愛情の3つの柱で「わが子への愛情」のバランスをチェック!
「親の子どもへの愛情」っていったいどのようなものなのでしょうか。
子どもには、愛情を注いで育ててきたつもりだったのだけど、愛情不足や過保護を指摘されたり、集団生活に馴染めず「愛情の注ぎ方が間違っていたのでは……」と悩む親御さんもおられるかもしれません。
そこで今回は、漠然としていて、分かりにくい「愛情」という言葉について考えてみました。親が子どもに注ぐ愛情を「支援の愛」「理解の愛」「自分への愛」と3つに分類することで、今の自分に足りないものが見えてくるはずです。具体的な「愛情チェックシート」もぜひ参考にしてみてください!
目次
子どもへの愛情に大切な3つの柱とは?
「愛情」を辞書で引くと
① 人や物を心から大切に思うあたたかい気持ち。いつくしみの心。 「 -を注ぐ」
② 異性を恋しく思う心。 「ほのかな-を抱く」 とあります。(大辞林 第三版)
親が子どもに注ぐ愛情とは、前者の方ですね。
では、「大切に思うあたたかい気持ちやいつくしみの心」を子どもに注ぐとは、日常生活に落とし込むと、どのような行為、言動なのでしょうか。
それは、「支援の愛」「理解の愛」「自分への愛」と大きく3つに分けて考えると理解しやすいと思います。次にそれらを詳しく説明していきます。
その1「支援の愛」
これは、「子どもが心身ともに健康に育てる環境を支援すること」です。
子どもの成長に合わせた食事や清潔な衣服、安心して住める場所、そして教育を受けさせるなど、心も身体も健康に育つ環境を整えましょう。また就寝や起床、はみがきや入浴の促しなど、基本的な生活習慣を身につけるよう生活を支援していくことです。
その2「理解の愛」
これは、「子どもの目線に立って、子どもの気持ちを理解しようとすること」です。
子どもが今、何を感じ、思い、考えているか、子どもの立場に立って、気持ちに寄り添いましょう。同じ物事でも、大人の目線と子どもの目線では、見え方が全く違う場合もあります。
また、子どもは言葉で出来事や感情をうまく言い表せないこともあるでしょう。それらのことを考えたうえで、子どもの気持ちを理解しようと努力していくことです。
その3「自分への愛」
これは「親自身が子育てを楽しむこと」です。
子どもは親の気持ちを敏感に読み取ります。親がいつもイライラしていたり、落ちこみクヨクヨしたりしていれば、子どもはそれを感じとり、「自分がいるせいで、ママは辛い思いをしている」と自己否定をする場合があります。親自身、子育ても含めて人生をイキイキと楽しむことも大切です。
あなたのわが子への「支援の愛」をチェック!
□食事は適切に与えているか(栄養のバランスや食が進む雰囲気など)
□衣服は適切に与えているか(季節や成長、衛生面など)
□心身共に安らげる家であるか
□年齢に適した教育は受けさせているか
□生活習慣が身につくよう言葉がけなどしているか など
支援の愛情が大幅に不足すると、いわゆるネグレクトや育児放棄になります。ですが、子どもへの「愛情の注ぎ方」を気にかける親御さんでしたら、これが不足することは少ないと思います。むしろ過多の方が多いのではないでしょうか。
この愛情があまりにも多すぎると、子どもが自分でできることも親が手や口を出し、自立を阻むこともあるでしょう。
あなたのわが子への「理解の愛」をチェック!
□頭ごなしに、怒ったりしていないか
□子どもの話には耳を傾けるようにしているか
□子どもはが喜びや悲しみの感情を表したとき、受け止めているか
□将来の進路や職業を親が強要していないか
□勉強やスポーツなどの向上を一方的に求めていないか など
理解の愛情が不足すると、親の一方的な願いや思いが先走り、勉強やスポーツ、また将来の職業を強要することがあります。
子どもには、個性や特性があって向いていない場合や、望んでいないこともあるでしょう。それにも関わらず、それらを強いられる子どもは、親に抑圧され、本来の自分を出せなかったり、いつか抑えた感情が爆発することもあるでしょう。
また子どもの喜びや悲しみ、悔しさなどの感情を受けとめられず、「親は分かってくれない」と感じ、親子の間に隔たりが生じることもあります。
子どもへの理解の愛情が過多である場合の問題はほぼないと言ってよいでしょう。ですが、3つの愛情の中で、最も分かりにくく、不足していることが気づきにくいですので、ときどき子育てを振り返ってみましょう。
あなたのわが子への「自分への愛情」をチェック!
□いつも自分のことを後まわしにし、イライラが蓄積していないか
□子育てがうまくいかないと、クヨクヨしていなか
□人に援助を求めることができず、「手伝って」を言えないことがないか
□子どもがいるために、○○できない、と自己犠牲の感情を強く持っていないか
□休息時間を取ったり、楽しんだりすることに抵抗を感じていないか。
自分への愛情が不足すると、自分のことはいつも後回しにし、気がつけば、気持ちに余裕がなくなり、イライラしたり怒鳴ったりしてしまいがちです。また思い通りにいかない子育てに落ちこみクヨクヨしがちになるでしょう。
反対に「自分への愛情」が過多になると、子どものことをなおざりにしたり、また「支援の愛情」や「理解の愛情」が不足することにもなってくるでしょう。
ときどき、子育てを振り返ることが大切
「子どもにもっと愛情を注ぎましょう」「愛情を持って、子育てをしましょう」などの言葉で、さまざまな問題の解決とされていることがあります。
ですが、ほとんどの親は、愛情を持って育てているのではないでしょうか。ただ、その愛情の捉え方、方向性が違うので、親の気持ちが空回りし、かえって子どもを苦しめる結果になったり、子どもの成長を妨げたりするのです。
子育てに一生懸命な親ほど、いずれかの愛情に偏ったりすることがあります。時には、自分の子育てを一歩引いて、上記の3つの愛情の三角形のバランスに偏りがないかを見つめてみましょう。
「子どもへの愛情」を生活の中に落とし込んで、過不足していないか、親自身が客観的に省みることで、子どもが健やかに成長する愛情を注ぐことに繋がるはずです。
公立幼稚園、小学校での勤務、幼児教室を7地域で展開、小児病棟への慰問、子どもの声を聴く電話相談など、多方面から多くの子どもに関わる。そのような中、子育てに熱心な
故に、その愛情が焦りとなり挫折、絶望感を抱いている親子が多いことに心を痛める。
「子どもの自立」「自己肯定感」「自己制御力」を柱とし、真に子どもの能力を開花させる子育て法を広める活動を2010年から始める。
現在、息子は大学病院で医師として、娘は母子支援の職場で相談員として勤務。実生活に落とし込んだ、親の心に寄り添う記事に定評がある。「難しいことを分かり易く、ストンと腑に落ちて行動に移せること」を理念とし、現在は執筆、講演、幼児教室を中心に幅広く活動中。
資格:小学校教諭・幼稚園教諭・保育士・日本交流分析協会 子育ち支援士
著書:『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』(株)KADOKAWA