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フランスは子どもの歯科矯正も保険適用!家計負担を軽減する取り組みとは?

フランスは子どもの歯科矯正も保険適用!家計負担を軽減する取り組みとは?

フランスでは口腔衛生を向上させるために2025年から、3歳~24歳を対象に毎年1回無料で歯科検診を受けられる制度が導入されます。子どもの歯科矯正治療にも一部国民健康保険が適用されていて、保護者の経済的負担を軽減しています。フランスの歯に対する意識や取り組みについて紹介します。

経済的不平等の解消に向け無料検診回数を拡充

子どものうちに良い歯科衛生習慣を身につけることは、将来の虫歯を防ぐ重要な要素です。早期治療によって高額となる治療を事前に避けることもできるため、フランスの国民健康保険はこれまでも予防プログラムを策定してきました。

現在は3歳~24歳まで「3年に1回」の無料検診を受けることができ、年間約200万人がこの制度の恩恵を受けています。また、2006年にこの無料検診が導入されて以来、若年層の虫歯の発生率は減少傾向にあります。

こういった成功実績もあって、2025年4月からは3歳~24歳までの国民が「毎年1回」の無料検診を受けられることになりました。検診には口腔内のチェックや歯科医との相談も含まれていて、虫歯が見つかった場合は一定期間内に治療すればその費用も払い戻されます。

無料検診制度が拡充された背景には、歯科医療における社会的不平等の問題があります。例えば、2006年の調査によると、管理職家庭の6歳児では10人中9人に虫歯がなかったのに対し、労働者階級では10人中7人が虫歯を経験していました。

経済的な理由が口腔医療の受診を妨げる大きな要因となっていたため、時間はかかりましたが、無料検診制度がさらに拡充されたのです。

乳歯で家を建てるネズミ? フランスの家庭での工夫

乳歯で家を建てるネズミ? フランスの家庭での工夫<
検診では「虫歯の予防方法」や「歯磨きを嫌がる子どもへの対応」などを親が歯科医に相談でき、歯科医は模型を使って正しい歯磨きの方法を指導します。

フランスではフッ素入り歯磨き粉の使用が推奨されていて、子ども用の歯磨き粉は年齢別(0~3歳、3~6歳、6~12歳)にフッ素濃度が異なり、それぞれ適したものが販売されています。

日本では「3分間の歯磨き」が推奨されますが、フランスでは2分間が一般的。フッ素の効果を最大限に発揮できる時間のため、音楽を流したり、2分間の砂時計を使ったりと、子どもが楽しみながら歯を磨けるように工夫しています。

さらに、フランスでは「乳歯が抜けたら小さなネズミにあげる」という伝説があり、子どもたちは抜けた歯を枕の下に置きます。するとネズミが夜中に歯を回収し、代わりに小銭やプレゼントを置いていくというものです。

このネズミは集めた乳歯で真っ白な家を建てるとされており、子どもたちに「歯を大切にする」意識を根付かせる役割を果たしています。

歯科矯正治療にも公的保険、小児科などとの連携も

歯科矯正治療にも公的保険、小児科などとの連携も
さらに、フランスでは16歳未満の子どもの歯科矯正治療に公的保険が適用されます。治療費は歯科医によって異なりますが、一般的には半年間で約600~1,200ユーロ(約9万6,000~19万2,000円)ほどかかります。
※(1ユーロ/約160円換算・2025年2月2日時点)

公的保険では半年ごとに193.50ユーロ(約3万1,000円)までの補助が受けられ、最大6回分適用されます。

さらに、多くのフランス人は公的保険に加えて任意の相互健康保険(ミュチュエル)に加入しており、残りの費用は契約内容に応じてそこから補償されるため、実質的な負担が大幅に軽減されます。そのため、多くの子どもは小学校高学年~中学生の間に矯正器具を装着します。

歯科矯正治療は美しい歯並びを保つだけでなく、咀嚼や発音、口腔衛生の向上にも役立ちます。

歯並びが整うことでブラッシングがしやすくなり、虫歯のリスクも減少。また、バランスの良い顎の発達は、左右均等な咀嚼を促すとされています。

フランスの矯正歯科医は、歯科医、小児科医、耳鼻咽喉科医、呼吸器科医、言語療法士、理学療法士などの専門家と連携して治療を行うこともあります。

例えば、睡眠時の呼吸障害を訴える子どもが小児科を受診し、原因が狭い顎にあると判断された場合、矯正歯科医に紹介されます。矯正治療によって顎の骨を広げると鼻腔が広がり、空気の循環が改善されることもあるからです。

まとめ

子どもの成長において歯の健康は重要な役割を果たしており、発音や咀嚼などさまざまな機能に影響を与えます。そのためフランスでは、国を挙げて子どもの歯科衛生習慣の確立に取り組んでいるのです。

また、「小さなネズミの物語」は家庭でもできる工夫といえます。子どもたちが白く丈夫な歯を保つモチベーションにつながると思いますので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

執筆者/lambe

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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