公開 / 更新
子育て

完全版!【メンタルリープとは】生後20ヵ月で10回起こるぐずり期

完全版!【メンタルリープとは】生後20ヵ月で10回起こるぐずり期

「赤ちゃんは成長の過程で、ある決まった時期にぐずりやすい」という事実があることをご存知ですか? 欧米ではすでに広く知られていて、あるデータによるとオランダやドイツでは94%の親が知っているのだとか。

その「ぐずり期」の存在を広めたのが、オランダのプローイュ博士。今日は、博士が発見した「メンタルリープ」という赤ちゃんのぐずり期についてご紹介したいと思います。

メンタルリープとは?

赤ちゃんの「訳わからない泣き」には、実はちゃんと理由があります。生後20ヵ月の間に10回のぐずり期を通過すると言われており、プローイュ博士がこれを「メンタルリープ」と名付けました。この期間、赤ちゃんの脳は急激に成長し、新しいスキルや認識能力を獲得します。そのため、赤ちゃんは内部の変化にとまどい、いつもより機嫌が悪くなることがあるのです。 泣きやすくなるこの時期は、赤ちゃんが新しい世界の見方や理解を形成している証拠。いうなれば、「知能の急成長期」とも言えます。「どんなにあやしてもダメ!」とさじを投げたくなるあの大泣きは、成長に伴う“とまどい泣き”だったのですね。

10回のメンタルリープはいつやってくる?計算の仕方

それでは、その10回のメンタルリープの時期と計算の仕方をご紹介しましょう。

メンタルリープは、出産予定日から数えた週齢で、5週、8週、12週、19週、26週、37週、46週、55週、64週、75週の10回起こります。誕生日ではなく、出産予定日というのが特徴的です。

もし今、お子さんがぐずってしまって手に負えないとお困りでしたら、ぜひ、出産予定日からの週数を数えてみてください。1週間ほどのずれはあるようですが、そこに当てはまるようでしたら、今、まさに脳が急成長中というわけです。

メンタルリープの計算方法やツールについて、こちらの記事もぜひご参考ください。簡単に計算できるツールもご用意しております。

メンタルリープのそれぞれの時期の特徴

メンタルリープの10回のステップにはそれぞれネーミングがあり、クリアするごとに、赤ちゃんはより高いレベルのことができるようになっていきます。そのとき、赤ちゃんの中では何が起こっているのでしょう? またそれにより、何ができるようになるのでしょう? 各段階の”変化“と”達成“を順にご紹介します。

起こる時期メンタルリープの名称この時期に見られる主な成長や変化
1回目生後5週頃五感のリープ

[変化の特徴] 物事の感じ方が大きく変化する時期。周りで起こる出来事にはっきりと興味を示すようになる。 [見られる行動] それまでよりもじっと何かを見つめるようになる、触れられると笑うなど。

2回目生後8週頃パターンのリープ[変化の特徴] 新生児時代の原始反射が少なくなり、身の回りの物事には規則性があることに気づく時期。 [見られる行動] 自分の意志で物事を行う、音の方に顔を向けるなど。
3回目生後12週頃推移のリープ[変化の特徴] 物事が移り変わる様子を認識する能力が身につく時期。 [見られる行動] 興味あるものを見たいとき、体をよじる、頭をひねる、目で追うようになる。光の強弱、音の強弱など、動きや変化のあるものに興味を持つなど。
4回目生後19週頃出来事のリープ[変化の特徴] これまでの3つのリープで得たものを重ね合わせ、物事の変化を複数の五感を使って複雑に感じ取れる時期。 [見られる行動] つかもうとしたものがつかめるようになる、物を口に入れる、親の居場所を探すなど。
5回目生後26週頃関係のリープ[変化の特徴] 物事の関係性を理解するようになる時期。目で見えるものの、位置関係、距離感が分かる。 [見られる行動] 見慣れない人をじっと見る、細かなパーツなどに興味を示す、舌を使って音まねをするなど。
6回目生後37週頃分類のリープ[変化の特徴] 物事を分類する力がつく時期。 [見られる行動] それまで同類だと思っていた動物を区別できるようになる。比べることが好きになる、外に出て探索するのを好むなど。
7回目生後46週頃順序のリープ[変化の特徴] 物事の一連の流れを組み立て、実現しようとする時期。 [見られる行動] スプーンを使い一人で食べようとする。流れのある遊びを好む。パパママがする手の動作を追ってまねるなど。
8回目生後55週頃工程のリープ[変化の特徴] 順番が決まっている一連の流れを1つの作業としてとらえられる時期。 [見られる行動] ママのお手伝いをし、その作業に必要なものを準備するママのお化粧を観察するなど。
9回目生後64週頃原則のリープ[変化の特徴] ルールや原則を求める時期。 [見られる行動] 自分の物と他人の物の区別がつく、交渉や駆け引きをするなど。
10回目生後75週頃体系のリープ[変化の特徴] 環境に合わせて適応できるようになり、自我の発達がはじまる時期。 [見られる行動] 一人の人間として「自分がやりたい」「自分で決めたい」のような自我を出した行動が増えるなど。

パパやママが「なぜ?」「どうして?」と感じる変化の裏には、しっかりとした赤ちゃんの成長があるということですね。

たとえば、2~3ヵ月の赤ちゃんが手をじっと見る仕草も、ママにとっては、「うちの子、自分の手をじっと見ているけどなぜ?」と不思議に感じるかもしれませんが、これは、ステップ2「パターンのループ」をクリアし、自分に手足があるという“パターン“に気づいた証拠。俗にいうハンドリガードの現れです。

また、ステップ4「関係のリープ」を経て、距離感を感じ取れるようになると、ママが自分から離れることを極端にいやがるようになります。俗にいう人見知りのことですね。

月齢別の寝ぐずり対策

メンタルリープの概念が分かると、泣いている理由が分かるので、親の気持ちの構え方は少し楽になるかもしれません。でもやっぱり泣かれてしまうと、「まいったな~」というのが本音。そこで、月齢別の寝ぐずり対策をご紹介します。

【新生児期】

この時期の睡眠時間は15~20時間くらいと、一日の多くを寝て過ごし、何かしらの不快感があるとそれを泣いて訴えます。1回の睡眠がまだ短いので、泣いて訴える頻度も多いですが、おっぱい、ミルク、おむつ、肌着を満たすことで落ち着きやすい時期なので、赤ちゃんの身の回りの不快感を取り除いてあげることがポイントになります。

【0歳前半】

少しずつ、昼と夜の区別がついてきます。夜、だんだんとまとまって寝てくれるようになる一方で、夕方頃に泣き続ける「たそがれ泣き」をする赤ちゃんも出てきます。お腹を満たし、お尻をすっきりさせても全然泣き止まないこともあるでしょう。

そんなとき、親が何かしらの反応を示してあげると、それが大きな違いにつながります。心理学ではこれを「応答感受性」と言いますが、親子の精神的な絆・アタッチメント形成につながっていきます。泣き止まなくても、赤ちゃんにはしっかり伝わっていますので、抱っこしたり、穏やかな声をかけたりと反応を示してあげるのがポイントです。

【0歳後半】

昼夜の区別がつき始めるので、このあたりから、起きる時間と寝る時間を意識し始めたいところです。この時期、寝ぐずりや夜泣きに悩むご家庭が増えますが、ハイハイなど活発に動けるようになることで、昼間の興奮を夜に引きずってしまうこともあるようです。

寝ぐずり対策としては、夕方以降の過ごし方を穏やかモードにし、おんぶひもなどを活用しながら、子どもが寝つきやすい流れを作っていきましょう。

【1歳過ぎ】

メンタルリープを見ても分かるように、1歳を過ぎると物の流れがだいぶ分かってきます。一貫性を持って接することが大事なので、睡眠に関してもリズムを作ってあげるのがポイントです。お昼寝の時間を午後遅くにしない、寝る間際に興奮し過ぎないなど、夜、寝入りやすいリズムを整えることが、この時期の寝ぐずり対策と言えます。

【2歳以降】

子どもが上手に寝つくためには、「睡眠用ホルモン」とも呼ばれるメラトニンが上昇している必要があるのですが、夜寝る前にテレビなどのスクリーンにさらされると、せっかく夕方以降上昇していたメラトニンの分泌量が減ってしまい、結果として寝つけないなどのトラブルに発展します。

テレビの内容で興奮するからだけでなく、光によるホルモンへの作用もあるわけです。スクリーンに触れる時間に気をつけることもこの時期の寝ぐずり対策になるでしょう。

メンタルリープの赤ちゃんにはどう対処すればいいの?

20ヵ月に10回。ざっくりといえば2ヵ月に1回の頻度で“ぐずり期”がやってくることになります。メンタルリープの存在を知っていればぐずり期に対する心構えが変わってくるのではないでしょうか。

実際に、メンタルリープの知識を子育てに活用したオランダのママたちの声をご紹介すると、 「赤ちゃんのぐずる時期にあらかじめ備えることができた」 「赤ちゃんが泣き止まなくても、理由がわかっているので悩まなくなった」 「赤ちゃんの進歩の瞬間に気づいて、新しく芽生えた行為の練習の補助ができた」 「赤ちゃんが泣き止まないという悩みを成長の喜びに転化できた」 のように、ぐずり期をポジティブに捉えることさえできるようになっています。

最大のメリットは、「あ、これはメンタルリープだからだ」と泣かれてしまったときの動揺が減ることかもしれません。とはいえ、その動揺はゼロにはならないですし、泣いているわが子を「なんとかしないと」と思うのが親心です。

大事なのは、親が反応を示してあげることであり、その結果、泣き止んでくれたらラッキーと思っていた方が、精神的に楽だと思います。泣く赤ちゃんに寄り添い、泣き止ますことを絶対視しないのがポイントになります。そしてなにより大事なのは、周りにいる人たちが、「頑張っていてもできないこともある」ということに理解を示すことだと思います。

メンタルリープの語源「ワンダーウィーク」とは?おすすめの書籍やアプリなども

以上、メンタルリープについて解説してきました。日本では「メンタルリープ」という言葉ばかりがよく知られるようになってきていますが、元の名前は「ワンダーウィーク」なのをご存じでしたか? ワンダーウィーク、つまり、「不思議な週間」です。生まれてからの75週間には、赤ちゃんの不思議がたくさんあるんですよというネーミングです。

私がおすすめする書籍とアプリはこちら!

<メンタルリープ公式育児書>

『ワンダーウィーク〜0歳児の8つのぐずり期を最大限に和らげて発達を促してあげる方法とは〜』石川卓磨@リープ研 (著), プローイユ博士 (著) 世界累計200万部のベストセラー。メンタルリープの原書。赤ちゃんが感じている世界とその変化をメンタルリープにより詳しく解説しています。月齢に合う章から読んでみてください!

<メンタルリープ公式アプリ>

『ワンダーウィーク』(Domus Technica) 出産予定日を入力するだけで、メンタルリープの時期をアプリ内のカレンダーに表示してくれます。

このアプリの原訳者でありメンタルリープの名づけ親でもある、ワンダウィーク日本責任者の石川卓磨さんより「このアプリは、赤ちゃんがメンタルリープに入ってぐずりやすくなる明確な時期や理由がわかり、プローイユ博士等が考案したリープに効果的な対処法、あやし方、知育、遊び、おもちゃ、育児ストレス解消法などを実践できることがおすすめです」とコメントをいただきました。

メンタルリープの翻訳&研究者、石川卓磨さんにインタビュー!

__メンタルリープ育児をする上で最低限知っておきたいことを教えてください!

生後20ヵ月の間に赤ちゃんは10回ぐずり期があります。これはいわば“赤ちゃんの思春期”です。そのぐずり期間は夜泣きが多くなったり昼間も泣く回数が増えますが、どの赤ちゃんにも多かれ少なかれ起きること。お母さんはびっくりしないように備えておきましょう。

そのリープ期の裏で、赤ちゃんは認知的な発達が急激におきています。ですから、その時期は遠くに出かけたりあまり付加をかけないほうがいいですね。

__メンタルリープ中にやったほうがいいこと、NG行動はありますか?

メンタルリープ中の赤ちゃんはお母さんへの「抱っこ」の欲求があるので、泣いたらなるべく抱き上げてあげるようにしてあげましょう。また、リープ期は赤ちゃんにとって世界が一変するくらい感覚が変わる時期です。ですから、そのリープ周期の発達に適した遊びをして、それに慣れさせてあげるとぐずり期間が短くなります。

リープ期の赤ちゃんは1日生きるのが大変な時期で、黄昏泣き(たそがれなき)とも言われるように夕方や夜になるにつれて疲れがたまってぐずるというデータもあります。ですから、昼間に環境が変わるストレスをなるべく与えないほうがいいですね。遠出の旅行や厳しいねんねトレーニングで一定期間抱っこをしてもらえないというのもストレスになります。泣くことは赤ちゃんにとって言葉です。泣いたら抱っこで応えてくれるというコミュニケーションは社会性や言葉の発達、情緒にもつながります。旅行に行く際はメンタルリープカレンダーに沿って計画を立てるといいですね。

__リープ期の赤ちゃんにはどんな遊びがいいのでしょうか?

生後5週だと「五感のリープ」、8週だと「パターンのリープ」とそれぞれの時期に見られる成長があります。例えば生後3ヵ月(12週頃)の「推移のリープ」なら、振る動きに反応するので、ガラガラとかバウンサーなどもいいですね。生後8週の「パターンのリープ」は押す、触るのが分かれ目でゆっくり動くものや音の推移を追えるので、そういう関連のおもちゃがおすすめです。何より、赤ちゃんが自分からやっている行動に補助したり応援してあげるのがポイントです。

__なぜ出産予定日で計算するのでしょうか?

早産で生まれた子は発達が生産期の子よりも遅れがちなように、赤ちゃんの発達は着床(妊娠した時)から始まっているのです。特に味覚や聴覚はお腹の中で発達が始まっています。出産予定日は最終月経の日を妊娠2週と数えるのはそのためです。自然妊娠の場合多少のずれはあるので、リープが予定より少し早め、遅めならずらして計算しても大丈夫です。

__メンタルリープ期に変化がない子もいますか?

あまり変化がない子もいます。正確には「出し方が大人に伝わらない子」と言った方がいいかもしれません。中にはぐずらず逆に笑顔が増える子もいます。ぐずる=要求を伝えるひとつの手段ですから、それが満たされるなら笑顔でもいいのですが、幼児期以降、苦しいときに笑顔になってしまうと周りから分かってもらえないのであまりよくないとも言われています。とはいえ、あまり気にせず「思春期があまりない子だな」くらいに思っておけば大丈夫です。

__常に抱っこをせがむので、ほぼ一日中抱っこ状態でも大丈夫ですか?

大丈夫です。昔は「泣き癖」「抱き癖」がつくと言われましたが、最近では、0歳児ではその後の発達に影響せず、抱き癖が出るのは1歳からと考えるのが一般的です。ですから、0歳のうちはいくらでも抱っこしてあげてください。また、過去のデータを見てもよく泣き抱っこを求める子はコミュニケーション力が高く、お母さんを動かしているため、そういう子の方が学校の成績がいいという研究もあります。ずっと抱っこでも問題ありませんが、あくまでお母さんが無理のない範囲で。

__ねんねトレーニングは1歳以降のほうがいいのでしょうか?

メンタルリープの考えでは、1歳まではあまりしないほうがいいとされています。生後6ヵ月まではメラトニンやコルチゾールなど寝るために分泌されるホルモンの分泌が定まっておらず、体内時計も完成するのは2歳頃だからです。やるとしても1歳からゆるやかに始めるのがおすすめです。

__運動能力が高い赤ちゃんはリープも先取りして大丈夫?

例えば、白人の子に比べて黒人の赤ちゃんの運動発達は早いと言われているように、筋肉の発達や体つきなどにより差はあります。その習得の差はあっても、発達が始まるメンタルリープ時期はどの赤ちゃんも同じです。音が早い、運動が早い、見るのが早いなど赤ちゃんによって個人差はありますが、それはその子の特性です。運動神経がいいからといって先取りリープはせずに、今興味があることに合わせたものをやれば大丈夫です。

<メンタルリープ相談会> メンタルリープを日本に伝えた研究者石川卓磨さんと、育児に奮闘する妹ママが中心となり、悩みを抱えるパパママのためにツイッター上で立ち上げた育児コミュニティ(@leap_gakusha)。0~2歳児のぐずり期に関する育児情報交換や交流、専門家への相談の場を提供しています。インスタグラム(@mentalleap_sis)もあるようですので、ぜひフォローしてみてはいかがでしょうか。

オランダ発の「ワンダーウィーク」、取り入れてみてはいかがでしょうか。

【参考文献】http://www.thewonderweeks.com/
不思議な週齢ワンダーウィークス:http://wonderweeksjpn.com/
著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

  • twitter
  • はてなブックマーク
  • LINE

関連記事

新着記事