「子どものベストな睡眠」とは? 乳幼児睡眠コンサルタント 愛波あやさんが解説!

「子どものベストな睡眠」とは? 乳幼児睡眠コンサルタント 愛波あやさんが解説!

日本人初の乳幼児睡眠コンサルタントとして、ニューヨークで子育てをしながら活動される愛波あやさんが、小学生の睡眠についてまとめた新刊『忙しくても能力がどんどん引き出される「子どものためのベスト睡眠」』(KADOKAWA)を出版。中学受験や習い事などで忙しい今の子に、限られた時間でも上手に効果的な睡眠をとるコツを紹介いただきます。

愛波あやさん
愛波あやさん
慶応義塾大学文学部教育学専攻卒業。外資系企業勤務後、結婚を機に拠点をアメリカ・ニューヨークに移し、2014年に米国IPHI公認資格(国際認定資格)を日本人で初めて取得。IPHI日本代表。Sleeping Smart Japan株式会社代表取締役。2人の男の子の子育てをしながら、企業やイベント講演、子どもの睡眠に悩む保育者のコンサルテーション等幅広く活動している。最新著書『忙しくても能力がどんどん引き出される「子どものためのベスト睡眠」』(KADOKAWA)が発売中! HP(https://aya-aiba.com)Instagram(@aya_aiba

「寝ないわが子」で産後鬱になりかけた経験

__愛波さんが睡眠コンサルタントを目指すことになったきっかけを教えてください。
長男がとにかく寝ない子だったんです。私も寝不足が続いて、今ふりかえると産後鬱だったのかもしれませんが、生後10ヵ月くらいまでわが子を可愛いと思えませんでした……。

同じ月齢の子を持つアメリカ人のママ友たちは、ヨガやジムに行ったり映画を見てきたという中、私は「ずっと抱っこでほとんど眠れていない」と打ち明けたんです。それならばと貸してくれたのが、小児科医が書いた赤ちゃんの眠りに関する本でした。

そこから、図書館で調べたり論文を読んだりして、ねんねトレーニングを開始。すると、19時から翌朝まで息子が一人で寝られるようになったんです。

たくさん寝てくれると私も前向きになれて、時間もできたのでもっと睡眠のことを勉強したいと思い、米国IPHI公認の睡眠コンサルタントの国際資格を取得しました。

日本人が「寝かしつけ」に苦労する理由

__海外では「寝かしつけ」はしないのでしょうか?
アメリカは日本よりも睡眠に関する意識が高いので、子育て中であっても親が質のいい睡眠を確保しようと考え、医師からもそのようにアドバイスされます。

一方日本では添い寝文化が主流です。添い寝=悪いことではないのですが、夜中に起きると寝不足になる可能性が高いのは事実です。また、日本では、「授乳をするママが寝かしつけをするのが当たり前」といったママ主導の育児が根強い文化だと感じます。

さらに、「いつかは寝るようになるだろう」と自分の睡眠不足を我慢して、ねんねトレーニングなど改善するツールも積極的には取り入れない。それが日本とアメリカの寝かしつけに対する考えの大きな違いなのではないでしょうか。

__睡眠に関するお悩みで多いものはなんでしょうか?
私は10年ほどお子さんの睡眠に関するコンサルテーションを行っていますが、夜泣きよりも寝かしつけに時間がかかるというお悩みが多いです。

その結果、ママが寝不足でイライラして子どもに当たってしまうという負のスパイラルに陥ってしまうのです。あと最近ではこの本を書くきっかけにもなっていますが、朝起きられない小学生(慢性的な寝不足)のお悩みも増えています。

本来人間は睡眠が足りていれば、朝自然と起きられますから、たたき起こさないと起きないというのは睡眠不足だと考えたほうがいいでしょう。

日本でもこの10年で睡眠に対する理解がぐっと深まったと感じますが、私が声を大にしてお伝えしたいのが、「ママの睡眠は自己中じゃありません」ということ。

ママが機嫌よく子育てをするためにも、自分の睡眠についても見直してみてください。

睡眠不足が子どもに与える影響

__改めて、睡眠不足になると子どもにどのような影響があるのでしょうか?
睡眠不足は大人も子どもも共通してネガティブになりやすいため、自己肯定感が下がり、学ぶ意欲が低下し、心が病み、うつになりやすいというデータがあります。また、落ち着きが無くなる、太りやすくなるといった傾向も見られます。

一方で、良く寝ている子は脳の記憶を担う海馬が大きいことも最近の研究でわかっています。

子どもは寝ている間にも起きているときに認知した刺激を知識として蓄え、脳と心を育んでいきます。また、睡眠中に成長ホルモンも分泌され、骨や筋肉を育て、傷ついた細胞を修復してくれます。

ですから、十分な睡眠は生活が忙しくなる就学前後の子どもたちにもとっても大切なのです。

睡眠のリズムは親の遺伝で決まる!?

__子どもの睡眠リズムはいつどこで決まるのでしょうか? 生まれつきショートスリーパーな子もいますか?
ショートスリーパーはほぼ遺伝だと言われています。ただ、大人でも自分がショートスリーパーだと信じているだけで、実際は慢性的に寝不足なこともあります。

子どもの睡眠リズムは、お腹の中にいる頃から始まっています。ですから、妊娠期のママの生活リズムが子どもの睡眠リズムに影響を与えているのです。

__子どもの体質的に「朝方」「夜型」はありますか?
体質的に「朝方」「夜型」はありますが、学校や会社などこれから社会に適応しなければいけない子どもは、朝方に調整していく必要があります。

受験生の場合、試験は朝から行われますから、夜型のお子さんは、夏くらいから生活リズムを整えて朝起きられるようにしていきましょう。

日が昇るのが早い夏の時期の方が、早起きは慣れやすいです。何より、一緒に生活する親の生活習慣の影響を大きく受けますから、家族で早起きの習慣をつけたいですね。また、注意したいのが週末や夏休みなどの長期休みです。

寝だめをしたり夜更かしをしたりすると、せっかく整えた睡眠リズムが狂って時差ぼけ状態になってしまいます。休みの日は起きる時間を+1時間くらいを目安に。寝不足解消には週末に家族みんなで少し早寝をするのもおすすめです。

年齢別、子どもの睡眠時間の目安

__年齢別(3歳~12歳)で必要な睡眠時間と日本人の実体を教えてください
アメリカでは小児科医との検診が21歳まであり、生後6ヵ月検診で「夜中に何度も起きる」と伝えると「ママもしっかり眠らないといけないし、もう寝る力はあるから、ねんねトレーニングをしましょう」と促されることがあります。

10歳以上の子にも「よく眠れているか」は必ず質問し、睡眠トラブルを抱えているようならば専門の睡眠家の紹介もしてくれます。

一方、日本では、「朝何時に起きて夜何時に寝るか」は聞かれても、睡眠時間を聞かれる機会はあまりないかもしれません。こちらの図を見てください。

『忙しくても能力がどんどん引き出される「子どものためのベスト睡眠」』より©KADOKAWA

日本の3歳以下の子の睡眠時間を世界の子どもと比較するとワースト1位という結果が出ています。年代別に見ても、日本の子の睡眠時間はすべての年齢で推奨される睡眠時間に足りていないことがわかります。

習い事や勉強にと小学生が忙しいのは日本もアメリカも同じです。違うのは「睡眠を確保しよう」とする意識の違いなのです。

睡眠時間と学力の関係

__睡眠時間と学力には関係があるのでしょうか?
睡眠は知識を定着させるのにも役立ちます。実際、東大生の多くが受験中も7時間以上の睡眠をとっていたという報告があります。スタンフォード大学のデメント博士の研究でも、睡眠が運動のパフォーマンスをアップさせているということがわかっています。

また、運動だけではなく音楽などの演奏も睡眠をしっかりとることで技術力が上がり、さらに深い睡眠がとれていれば、本番での失敗も頭に残らないこともわかってきました。

大谷選手が1日10時間寝ているという話は有名ですが、世界で活躍するアスリートがしっかりと睡眠をとっているのには、理由があるのです。

塾や習い事で遅く帰宅してそこから宿題をするというお子さんもいらっしゃると思いますが、睡眠時間を削って夜に非効率な勉強をするよりも、良く寝て、朝すっきりした頭で昨晩覚えた内容を確認するといった学習法が効果的です。

__小学生でもお昼寝をしていいものですか?
体力回復のためにはお昼寝は効果がありますが、長すぎるとかえって夜寝られなくなってしまいますから、深い睡眠にならない20分を目安にしましょう。ベッドではなくソファや移動時間などでお昼寝することをおすすめします。

子どもの快眠環境を整えるコツ

__子どもの質のいい眠りを叶える快眠環境はどう作ればいいでしょうか?
【温度】
子どもは暑いと起きてしまいますから、ぐっすりと眠るためには、大人だと肌寒いと感じるくらい(夏は23℃、冬は20~22℃)が理想です。湿度は一年を通して40~60%に調整しましょう。

【光】
睡眠は光の影響もうけますから、日が昇るのが早い夏などは4時くらいから明るいのでもっと寝たいと思っても脳が起きてしまいます。しっかりと睡眠するためには遮光カーテンがおすすめです。

愛波さんプロデュースの遮光シートもおすすめ
https://aya-aiba.com/products/shakou_sheet)。©Aya Aiba

【入浴】
お風呂に入った約90分後に体温が下がり、最初の深い眠りに入ります。最初の深い睡眠の質が良いと、ケガの回復や美容、記憶などにも効果があることが分かっていますから、寝る90分前にはお風呂に入るよう心がけましょう。

【ベッドの場所】
子どもが試験前などでなかなか寝付けなかったり、よく眠れていない場合は、寝る部屋と勉強部屋を別にして、脳と体の休息時間にしてあげるのも手です。わけるのが難しい場合は、机やテキストが見えないように布をかぶせるなどの工夫も効果があります。

__最後に、読者の方へ本の見どころとメッセージをお願いします
睡眠は生活の基盤です。何歳からでも改善できますが、幼少期に身についた正しい睡眠習慣は一生ものです。

この本は、できれば睡眠に悩む前に読んでいただきたいですが、気になるページから読んで、今日からできることを実践するだけでも効果があるはずです。

少しでもみなさんの手助けになれたら嬉しいです。何より、お子さんだけではなく、親御さん自身をいたわって、よりよい睡眠がとれることを願っています。

©KADOKAWA

著者プロフィール

SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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