子どもを犯罪から守る!ブラジルの保護者や学校が実践していることは?

子どもを犯罪から守る!ブラジルの保護者や学校が実践していることは?

ブラジルで子どもの年間誘拐数は毎年5万人と非常に多く、12歳以下の子どもを自宅に一人で留守番させてはいけないと法律で定められています。

学校の登下校に関しては小学生(10~11歳)までは親などの同伴が必要で、送迎が難しい場合はスクールバスと個人契約して対応します。
また、子どもが自分の身を守れるように、格闘技や武術といった習い事が人気です。

スクールバスでの送迎も含め安全な登下校管理を徹底

ブラジルの学校は子どもの送迎について、徹底した安全管理を行っています。

毎年保護者の情報や車のナンバーなどを学校が把握し、保護者自身か保護者が承認している人、学校に届け出を出している人が送迎する決まりです。

送迎ができない保護者は、スクールバスと契約します。各学校がスクールバスを持っていることは稀なので、数か所の学校を回っているスクールバスのドライバーと個人契約を結ぶのです。

スクールバスは決まった時間に各家庭を順番に回り、ドアトゥードアで子ども乗せます。日本の幼稚園バスのように指定集合場所に保護者が連れていくことはありません。

保護者の車やスクールバスが学校に到着すると、職員が入口前で子どもたちを出迎えます。保護者は学校の駐車場に車を停めて子どもと一緒に学校の入口まで行くか、ドライブスルー形式で入口前に車をつけて職員に子どもや荷物をピックアップしてもらいます。

保護者でさえも、学校行事や保護者会以外は許可なく校舎内に立ち入ることは禁止されています。

ブラジルでは11~12歳で中学生になり、ここからが親が同伴せずに一人で行動してもよい年齢の目安になっています。

下校時間になると、中学生以上の生徒は自由に帰宅できますが、小学生は保護者が迎えに来たのを確認したうえで職員がマイクで呼び出します。

保護者は車を学校の駐車場に停めて車から降り、出入口の外で列に並びます。車から降りずにドライブスルーで車の列に並び、子どもたちが出てくるのを待つこともできます。

この時も職員が子どもの乗車を手伝いながら、保護者を目視で確認します。

このように迎えには10分から30分の時間がかかりますが、子どもを確実に安全に送迎するために、保護者も当然のこととして受け入れているのが現状です。
スクールバスでの送迎も含め安全な登下校管理を徹底
学校のドライブスルーで子どもを迎える車の列の様子

半日の時間を学校以外の場で過ごす

ブラジルの学校は基本的に午前または午後の2部制のため、子どもたちは半日にあたる時間を学校以外の場所で過ごすことになります。

自宅でシッターさんやと祖父母と過ごす、日本でいう学童保育のようなアフタースクールで過ごす、保護者の送迎ができる場合は習い事をする、などの選択肢があります。

なかには全日制の学校もあるのですが、かなり数が限られているのが現状です。

全日制の場合、半日はカリキュラムで定められた授業、もう半日は課外活動になります。
全日制の学校やアフタースクールではだいたい保護者の終業時間ごろまで子どもを預かってくれ、シャワーや夕食まで済ませられるところもあります。

護身のために武術の習い事が人気

ブラジルでは空手、柔道、カンフー、テコンドー、ムエタイ、ブラジリアン柔術など、日本をはじめ、アジア各国から伝わった武術の習い事が豊富です。

ジムやスポーツ施設でも習うことができますが、全日制の学校やアフタースクール内で習えることも多く、習い事の送迎ができない共働き世帯は大変助かります。

武術系の習い事のなかでも、ブラジリアン柔術はとくに子どもから大人まで人気が高い習い事といえるでしょう。

子どもの場合は5~6歳ごろから始めることが多く、月謝は週1回で155レアル(約4,600円)程度が相場です。

ブラジリアン柔術とは、20世紀初頭にブラジルを旅した日本人柔術家である前田光世氏と出会った現地のガスタオン・グレイシー一家が、本人から直々に柔術を習得した技が基本。それに新たな技術を取り入れ、独自に発展させたものです。
護身のために武術の習い事が人気
ブラジリアン柔術をする子どもの様子

ブラジルでは強盗の被害にあった場合は絶対抵抗するな、とよく教えられます。
しかしながら、犯行現場に居合わせた人がブラジリアン柔術の黒帯者で、技をかけて犯人逮捕に繋がったことや、強盗に入った場所がブラジリアン柔道の道場でそれを知った犯人が逃げ出したなど、柔術が強盗事件の抑止力になったニュースもよく取り上げられています。

こうした背景もあり、自分の身は自分で守るという護身用のために、ブラジルの保護者は子どもに格闘技や武術を習わせることに積極的です。

おわりに

ブラジルでは子どもがいない夫婦に子どもを売る闇取引業者による誘拐や、性的いたずら目的での誘拐などもあり、子どもに関する治安上の不安が付きまといます。そうした社会背景を考えると、自立できる年齢までは保護者が常に同伴し目を光らせておく、ということもやむを得ないといえるでしょう。

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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