子どもの失敗への正しい親の対応とNG対応
子どもの失敗に対し、つい小言を言ったり、叱ってしまう時がありますよね。でも、子どもの失敗は成長の機会であり、幼少期に失敗を重ねておくことは大切なこと。親がそう認識しているかどうかで、子ども自身の失敗の捉え方も変わってきます。
そこで、子どもが失敗をしたときの、正しい親の対応とNGな対応について公認心理師の佐藤めぐみさんに解説していただきます。
目次
こんな子どもの行動をどう受け止める?
・お菓子の箱を開けようとしているけれど開けられない
・ブロックが年上のきょうだいのようにかっこよく作れない
・トイレトレーニング中におもらしをしてしまった
・公園でうちの子だけ逆上がりができない
・忘れ物を連発し、先生から連絡帳で指摘を受けた
・算数の宿題で早とちりをして間違えた
これらは、確かに物事をさらっとこなしているわけではないので、“失敗”に見えるかもしれません。
でも実際には子どもが成長するいい機会であり、子どもの質的な側面、特に非認知能力を伸ばす場になってくれます。
子どもの失敗は子どもを伸ばす機会になる
なぜ失敗が子どもの成長の機会になるのでしょうか。失敗からつく力を見ていきましょう。
・チャレンジ精神→失敗を何度も経験するうちに、失敗してもやり直せることを自然に学べる
・踏ん張る力→思うように進まない場面への耐性がつき、逆境に強くなる
・コツコツ努力する力→物事は1回で成し遂げるものばかりではなく、試行錯誤しながら時間をかけてたどり着くものだという認識ができる
・やり抜く力→失敗の先に成功が待っているという経験を重ねることで、最後までやり抜く忍耐強さが育める
・自己管理力→その時は恥ずかしい思いをしたり、イヤな思いをしたりもするが、それを経てミスが防げるようになる
このように、単に「できなかったことができるようになる」だけでなく、その子の中の本質的な能力を育むことができるのです。発明家として知られるエジソンも、
“Our greatest weakness lies in giving up. The most certain way to succeed is always to try just one more time.”
(私たちの最大の弱点は諦めてしまうことだ。成功するのに最も確実な方法は、常にもう一回だけ試してみることである)
と言っています。その成長の機会を逃さないようにするために、親として何ができるか。親の対応を見ていきましょう。
子どものタイプ別!子どもが失敗したらとるべき親の対応
失敗後の子どものリアクションには個人差がありますが、どの子にとっても失敗は「あ~ぁ」という気持ちの落胆をもたらすものです。
よって、親がとるべき共通の対応は「今の気持ちを受け止めること」。「残念だったね」「悔しいね」と本人の気持ちを理解して親が子どもの心のよりどころになることで、状況を受け止めやすくなります。
さらに、「“今回は”上手くいかなかった」「“今回は”残念な結果だった」というように、その失敗を限定的に捉えていくこともポイントになります。もし、「また上手くいかなかった」「今日も残念な結果だった」と言ってしまうと心にのし掛かる重みが違います。
物事の捉え方は人それぞれ違いますが、次回につなげるためには、「失敗を前向きに理解させること」がとても大事なので、親自ら、声掛けで失敗を広げないように意識していきましょう。
次に、タイプ別に見ていきます。ここでは大きな分かれ目である、「次もやろうという気持ちがある→前向きタイプ」と「尻込みしてしまう→後向きタイプ」の2通りに分けていきます。
タイプ① 前向きタイプ
・失敗したけれど、まだやりたい気持ちがある
・精神的にもそこまでしょげていない
【親のとるべき対応】
こういうタイプの子は基本的に自らの力で前に進んでいけますが、その強みをさらに際立たせるためにも、その前向きな気持ちをしっかりとほめてあげてください。
「あなたのコツコツやれるところってすごい力だよね」「へこたれない強さ、すごいね」のように言ってあげましょう。
また、備わりつつある「失敗を失敗と捉えない考え方」にも磨きをかけていきたいところです。再びエジソンの言葉ですが、
“I have not failed. I’ve just found 10,000 ways that won’t work.”
(私は失敗していない。うまくいかない方法を 1万個見つけたのだ)
まさに失敗を失敗と捉えていない見方ですよね。こういう偉人が残したエピソードを話してあげるのもとてもいい教えになるでしょう。
タイプ② 後向きタイプ
・失敗後、やる気が低下している
・泣いたりわめいたり、感情的に乱れている
・もともとあきらめモードで取り組んでいる
・失敗が怖くなっている
【親のとるべき対応】
失敗した後に泣いて前に進めない場合、まず大事なのはその気持ちを少しでも落ち着かせることです。大きな舞台であればそう簡単に復活するのは難しいですが、そばに寄り添い、気持ちのより所になってあげてください。
失敗して泣くのは、「成功したい」という思いがあったからこそ。やる気がないわけではなく、その時の失敗にしょげているので、気持ちを復活させることがポイントです。
中には、「まただ」「どうせできない」と失敗を大して残念がらない子もいるでしょう。自分の力を信じられず、あきらめてしまうのは学習性無力感かもしれません。
こういう場合は、自分への信頼感を持たせることが大事なので、今チャレンジしている内容をスモールステップに組み直すことも助けになります。「〇〇が10回できるようになる」を、まずは2回、5回を目標にするわけです。
成功体験を重ねることは自信につながりやすいので、やる気が落ちている子はスモールステップに組み直していくのがおすすめです。
また、失敗への恐怖心がある子に対しては、親の失敗談を話し、子どもの失敗へのハードルを下げてあげましょう。
親はつい自分の小さい頃の自慢話(「パパはいつもかけっこが1位だった」とか「ママは怒られたことがない」など)をしがちですが、子どもにはパパ・ママの失敗話の方が心の助けになることが多いです。
子どもが失敗したときの親のNG対応
次に子どもの失敗場面での親がとるべきではない対応を見ていきます。
NG対応① 親が感情を乱す
子どもが失敗してがっかりしているところに、親が叱りつけたり、その子を否定するような言葉を発したりすると、ほぼ確実に状況は悪化します。その場の落ち込みを激しくするばかりか、叱られたくないあまり失敗を恐れるようになることもあるでしょう。
子どもの失敗は、親としてもショックな状況ですが、そこで一緒に感情を乱すと、失敗がよけいにイヤな思い出となってしまうので自らの感情コントロールを意識したいところです。
NG対応② 状況を飛躍させた言動をする
子どもの失敗は、親もいろいろ考えさせられるので、つい悲観的に考えてしまうこともあるもの。でもそれをそのまま口にすると、子どものやる気をさらに低下させてしまいます。
たとえば、「こんな調子じゃ発表会までに間に合わない」「いつになったらできるの」「もうほんと最悪」など。「今後もずっと上手くいかないに違いない」という思いが伝われば、だれだってやる気を損ねてしまいますので、先々を暗く捉えた言動は控えましょう。
NG対応③ 先回りしてなかったことにしてしまう
ここまでは失敗後の対応を見てきましたが、中には子どもに失敗させたくないあまり、失敗する前に先回りしてしまう親御さんもいます。
たとえば中学生になっても、親が学生カバンの中身を管理しているようなケースです。その子は忘れ物をせずに済みますが、これでは自己管理能力が身につきません。先回りし過ぎ=年齢不相応の過保護になりますから、見直しましょう。
親が子どもの失敗を恐れるのは悪いこと?
できれば子どもには上手くいってほしいし、失敗してほしくないものです。
大切な存在だからこそ、失敗にも敏感になってしまいます。でも、失敗はネガティブなことではありません。
わが子の失敗に対し怒りを感じやすい場合、
「うちの子はできる子でいてほしい」
「できないことは恥ずかしい」
という親のエゴや過剰な期待が影響していることが多いです。とくによその子と比べ、「あの子はできているのにうちの子はできない」という場面は引き金になりやすいと言えます。
その子も何回も失敗してできるようになったのかもしれないのに、できている場面だけで比較してしまうと、わが子の失敗が許しがたいものになってしまうのです。
こういう必死な思いも、わが子が可愛いからこそなのですが、その失敗を意味あるものにすることが大事なので、
「この失敗から何が学べるか?」
「次にどうつなげるか?」
という視点で捉え、親も子も試行錯誤への耐性をつけていきましょう。
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育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/