保険適用で子育て中のストレスをケアできるドイツの「親子療養プログラム」とは?

保険適用で子育て中のストレスをケアできるドイツの「親子療養プログラム」とは?

ドイツには、親子共にストレスから解放され心身の健康を取り戻すための支援制度「Eltern-Kind-Kur(親子療養)プログラム」があります。子育て中の親が直面するメンタル面のサポートを目的に設立され、申請が承認されれば、親子そろって3週間にわたりケアや治療などが受けられます。プログラムの内容や、ドイツのストレスに対する意識について紹介します。

快適な施設や各種ケアサービス、教育プログラムを提供

「親子療養プログラム」とは、ドイツの法定健康保険によって提供されるリハビリテーションの支援制度です。育児中の親はどうしてもストレスが溜りがちになりますが、親が子どもと一緒にプログラムに参加し心身をリフレッシュさせることで、家族全体の健康サポートにつなげるというものです。

通常3週間の期間中、親はさまざまなケアや治療を受け、子どもも並行してケアや教育を受けることができます。

親子療養を提供する施設は、まずは親子が快適に過ごせるように設計されているのが特徴です。広々とした客室、セラピー専用のスペース、リラックスできる共用エリアなどがそろい、多くの施設にはスパや温泉、プール、ジムなどの設備があり、親子がリフレッシュできる環境が整っています。

親に提供されるケアサービスの種類も豊富で、「心身ケア」では専門医療スタッフによる健康チェックや個別の治療プラン、理学療法や運動療法などの治療を用意。

心理カウンセリングやグループセラピー、ストレス管理やメンタルヘルスのサポートも行われています。そのほか、マッサージやアロマセラピー、温泉浴など、リラクゼーションやスパサービスまでそろっているのです。

子ども向けには、滞在中に通常の学校と同じような教育を受けられるように特別な学校が設けられています。ドイツの教育カリキュラムに基づき、主要科目の算数、国語、理科、社会などを中心とした授業が行われます。

資格を持つ教師や特別支援教育の専門家などで構成する教育スタッフによって、子ども一人ひとりに合わせた指導を受けられるため、学習の遅れを心配する必要がありません。

乳幼児の場合でも専用の特別な設備が整っており、未就学児の年齢に応じた遊びや教育プログラムが用意されています。

医療目的のため健康保険でカバー

「親子療養プログラム」は、健康上の問題を抱える親とその子ども(乳児から18歳くらいまで)が対象です。ストレスや心身の不調が原因で日常生活に何らかの支障をきたしている場合に利用が推奨され、親子ともに法定健康保険に加入していることが条件となります。

かかりつけ医からの診断書を取得し、その後、健康保険会社から申請が承認されれば、誰でも参加することが可能です。

プログラムの大部分の費用は法定健康保険がカバーしているため、親は食事代も含め通常1日あたり10ユーロ(約1700円・7/14時点で換算)の自己負担金のみを支払います。

その場合、多くの保険会社では18歳未満の子どもは全額保険適用となります。さらにこのプログラムは医療目的のため、働いている親でも病気休暇として扱われ、有給休暇を取得する必要はありません。

このように法定健康保険の一環として提供されることで、多くの家庭が手軽に利用できるように設計されています。

医療目的のため健康保険でカバー

「ストレスは不健康」という強い認識

現代社会において育児や仕事にストレスはつきものですが、親が抱えるストレスはさまざまな形で子どもにも影響を与えています。親のストレスが強いと家庭内の雰囲気が緊張し、子どもも不安やストレスを感じてしまい、心理的な健康に悪影響を及ぼす可能性もあります。

ドイツではストレスを抱えることに関してとても敏感で、「ストレスは不健康」という認識が強く、ストレスやメンタルヘルスに関する教育や治療が進んでいます。

そのため、ドイツの法定健康保険はストレス関連の治療や予防プログラムを多くカバーしているのが特徴です。紹介した「親子療養プログラム」のように、専門家の助けを借りてストレスを管理する方法を学ぶ取り組みが当たり前になっています。

「ストレスは不健康」という強い認識

まとめ

親のストレスは、子どもの成長や家庭のあり方に大きな影響を及ぼします。ドイツではメンタル面の総合的ケアを法定健康保険で利用できる環境を整えることで、親子の絆を強化し、家庭全体の幸福度向上につなげようとしているのです。

<参照URL>
https://haenslehof.de/eltern-kind-kur
https://www.vamv-bayern.de/tipps-informationen/mutter-vater-kind-kur/
https://www.aok.de/pk/leistungen/kuren-reha/mutter-kind-kur-und-vater-kind-kur/
https://www.barmer.de/unsere-leistungen/leistungen-a-z/rehabilitation-und-kuren/mutter-oder-vater-kind-kur-1055484
https://www.dak.de/dak/leistungen/reha-und-kuren/kuren-fuer-muetter-vaeter-und-kinder_11238

執筆者/ドレーゼン志穂

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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