令和の今必要なのは、「強み」を生み出す育て方!
「うちの子にはいったいどんな習い事が向いているのか……」。親なら誰しも悩んだことがあるテーマだと思います。今回お話を伺ったのが、新刊『「強み」を生み出す育て方(ダイヤモンド社)』の著者である、船津徹さん。日米で学習塾を経営し、これまで5,000人以上の子どもたちの教育に携わってきた体験から、独自の診断で、生まれながらにもつ子どもの強みの芽を探り、やる気の引き出し方や学業と習い事の両立方法などのノウハウを体系化した一冊です。日米の子育ての違いや、これからの社会で活躍するために必要な学びについても必見です。
船津徹
大学卒業後、金融会社を経て幼児教育会社へ勤務。その後独立し、アメリカハワイ州へ移住。2001年ホノルルにハワイ、LAのバイリンガルスクール「TLC for Kids」(https://torufun.amebaownd.com)を設立。世界で活躍できるグローバル人材を育てる英語教育プログラム「TLCフォニックス」を開発。25年間でのべ5,000人以上のバイリンガルを育成し、卒業生の多くはハーバード大学、イェール大学、東京大学など世界トップ大学へ進学しグローバルに活躍している。著書に『世界標準の子育て(ダイヤモンド社)』などがある。
目次
できないことを矯正する日本の「引き算の子育て」の弊害
__この本を執筆しようと思われた経緯を教えてください
私は日本とアメリカで子どもたちを指導してきたのですが、日本の子育ての特徴として「平均化させたがる(スポーツも音楽もアートも満遍なくできる子にする)」というのがあると思います。それをやっていると、結果として本来その子が持っているいい部分が潰され弱くなってしまうということが起きるんです。
これは日本だけではなくて、韓国や中国といった儒教圏でよくみられる現象です。これらの国は受験に目標を合わせた子育てをしているため、できないところを矯正する方向に向かいがちです。子どもも「できない自分」に出会うことが多くなり、自己肯定感が低くなってしまうのです。反対に、褒められて「よくできる自分」に出会う機会が多ければ、自己肯定感も高くなります。私はこのことを「引き算子育ての弊害」と呼んでいます。
この世に強みのない子はいません。将来、社会に出たときに「自分は無理、できない」とあきらめない子になるためには、学校教育や家庭教育の中で、その子の良い面を引き上げることをしていく必要があるのです。
何か1つ、つき抜きける強みができる(成功するコツがわかる)と、それが自信となって他のこともできるようになるパワーや強いメンタル、努力する大切さ、問題解決法が身につくのです。将来、お子さんが自分の強みを見つけて、人生を自分で選択できるようになってほしい、そのヒントになる本になれば、という思いを込めてこの本を執筆しました。
日米で異なる、優秀な子の定義
__日本とアメリカでは優秀な子の定義がどのように違うのでしょうか?
アメリカでは、偏差値よりも人間力が重視されています。理由は大きく2つあります。
1つ目は、アメリカは移民の集まりなので個人主義が強いため。その結果、強みを育てる傾向につながっています。強い個人が国家を作るという価値観です。そのため親は、将来わが子がどの分野で活躍できるかを考え、伸ばそうとするので、集団でうまくやることよりも子どもの特性を伸ばすことを優先するのです。
2つ目に、受験制度の違いです。日本では、小中高大と受験がたくさんありますが、アメリカは基本的に大学受験のみ、しかも選抜型のAO入試です。ペーパーテストの成績は評価の一部に過ぎないので、ただ勉強ができればいいというわけではありません。課外活動(強み)、ボランティア、職業体験、エッセーといったさまざまな方法で自分を表現できる必要があるのです。日本の就職活動に近いかもしれませんね。
いかがですか、これからグローバルな視野で活躍が求めれるお子さんたちには、集団での平均的な学びだけでは足りなさそうですよね。残念ながら、日本の教育システムは戦後のままで、今変革期を迎えていますが、すぐにガラッと変えるのは難しいでしょう。そこで問われるのが、家庭でできる習い事なのです。
性格の中心である気質を見極めると習い事は成功する
__習い事を活用した「強み作り」で子どもがのびる理由について教えてください。
子どもの性格は属する環境で変わることがありますが、その子の生まれ持った気質は変わりません。でも、親がわが子の気質をわかっていないことが多いものです。
落ち着きがないのは性格なのか気質なのか。そこを見極めないと、気質と習い事のミスマッチが起こってしまうのです。日本の家庭は、悪い面をよくしようと思うあまり、例えば、「うちの子は気が弱いから空手を習わせてみよう」という選び方をしがちです。生来の気質が優しい子には、人と格闘する空手を楽しめるはずがありません。個人遊びが好きな気質の子に集団の習い事を無理やりさせると、かえって集団が嫌いになることもあります。
習い事を選ぶ際も、できない箇所に目を向ける「引き算」ではなくて、本人が没頭したり楽しめることで能力を伸ばした方が断然強みになるのです。詳しくは、本書に診断チャートが載っていますから、ぜひ習い事を選ぶ参考にしてみてください。
理想は、気質に合った習い事(やらされているのではなくて、主体的にできるもの!)を何か1つでいいので、小学校を通して続けられることが理想です。継続できると上達もし、活躍する場が増え、強みにつながるはずです。
画像:『「強み」を生み出す育て方(ダイヤモンド社)』より
__子どもの習い事で注意したいことはどんなことですか?
・まずは複数の習い事で強みを見つけよう!
アメリカでは5〜6歳で、野球、バスケット、アメフトといった全国大会のある競技スポーツの習い事に参加させるのが主流です。なぜなら、大学の学費が高額なので、全国区の部活で活躍して、スポーツ推薦で大学の奨学金を狙うためです。
他にも、習いごとや部活動で日本と大きく違う点は、ほとんどがシーズン制なので、1年の間に2〜3つ、違うスポーツをすることもできます。そのため、小学生でも、テニスと野球など、可能性のありそうな習い事を併用することができるのです。
ここで注意したいのが競技人口です。アメリカだと野球、バスケット、アメフトなどは人気なので競技人口の母集団が多いのですが、これらのスポーツは体格差や筋力さなど才能や努力だけでは補えないものがあります。ですから、サブのスポーツとして、ボーリングやアーチェリー、射撃など、母集団が少なく優位に立てるスポーツを選べば、成功する確率は上がります。日米を問わず、人気スポーツと特性を活かすものという2軸で習い事を選んでみるのも強みに近づくコツです。
・低学年までは親が決定権を持つ方が成功する確率が高い
自信は成功体験の積み重ねです。人間は勝ちがないとやる気を無くします。
小さい子は自分で習い事を探すことができませんから、例えばサッカーであれば、チームの実力を考えた時にわずかでも強いと思う方、つまり半分よりは高い確率の51%でも勝利を掴むタイミングが多そうな(わが子が活躍できそうな)チームに入れるという環境設定をすることも重要です。また、ポジションも意識してみましょう。同じサッカーチームでも、フォワードよりもディフェンダーやキーパーの方が競争率は低くなりますから、活躍する確率も上がるわけです。才能や気質では、ディフェンスやキーパーを目指すのも1つの手段です。
イチロー選手は、本来ピッチャーで4番バッターの才能がありましたが、左打ちで肩がいいという特性を活かして、プロになり1番ライトというあえて花形ではないポジションを選び、メジャーリーガーにまでなったのです。人にはそれぞれ活躍できる役割があるのです。
画像:『「強み」を生み出す育て方(ダイヤモンド社)』より
日本の早期幼児教育はすごい!乳幼児期は五感をどんどん刺激しよう
__一方で、著書にあった「早期英才教育を受けた子は後天的な天才になりやすい、しかもアジア人が他の人種のギフテッドの2倍!」というのが興味深かったです。先生は、早期教育についてどのようにお考えですか?
早期教育、私は大賛成です。生まれたばかりの人間は誰しも環境適応力が優れています。よく、赤ちゃんはどんな言語も理解できるが、その後の環境次第で母国語が決まってくると言われますよね。乳幼児期は環境適応が脳の仕事ですから、たくさんの刺激を用意すれば、より脳の配線が強固に発達します。日本では早期英才教育というと、言語など知的な部分に偏りがちですが、運動でもアートでも構わないのです。
乳幼児は性格的な方向性はまだよくわかりませんから、さまざまな分野で五感を刺激してあげましょう。そういった意味でも、日本の幼稚園などの幼児教育に対する幅広い取り組みは欧米にはないものですから、すごいと思います。その後、徐々にその子の好き嫌いや才能がわかってきたら得意な面を伸ばす習い事にシフトするのがおすすめです!
家に帰ってきたらわが子の自信の補充を
__最後に、今子育て中の親御さんに、メッセージをお願いします。
お子さんたちは、親が気づかない所、例えば幼稚園や学校など、外の世界で日々いろいろな体験をしています。先生から何かを指摘をされたり、友達とうまくいかないことがあったりして、心が何かしら削られている状態です。
ですから、家に帰ってきたら自信の補充をしてあげてください。
そのために必要なことは大きく2つ。
・毎日「今日も頑張ったね!」の声がけ+ハグで、根拠のない自信を身につける
・ わが子に合ったベストマッチの習い事を見つけて、根拠のある自信を大きくする
子育てを密に関われるのは幼児教育のうちだけです。大変だと思いますが、可能な範囲で習い事にも積極的に関わってあげてほしいですね。そこでのお子さんの様子を見て、家庭でたくさん褒める場を持ってください。上手にできたかだけではなく、「今日のお友達への声がけよかったね」「周りをよく観察しているね」など、習い事での振る舞いを見ていると、お子さんの特性や強みがわかってくるはずですし、ちょっとした変化にも気づけるはずです。あとで振り返るとそんな時期が楽しかったと思えるはずです。ぜひご家族で「強み作り」を意識した子育てを楽しんでください。
※わが子の「強み」と「ぴったりの習い事」を見極める方法は船津さんの著書『強みを生み出す育て方』(ダイヤモンド社)を参考にしてください。
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SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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