男女平等は家庭教育から!英国流最新トレンドを踏まえた子育てのコツ
イギリスでは、社会の変化とともに、子育てに対する考え方も変化してきています。とくに、男女平等が意識されており、男だから、女だから、このようにしなければならないといったステレオタイプな考え方は、古いとされています。
大切なことは、性別にかかわらず、個人として尊敬しあえることです。性別による偏見や差別をなくすことは、人間の潜在的能力を伸ばすとともに、社会や経済の発展にもつながります。
今回は、イギリスにおける男女平等にまつわる動きにふれながら、家庭や学校などでも取り入れられる方法をご紹介します。
目次
男女平等への国際的な取り組み
SDGsという言葉を聞いたことはありますか。現在、国連加盟国193か国は、2016年から2030年までに達成すべき目標として、Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標、略称:SDGs)を掲げ、その実現に向けてさまざまな努力をしています。
開発目標は合計17ありますが、その一つに「男女平等を実現する」があります。日本の場合は、「担い手の次世代・女性のエンパワーメント」をアクションプランの骨子に置き、女性の社会進出をサポートしています。このように世界は今、性別による偏見や差別をなくそうと動き出しています。
イギリスでは、とくに、男女平等に関わる社会問題が議論の中心です。最近では、管理職に就任する男性の比率や男女の給与差が取り上げられています、また、男女の役割に関して、ステレオタイプな考え方を奨励するコマーシャルや広告は、停止命令が即座に出されるなど、数年前と比べて、国全体がこのテーマに対して敏感になっています。
さらに、ソーシャルメディアにおけるボディ・イメージから来るいじめやそれに悩む若者の自殺、精神病の急増など、古くからある男女のイメージに起因する悲劇が後を絶ちません。とくに、女子への影響が目立ちます。
2018年に7歳から10歳までの女子を対象に実施したガールズガイドが調査した結果によると、2009年に「幸せである」と回答した女子が57%、2018年にはそれが43%へと減少し、「自信がない」と回答する女子が増えています。
家庭で男女平等を教えるために
私たち人間は、周囲の環境の影響を受けながら成長していきます。とくに幼少期は、親のまねをしながら、社会習慣や生活習慣を学ぶ段階であり、他者を観察し、交流することを通して、次第に自分の考えや行動を決定するようになってきます。このような大切な時期にステレオタイプな考え方を押しつけることは、子どもの将来に影響しかねません。
では、家庭ではどのように男女平等を教えることができるのでしょうか。
ブリテッシュ・カウンシルおよびPlaned Parenthoodは、次のようにアドバイスしています。
男だから、女だから、容姿や話し方、洋服や行動はこうでなければならないといった固定的な考え方は、社会が作り出してしまうものであることを理解したうえで、
●子どもがどのような大人になってほしいかを考える。
例えば、欲しいものや憧れについて自由に話せる人になってほしい、ジェンダーに関わらず、誰にでも感謝の気持ちを持つ人になってほしいなどの目標を立てる。
●子育ての目標が決まったら、子どもの環境設定(本、おもちゃ、洋服、部屋の飾りつけ、遊びなど)を考える。
好きな色や好みを子どもがはっきりと意思表示できるようになる前に、女の子だから、王女様の人形やピンクの洋服を与えたり、男の子だから、部屋をスポーティに飾り、青色の壁の部屋を与えることは、従来型のステレオタイプな考えを押しつけてしまうことになりかねません。
子どものために何かを選択するときには、これから与えようとしているアイテムが子どもの将来にどのように影響するのか、過去に性別を基準に親が選んだもの(たとえば服など)を子どもが気に入っているかどうか、子どもはそれが好きかどうか、何に夢中になっているかといったことをよく観察して、選ぶことが大切です。
●子どもに話しかけるときには言葉に気をつける。
例えば、男だから泣いてはいけない、男だから乱暴だ、女だから遅い、女の子だからすぐ泣くなどのフレーズは、要注意です。「○○だから」と言う表現は、差別などを助長する可能性があります。
男女別の子育てのためのアドバイス
●男の子の場合
男の子は、4歳頃になるととくに活動的になり、8歳になると、いたずらが増えたり、怒りっぽくなったりします。これは、男女の発達の違いによるもので、心配はいりません。
ただ、このような時期に、いたずらが原因で生じた事態に対して、「男だからいたずらっ子だ」、「男の子は態度が悪い」というラベリングをしてしまうことは避けましょう。子どもが親から愛されていないのではないかと心配し、それが後の人生に影響する可能性もあります。
また、「男だから感情を抑制すべきだ」という考え方もよくありません。泣いたり、失敗したり、うまく行かないことや感情的な弱さがあってこそ、愛をはぐくんだり、友情を築いたり、新しい事を学んだりできるのです。子どもが安心して、感情を表現できる環境を作ってあげることが大切です。
●女の子の場合
伝統的な女性の仕事は、家事や子育てでした。看護婦や先生が女性の典型的な職業だといわれた時代もありました。しかし、社会の変化とともに、女性の職業も広がりを見せ、さまざまな舞台で活躍する女性が増えています。
一方、現代であっても、若い女性のなかには、結婚して家庭に入るから仕事は何でもいい、外見のイメージが一番大切だといったような女性に対する従来型の考えで自分の将来を決めてしまう人もいます。
女の子の場合は、とくに、自尊心を育てることが必要です。できないと思っていたことでも、頑張ったからできたという体験を与えることで、自分の能力に対する自信と忍耐力がつきます。
また、幼少期には、絵本やテレビを通して、成功した女性の例を示すことも効果的であり、会話のなかで、子どもが気づいていないことを上手に提案してみることも良いでしょう。
例えば、将来の仕事について話しているとしたら、「パイロットや宇宙飛行士はどうかな?」と言って、ほかの選択肢もあることを気づかせてあげるのです。これ以外にも、女の子は、恥ずかしがったり、声が小さいなど、自分の意見を話すことに自信を持てない傾向があります。意思表示する機会をたくさん与えてあげましょう。
まとめ
子育てで大切なのは、人間としての意味を教えることです。社会の変化と共に、子育ても変化します。幼少期から、男女平等の考えと多様性を受け入れ、他者を尊敬する態度を育成することで、グローバル社会で生きる人間として、幸せな生活を育むことができるようになるのではないでしょうか。ぜひ、参考にしてみて下さい。
参考URL
https://www.britishcouncil.org/voices-magazine/how-approach-teaching-gender-equality-boys-and-girls
https://www.plannedparenthood.org/learn/parents/preschool/how-do-i-talk-with-my-preschooler-about-identity
https://www.irishtimes.com/life-and-style/health-family/parenting/how-to-raise-boys-in-the-21st-century-1.3481486
https://www.telegraph.co.uk/women/life/raise-confident-girl/