しい味を通して「おいしい」を発見することで味覚の幅が広がり、食べられる物も増えていきますよ。ただ、無理やり食べさせようとすると、食事の時間が嫌いになる場合も。逆に、楽しい食卓の雰囲気で親がおいしく食べているのを見れば「この食べ物は安心」と認識します。
お悩み2 かなりの偏食で〇〇しか食べない
ポテトだったり白米だったり、それしか食べない通称“ばっかり食べ”は、2~3歳の頃に多く、そのブームはコロコロ変わります。大事なのは、今食べないものも、味や固さ、見た目の雰囲気などを変えながら食卓に出し続けること。この時期の子どもは気まぐれなので、お皿やカトラリーを変えたり、ピックに差して気分を変えるだけで食べることも。一口でも食べたら思い切り褒めてあげましょう。
お悩み3 とにかく食が細い
食が細い子は食べることに興味がないことが多いので、一緒に食材を買いに行ったり、お手伝いをしたりして、食べ物への興味や食べる意欲を育てることが大事。また、出される量がプレッシャーになることがあるので、盛り付ける量は食べきれる程度にし、完食することの達成感を感じさせてあげましょう。また、食べる量よりも内容に注目し、ご飯は混ぜご飯に、汁物は具だくさんにするなど、1品で摂れる栄養素の種類を増やすのもおすすめです。保育園や外食など、環境が変わると食べることもありますし、身長体重が十分に増えていて元気なら基本的には問題ありません。
お悩み4 兄妹で食の好みが全く違う
この悩みは案外多く、中には上の子と下の子で違う食事を毎回作っているという頑張り屋のママも。私がおすすめしている解決策は2つ。まずは「ハンバーグなら食べられる」など、兄妹ともに好きなものを見つけ、そこからミートボール、そぼろ丼などアレンジしていき、2人が食べられるメニューを増やしていくというもの。もしくは、月水金はお兄ちゃん、火木土は妹と、好みを順番に合わせていくというもの。どちらかが食が進まない日があってもある程度は目をつぶりましょう。こうすることで苦手な料理にもチャレンジする機会ができ、結果的に兄妹の食の経験を増やすことにもなります。
お悩み5 デザートやフルーツなど甘いものへの執着がすごい
甘味は幼児が本能的に好む味。ですが、「泣いたらもっともらえる」という習慣がついてしまうと後々大変なので、「甘いものはおやつの時間や食事の後」など時間を決め、量はママが管理するようにしましょう。ポイントは、一切与えないのではなく、クッキーばかりではなくチーズや蒸し野菜、ジュースばかりではなくココアや豆乳など、栄養補給になるものも与えるようにし、お互いの中間地点を模索していくこと!
お悩み6 じっと座って食べていられない
まずは、決まった時間に、おなかが空いた状態で食事をする習慣づけが大切。出された料理が好みじゃない、量が多い、空腹じゃないなど、食事に集中できない理由を探しましょう。さらに、椅子やテーブルは体にあっているか、おもちゃは片づけ、テレビは消すなど環境の見直しも大切です。とはいえ、幼児が食事に集中できるのはせいぜい15分程度。30分は様子を見て、それでも食べないのなら子どもに確認してから片づけをしてもOKです。
【ポイント】
おしゃべりができるようになったら、「何で嫌なのか」の食べない理由をお子さんに聞いてみてもよいですね。味付けや食感が気に入らないなど理由がある場合は、改善することで食べるようになることも。また、調理法の見直しも大切です。電子レンジ調理は時短で便利ですが、火通りにムラができたり食材もパサつきやすく、アクのある野菜は幼児が苦手なえぐみも残りやすいです。調理法を蒸す、煮る、茹でるなどに変えることで食べやすくなる場合もあります。
幼児食に目指すゴールは5つ!
__幼児食のゴールとは?
ママたちに知っておいてほしい幼児食のゴールは以下の5つ。ぜひ心に留めておいてください。
①母乳やミルクに頼らず、3回の食事とおやつで十分な栄養を摂れるようにする
②3食の食事のリズムを作る
③噛む力を育てる
④食事のマナーや自立を促す
⑤好きなものを増やし、学童期以降に自ら食を楽しめる意欲を育む
①②に関しては、つまりは「生活のリズムを整える」ということ。例えば、夕飯の時間が遅かったり生活が不規則だと、翌朝お腹が空かず、朝ごはんを抜く悪い習慣がついてしまいます。これを後から直すのはとても大変です。③の「噛む力」はとても大事で、噛むことで健康な歯を作り、肥満予防、味覚の発達、短期的な記憶力も高くなると言われています。④は食事前には手を洗う、いただきます・ごちそうさまなどの挨拶、お箸や食器の持ち方といったもの。これは、⑤にある通り、小学校以降に自分で食事をする機会に、正しい食習慣が身につけられることを意味します。好きなものが多い方が給食の時間も楽しいですし、食が豊になることで心も豊になりますよね。
【まとめ】
子どもは成長とともに食の好みも変わり、食べられるものは増えていきます。焦らず、楽しみながら整えていきましょう。何より、子どもは親がおいしく食べていれば「この食べ物は安心、自分も食べてみたい!」と認識していくことも忘れずに。また、この時期に正しい食習慣が身に付くことは理想的ではありますが、子どもの心身の発達には個人差があります。あくまでも子どもの様子を見ながら進めていくことが大切です。
後編では幼児食を作る際のコツや、おすすめレシピをお伝えしていきます。
SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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