子どもの情緒を安定させるために取り入れたい習慣【専門家が解説】
子どもの情緒が安定しない原因として、親子関係の問題や生活習慣の乱れなどが挙げられます。自然に改善するものではなく、間違った対応をすればさらに悪化することもあります。親も気持ちを逆なでされて家族全員が情緒不安定になっては大変です。
子どもの情緒を安定させていく習慣とは何か、心理学の観点から見ていきます。
目次
情緒不安定な子どもの特徴とは?
情緒不安定とは、感情の起伏が激しく、精神的に落ち着かない状態を言います。たとえば、
□以前と比べて泣くことが増えた
□うまくできないと癇癪を起こす
□ささいなことでイラつく
□表情が乏しい
□今までできた我慢ができなくなった
□チャレンジをしたがらない
□やたらと怖がるようになった
□何か不安を感じているように見える
□反抗がひどくなった
□不機嫌な時間が機嫌のいい時間を上回っている
□園や学校に行きたがらない、もしくは休んでいる
などが挙げられます。ここ2週間ほどのお子さまの様子を振り返りながらチェックしてみてください。
5個以上当てはまる場合は情緒不安定な状態と言えるでしょう。
子どもが情緒不安定になる2つの原因
どんな子でも多少の感情の揺れはあるもの。たとえばイヤイヤ期、4歳の壁のような成長過程は、多くの子がいつもより泣いたりイライラしたりしますが、これは一過性のものです。
今回見ている情緒の不安定さはそれらとはやや違うもので、環境的な要因がそのまま引き金になっているもの、あとは環境的な要因がその子の心にストレスを生み、結果的に不安定になっているものがあります。それぞれ見ていきましょう。
原因① 生活リズムが崩れている
<よく見られる問題>
・基礎的な生活習慣が定着していない
・睡眠不足が続いている
・朝スッキリ起きられない
・テレビやゲームなどを止められない
・園や学校に行きたがらない
これらは環境要因がそのまま子どもの感情の起伏に影響しているケースです。1日のサイクルが何らかの要因でうまく回っておらず、就寝時間が遅くなって翌朝は寝不足状態で起こされ、ぐずりながら園や学校の支度をする……。これらが典型例です。
ここに書いた“何らかの要因“は、テレビやゲームであることが多く、その時間管理がうまくいっていないために、全体にひずみをもたらしてしまうのです。
書籍『Reset Your Child’s Brain(邦書:子どものデジタル脳完全回復プログラム)』(飛鳥新社)の著者であるダンクリー博士は、著書の中でゲームやタブレットなどの画面に夢中になっている子どもたちが示す感情の不安定さについて述べています。
博士はそれら自体が情緒不安定の要因だと言っているのです。
・「イヤイヤ期」に関する記事はこちらをご覧ください
『2~5歳、ママを悩ますイヤイヤ期の対処法を保育のプロがアドバイス!』
・「4歳の壁」に関する記事はこちらをご覧ください
『4歳児は心が揺れている!「4歳の壁」「反抗期」の特徴と正しい対処法とは?』
原因② 親子関係が望ましくない
<よく見られる問題>
・親子げんかが多い
・家庭内の会話が少ない
・ポジティブな時間が少ない(一緒に遊ぶ、スキンシップをする)
・親自身も情緒不安定である
これらは環境要因が子どもの心にストレスを生み、結果的に不安定になっているケースです。親子関係の悪化が子どもの心理的ストレスになり、ささいなことでイライラしたり、気を引こうとぐずったり、不安が強まって泣いたりします。
「子どもが情緒不安定」というと、どこから手をつけたらいいかが見えにくいですが、要因は日常の過ごし方や家族のコミュニケーションなど手の届く範囲にあるのがわかります。
つまり、裏を返せば、これらを改善することが情緒の不安定さを減らすことにつながるのです。
子どもの情緒を安定させる習慣
では具体的にどのようなことを習慣づけしていけばいいか解説します。
◎生活リズムを整える
1日は24時間と限られているので、その中にタイムスケジュールをフィットさせていく必要があります。まずは何がそのペースを乱しているのか、要因を探りましょう。
「そもそも言うことを聞かない」のか、「親が忙しすぎて寝るのが遅くなってしまう」のか、「テレビやゲームを止められない」のかでは対応も変わってきますので、生活リズムが崩れている理由をふり返ってみてください。
〜そもそも言うことを聞かない場合〜
まずは流れを作るためのルールが必要です。とくに子どもは、昨日は「いいよ」と言われたことを今日は「ダメ」と言われると抵抗感を示しやすく、ルーティン化した方が飲み込みやすいもの。
日々の行き当たりばったりの対応が、今の言うことを聞かない状態をもたらしていることは非常に多いので、基盤となる流れとそれに基づいたルールをまずは検討してみてください。
〜親が忙しすぎて寝るのが遅くなってしまう場合〜
親側のやりくりの見直しが求められます。日本は添い寝の文化なので、子どもの就寝時間までに何とか家事を終わらせようとして布団に入る時間が遅くなることが多いです。
とくに夕食の後片付けは時間がかかりますから、食洗機の導入や使う食器の工夫(ワンプレート化など)、食事内容の見直しなど、子どもの就寝時間を早める策を考えてみてください。
また、子どもが1人で寝る“ネントレ”もリズム改善のヒントになるかもしれません。
・時短レシピや家事については、以下の記事もご覧ください。
『山本ゆりさんに聞く「ママじゃなくてもできる!時短レシピ」』
『忙しいママに朗報! プロが伝授する、今どき整理収納の時短テクニック』
〜テレビやゲームを止められない場合〜
コロナ禍以降、子ども達のデジタルデバイスの利用に関するお悩みは増えており、生活リズムが乱れてしまう要因のトップではないかと考えています。
その点からも、情緒不安定対策として、「スクリーンタイムの見直し」はとても大事です。
先述のダンクリー博士は“デジタルデトックス”をすすめているのですが、要は4週間のプログラムの中で“スクリーン断ち”を試みるのです。
上記でご紹介した本にその効果ややり方が書いてありますので、ご興味ある方は読んでみてください。
・幼児期のテレビやYouTubeの鑑賞については、以下の記事もご覧ください。
『子育て心理学のプロがアドバイス! 幼児にテレビを見せる際の注意点』
『テレビ・YouTubeは悪なのか? 東大卒ママたちが実践している、デジタルデバイスとの付き合い方 』
◎親子関係を改善する
子どもにとって家庭は“安全基地”である必要があります。そこが揺らぐと心のよりどころがなくなり、情緒不安定になりやすいので、親子関係の改善を図りましょう。
・親子関係のコミュニケーションについては、以下の記事もご覧ください。
『「子どもとの接し方」に悩む親が急増中!年齢別の対象法をアドバイス』
〜コミュニケーションを増やす〜
子どもが情緒不安定なときに親が一方的に質問すると、「普通」「大丈夫」「何もない」で会話が終わってしまいがち。
会話には話す側と聞く側がいます。親子間のコミュニケーションの量を増やしたいと思ったら、自分が聞く側になれているかは大事なポイントです。
子どもの方から話してくれたトピックを(たとえさほど興味のない内容であっても)しっかり傾聴していきましょう。
〜質のいい時間を増やす〜
遊びには親子関係を修復する力があるので、できる遊びは何でも取り入れていきましょう。
基本的にはどんな遊びでもかまいません。一緒に笑ったり喜んだり興奮したりする時間を意識的に取り入れていきましょう。
忙しい平日は15分、週末はできる限りたっぷりと。また、小さい子にはスキンシップも効果的です。毎日のルーティン(一緒にお風呂に入る、おやすみのハグをするなど)に組み込むとほっこりした気分が定期的に訪れるのでおすすめです。
・親子の遊びのヒントとして、以下の記事も参考にしてください。
『「推しがある人はストレスをためにくい!?」親子で推し活のすすめ!』
『遊びの主導権は子どもに!パパが知っておきたい、子育ての心理~幼児編~』
◎ポジティブな声掛けをする
親子関係が悪化した理由が、生活リズムの乱れにあることも多いもの。
子どもが日々ダラダラしている
→ 親が叱る
→ 関係が悪くなる
→ 子どもの情緒が不安定になる
という連鎖です。そうなると、日々のやりとりがギスギスし、親の声掛けがきつくなることも多いので、自分が発する言葉をまずはふり返ってみてください。
同じ“叱る”でも、子どもを傷つけたり、存在を否定するような言葉(ダメな子だ、そんな子はもう知らない、など)は避けましょう。
そして、できているところはほめる、うまくいかないときは励ます、「そうだね」と一旦受け入れるなど温かみのある声掛けを意識的に取り入れることで「自分を受け入れてもらっている」という安心感をもたらし、結果的に情緒が安定しやすくなります。
情緒不安定の子どもを持つご家庭への注意とアドバイス
情緒不安定の要因である「生活習慣の乱れ」と「親子関係の崩れ」はそれぞれ独立した問題というよりは、互いが連鎖し合って、状況を悪化させていることが多いものです。
それもあり、「子どもが情緒不安定なのも心配だけれど、振り回されて困っている私のこともわかって!」という親御さんも多いと思います。
子どもも親も情緒不安定な状態はとてもしんどいですが、その気持ちを子どもにぶつけてしまうと状況は悪化していきます。
子どもへの取り組みと同時に、親も自分の心のケアやコントロールに目を向けていくのが望ましい方向性と言えます。とくにイライラや怒りが大きくなってしまっている人は、アンガーマネジメントや叱り方の知識を入れることから始めるといいと思います。
どうにもならないときはカウンセラーなどの専門家に相談するのも1つの方法ですので、そのままにせずに、何とか前に進むことを考えていきましょう。
・精神の安定につながる方法の1つ、子ども向けのマインドフルネスの取り組み方はこちらの記事もご覧ください。
『子ども向け「マインドフルネス」の取り組み方とは? 米国カウンセラーおすすめの4つの方法』
「のびのび」と「しつけ」は両立するの? 受験期の親子の関わり方
「不安が強い子」にはどう対応すべき? 3つの要因と親の対処法
育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/