子育てで「他人の目」が気になる日本人。自分と子どもへの対処法

子育てで「他人の目」が気になる日本人。自分と子どもへの対処法

育児をしていると、子どもたちの大胆なふるまいに小言を言いつつも、「大人って人の目を気にしちゃうなぁ」と感じることはありませんか? 今回のテーマは他者の目線。カウンセリングでも頻繁にトピックとして挙がる悩みの1つであり、ときに重度なストレスを引き起こすものでもあるので、今回はその対策について見ていきたいと思います。

他人の目が気になる日本人の自己観について

私が運営している育児相談室では、お子さんについてのお悩みだけでなく、親御さんご自身のお悩みもお聞きしています。その中でよく悩みとして挙がるのが、「人からどう思われるかを気にし過ぎてしまう」というものです。ある程度気にするのは社会で生きていく上で必要なことですが、過度になると、「自分軸がなくてしんどい」「自己肯定感が低い」「私って何なんだろう」というような自分自身のあり方を揺さぶる問題へと発展してしまいがちです。

人からどう思われるかを気にしてしまう傾向は、日本人のある“自己観”に通ずるところがあります。それは、「相互協調的自己観」と呼ばれるもので、東アジアの人に多く見られると言われおり、欧米人の「相互独立的自己観」とよく対比されます。わかりやすく言うと、「他者となじんでいる」「みんなと上手くやっている」と感じると、「自分は価値ある人間だ」と思える、そんな自己観です。日本の和の文化にもつながる話なので、うまく作用しているときは団結力や居心地のよさにつながりますが、裏を返せば、「一緒じゃないと不安」「自分だけ浮いていないか」という目線にもなりやすく、過度になると、今回のテーマである「他者目線を気にし過ぎてしまう」という悩みに発展してしまうのです。

比較対象として欧米の人の傾向を補足すると、相互独立的自己観の場合、自分の持つカラーや「らしさ」に自己の価値を見出します。よって、欧米人にとっては、他者との違いがいい方に働くため、日本人ほど「人からどう思われているか」で振り回されにくくなるのです。

他人の目を気にし過ぎるタイプの特徴とは

自分が人目を気にするタイプかどうかについては、自覚している人が多いというのがカウンセリングを通じての印象ですが、中には、別のお悩みで相談に来ていて、深くお話しを聞いているうちに、その傾向に気づかれる方もいますので、ここであらためて、どのような人が他人の目を気にし過ぎるタイプなのかを見ていきたいと思います。

まず特徴的なのは、思考面で、
・過去の出来事や他者との会話を後になってよく思い返す人
・自分の中で話しを二転三転させながら気が滅入っていく人
・考え事をしていないときがないくらい思考でいっぱいな人

基本的にはどれか1つというよりは、どれも当てはまる人が多いと思います。

たとえば、ママ友とのおしゃべり。家に戻った後に、その時の会話を思い出すことはよくあるかもしれません。しかしそれが過度になると、「ああすべきでなかった」「余計なことを言ってしまった」「何てことをしてしまったんだ……」とエンドレスに自分を責め、気持ちを落ち込ませてしまうことになります。日中のささいな会話が、数時間後に自分を落ち込ませる舞台になってしまうのです。

心の中の口ぐせとして、
「○○さんはこう思ったかもしれない」
「さっきの私の発言、どう思われたかな」
というような言葉が走りやすい人は、レベルの違いはあれど、他人の目が気になりやすい人と言えます。

人の目が気になるときに試してほしい2つの対処法 

ならば、「人のことばかり気にしないで、自分を大切にしよう」とシフトできればいいのですが、実際にやってみるとなかなか難しく、思うようにはいかないことが多いもの。だからこそ、多くの方が悩んでいるのですね。

上に書いた「○○さんはこう思ったに違いない」は、心理学で言うと、「読心術思考」と呼ばれるもので、相手の考えていることがわかった気になってしまう思考です。でも実際どうでしょうか? 他者の考えていることを私たちは“わかる”のでしょうか? 冷静に考えれば、「人は人」なのだから、何を考えているかは正確にはわからないですよね。でも、渦中にいると、わかった気がして、それが事実のように感じてしまうため、自分の行動がぎくしゃくしてしまうことになります。

その1 本当にそう?と自問する
そこでまず意識してみたいのは、「○○さんはこう思ったに違いない」という思いがよぎったら、それに対し、「本当にそう?」と疑う自分を立てる、ということです。わかった気になっているのか、実際にわかっているのかでは全く違います。そこに割って入ってあげる“自分”を作ってあげられると、「相手がそう思ったとは限らない」という現実に気づけ、他人の目から少し解放されやすくなります。

その2 自分が本当にしたい行動を選ぶ
あとは、何かをやる・やらないで迷っている場合だったら、
「自分がそれをやりたいのか」
「それとも周りの期待に応えるためにやろうとしているのか」

という自問も有効です。当たり前のことですが、自分の行動の“行動主”はまぎれもなく自分自身です。しかしこのことをつい忘れてしまい、「他者が私の行動を決めている状態」になってしまっていることはとても多いので、「私が○○したいからやる」と言える行動を選ぶように意識することも大事でしょう。

2つほど改善のヒントをお伝えしましたが、実際にやってみるとなかなか手ごわいと感じると思います。長年の習慣はしつこいものなので、細く長く意識づけしていくことがポイントです。
そして私が大事だと考えているのが、子どもたちが同じような悩みに陥らないよう気をつけていくことです。私のカウンセリングでこの悩みに取り組んでいる方の多くがおっしゃるのが、「この悩みをわが子には繰り返してほしくない」ということ。次の項では、対・子どもたちにできる働きかけを見ていきたいと思います。

子どもに繰り返さないための声掛けの工夫

上記で触れた自己観の違い、みなさんはどう思われましたか? 私は25年ほど欧米の国々に住んだ経験があるのですが、彼らが日本人ほど他者目線を気にしていないことを確かに実感しており、この自己観の違いにものすごく納得をしています。しかし人種が違うから仕方のないことなのでしょうか? 私はむしろ成長過程での学習により、他者目線を気にして生きるよう刷り込まれてしまっている要素も強いのではと考えています。

たとえば子どもに、「こんなことしたら笑われるよ」とか、「恥ずかしいからやめなさい」など、人からの見え方を前に出した注意の仕方をしてしまうことはけっこうあるものです。そういう積み重ねは少なからず影響していると思います。
子どもに何か注意するときには、「電車では静かにするよ」「靴をきちんと履いて」「(レストランでは)イスに座りなさい」のように、取ってほしい行動をストレートに伝えた方が、変な刷り込みもなくおすすめです。単純にどうしたらいいのかを言葉にしていくようにしましょう。

幼少期の多様性の育みへとつなげるには

ここまで「人目を気にしてしまう」という悩みを取り上げてきましたが、もちろん全く気にしなかったら大変です。ただの自分勝手な人になってしまいます。大切なのはその加減で、バランスよく行えれば、子どもの多様性の育みにもつながっていくと思います。

他者の立場に立った物の見方は、成長過程で獲得するもので、小学校半ばくらいから上手になってきます。幼稚園くらいまでは、自分からの見え方が支配しているので、言ってしまえば、これが天真爛漫さだったり、子どもらしさでもあるのです。こういう時代は人からの目線を気にしていないので、たとえば、朝の支度時に大人からしたらギョッとするようなコーディネートをしたがる、というようなことが起こり得ます。上下バラバラな柄物を組み合わせたりとか、パジャマのまま行きたいとか、経験済みの方も多いのではないでしょうか。

そんなとき、大人の感じ方が子どものそれと違うために、親の方が子どもの選択にもやもやしすることはありますが、いずれは他者目線で動くことは増えてきますから、「まぁこれくらいなら」と思えることならば、子どもの突飛な選択を許容してあげる心も大事だと思います。多様性の一歩目ということですね。とくにこれからの時代は、日本人だけで一生を過ごすわけではありません。世界には多様な習慣や文化がありますので、それらに触れたときに、「こういうのもありだよね」と受け入れられるような懐があった方が確実に人生を楽しめます。

物の捉え方や感じ方はいったん染みついてしまうと、そう簡単には変えられないことを日々のカウンセリングで痛感しているので、これからの子どもたちにそれを繰り返さないためにも、人からの見え方を気にした注意の仕方は控え、楽しめる場面では大胆な子どもの選択を許容するなど、視点を偏らせない工夫を心がけていきたいものです。

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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