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魔の2歳児到来!? イヤイヤ期を乗り切る秘策と知っておきたい2歳児の特性

魔の2歳児到来!? イヤイヤ期を乗り切る秘策と知っておきたい2歳児の特性

2~3歳に見られる「イヤイヤ期」。この時期は、子どもに振り回されて、毎日ヘトヘトというママが急増します。

現在、真っ只中というママともうすぐかもというママに、ぜひ知ってもらいたい「イヤイヤ期」について、子育て心理学の専門家と、2歳児クラスを受け持つ現役保育士の方にお話を伺いました。発達の特長や心理的な意味を理解しながら、2歳児のイヤイヤ期とどう向き合えばいいのかの対策をお伝えします。

2歳児の発達の特長とは?

まずは2歳児の体の発育について。厚生労働省が平成22年度に実施した乳幼児身体発育調査によると、2歳~2歳6ヵ月の場合、身長の標準が(男子)86.7cm、(女子)93.8㎝、体重の標準が(男子)11.93kg、(女子)13.53㎏となっています。

さらに、東京都保育所保育指針よると、2歳~2歳6ヵ月頃の子どもの発達の特長は以下のように記されています。

【生活習慣】
・手づかみ食べからスプーンを使って食事ができるようになる。
・走る、飛ぶ、ボールを投げる、追うなどの遊びができるようになる。
・指先を使う遊びに興味を持つようになる。

【学びの芽生え】
・鉛筆やクレヨンでぐるぐると曲線を描く。
・好きな歌を覚えて歌う。
・保育士や友達と簡単なごっこ遊びを楽しむ。

【言語力】
・生活に必要な挨拶をするようになる。
・二語文を話すようになり、おしゃべりが盛んになってくる頃。ただし、個人差が大きいので、しゃべらなくても言葉をため込んでいる時期である。

【人との関わり】
・自分本位の行動が目立ち、思い通りにいかないと、かんしゃくを起こしたり、何でもイヤイヤと泣くことも。
・身の回りのことを「自分で」やりたがる。

【ポイント】
2歳児と接する際のコツは、子どもの気持ちを受け止め、そっと援助しながら自立へ向けた意欲を育てていくこと。できたときには「できたね」と認め、その子なりの達成感や満足感が味わえるようにしていくとよい。

では、続いて2歳児の最大の特長といえる「イヤイヤ期」について、公認心理師の佐藤めぐみさんに解説いただきます。

心理学から見たイヤイヤ期、その内部で起こっていること

イヤイヤ期の本来の目的は、イヤイヤをすることではありません。この時期の子ども達は、自我の急成長期に来ているため、その副産物として「イヤイヤ」が出ます。つまり、「イヤイヤ」というのは、どちらかというと“オマケ”であって、本当の目的は「自我を成長させること」です。

「自我」=自分の存在のこと。私たちはもう大人なので、自分が一人の人間かどうか…?と疑うことはありません。しかし、生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ「自分の存在」を自覚していません。自分はママと一心同体だと感じています

0歳後半から1歳にかけ、身体能力が著しく向上し、ハイハイしたり、歩き出したりするようになると、物理的にママから離れることもあり、それまでの「一心同体」の殻から抜け出し、「自分」の存在に気づきます。

そして、2歳になるころには、自我の確立作業がマックスになり、日々、自分の意思を通そうとしたり、感情を強く出したりすることが増えます。これが「イヤイヤ期」という現象です。

心の中で起こっていることは実際には目に見えないので、親はどうしても目に見える現象で「うちの子はこうだ」と捉えてしまいがちです。よって、イヤイヤ期は、「イヤイヤする姿」ばかりが目に焼きつくことになります。

しかし、心理学的に見れば、内側のプロセスの方がずっと重要です。外側だけを見て、対処法を考えると間違った方向へ進んでしまいます。次の項でご紹介するのは、子どもの自我発達を踏まえた「イヤイヤ期対処法」です。ぜひご参照ください。

イヤイヤ期の対処法、やっていいこと、悪いこと

心理学的におすすめする「イヤイヤ期対策」は全部で4つ。やるべきでないこととやるべきことを2つずつ、お伝えしていきます。

やるべきでない2つのこと

1.イヤイヤを消そうとすること

この時期を「イヤイヤ期」と捉えてしまうと、どうしても子どもの「イヤイヤ」に目が向くようになります。そして、親が行きつくのは、「イヤイヤをどう封じ込めるか」ということ。

しかし、親が「いいかげんにしなさい!」「泣くのはやめて」と無理に抑え込もうとすると、子どもはうまく感情を排出できずに、心のどこかに抑圧することになります。押さえ込まれた感情は、いつかどこかで爆発してしまいかねません。

イヤイヤを押さえつけることに目を向けるのではなく、自我を促進するにはどうしたらいいのかに、対策の矛先を向けましょう。

2.先回りして、イヤイヤをさせないこと

イヤイヤされるのはママもイヤです。それもあり、ついやってしまうのが、先回り行動です。

子どもがつまずかないように、失敗しないようにと、手を貸し過ぎてしまうと、子どもは、何でもスイスイと事を進めることができるため、自分の真の力を試すチャンスが減ってしまいます。それにより、自我の発達が促されなくなるのです。

子どもが失敗しないように足場を固めてあげるのではなく、失敗したときに、その悔しい気持ちに寄り添ってあげることが大切です。

やってあげたい2つのこと

1. 子どもに選ばせる

この時期は、ママに何かを決断されることを極端に嫌がります。ママの一日のルーティンに大きな影響を及ぼさないことに対しては、子どもに決断をゆだねていきましょう。

「今日のお洋服、どうしようか? 青のシャツと緑のカットソー、どっちがいい?」
「おやつはクッキーとヨーグルト、どっちがいい?」

など。小さな決断を日々たくさんこなすことで、自我が満たされると、イヤイヤ減にもつながります。

2. アタッチメント強化を図る

子どもに反発されると、ママも頭に来るものです。それが連発となれば、ママも「もういい加減にして!」と距離を置きたくなります。

しかし、アタッチメント(親子間の絆)が強い方が、イヤイヤ期をスムーズに進めることができるというデータもあるほど、親子関係のあり方が求められるのがこの時期。イヤイヤ期は健常な心の発達過程、どうせ歩むものなら、一緒に手をつないで進んでいきましょう。

イヤイヤモードになっていないときのスキンシップや遊びタイムを、今以上に充実させると、子どもの揺れる心が安定してきます。

この時期の本来の目的は「イヤイヤをすること」ではありません。単にイヤイヤをさせればOKとしてしまうと、「ただのワガママ」にもなりかねません。

まずは頭の中にある「イヤイヤ期」という文字を、「自我促進期」として捉え、子どもの「ボクがやるの」「ワタシやりたい」という気持ちを満たすような働きかけを、日々盛り込んでいきましょう。

保育のプロがアドバイス! イヤイヤ期8つのお悩みとの向き合い方

続いてお話を伺ったのは、1歳からの受験託児、しんが~ずクラブ(https://www.shinga-s-club.jp)の2歳児クラスで2歳児クラスを担当されている、保育士歴15年の髙岡優先生。保護者からのイヤイヤ期に関する8つのお悩みにお答えいただきました。

Q1 イヤイヤが保育園と家庭で違うのはなぜですか?

園と家庭で見せる姿に違いがあることは自然なこと。小さいながらに社会性を身に着けている証拠です。外(園)で頑張って家で甘える、オンとオフがあるのは大人も同じですよね。

Q2 イヤイヤ期が一番激しいのはいつ頃ですか?

イヤイヤ期は1歳半の自我の芽生えとともに始まって、だいたい2年くらいで収まると言われていますが、言葉や心の成長段階でイヤイヤの種類も変化していくので、その段階ごとに大変さはあると思います。言葉が発達してくると、例えば選択肢を与えて遊ばせようとした際に、「すべてを嫌」と言われてしまい、難しさが増す場合も。

Q3 2歳のイヤイヤ期の対処法として園で心掛けていることはありますか?

嫌と言った時に否定せず、気持ちに寄り添うようにしています。添えないときは「そうだね~」と一言置いてからその理由を話すようにしています。

Q4 園での「〇〇したくない!」に先生方は具体的にどう対処していますか?

やらなくてもいいことなら、「じゃあまた今度のときね」と気持ちに寄り添います。

「お散歩行きたくない」には「一緒に行きたいな」「〇〇見に行こう!」など行ってみようという気持ちに持っていくようにしていいます。

「給食食べたくない」には、「今日は何のメニューか見てみよう」「一口食べて嫌なら食べなくてもいいよ」や、他の子と楽しく会話している流れでそっと口元にスプーンで運んでみると、思わず食べてしまうことも。コツは注目しすぎないこと。また、園では活動時間に限りがあるのでいつでも自由に好きなことができないこともきちんと伝えるようにしています。

Q5 家で「ご飯食べたくない」のイヤイヤ、どう対処すればいい?

家庭でも自由にいつでも食べられるわけではないことを伝える必要があります。また、食べることに集中できずに遊んでしまうときは、食事を切り上げてしまうのも手です。「お腹が空くのでは」「栄養面が心配」になるかもしれませんが、一食抜いたくらいでは大丈夫。空腹を知ることも大切なことです。

Q6 イヤイヤ期と甘えを見極めるポイントとは?

イヤイヤ期も甘えも、まずは受け止めて話を聞くことが一番です。また、イヤイヤ期からくる嫌なのか、単なるわがままなのかを見極めるのが大切です。「あれ買って」「これやって」をすべて叶えて、子どものできることを奪うのは甘やかしです。ときには甘えさせながらも、自分でやろうとする気持ちへもっていく働きかけをすることが重要です。

コツは、子どもの主張を受け止めつつ、できないことはきちんと伝えること。話し合う中で、子どもはどこまでなら甘えやわがままが通るのかを学んでいきます。

Q7 イヤイヤ期を乗り越える際に、家庭と園で共有しておくといいことはありますか?

困っていることは相談して、園と家庭でお子様の様子をしっかりと共有してください。その中で統一した方がいい決め事がある場合は、園と家庭で連携して対応していくといいと思います。

Q8 わが子のイヤイヤ期で悩む親御さんにメッセージを!

イヤイヤ期は自己を確立していくための大切な時期です。言葉で自分の気持ちをうまく表現できないことからもきているので、お子さんの気持ちを否定せず、受け止めたうえで何を伝えたいのか言葉で代弁してあげることが大切です。

何でも嫌と言われて心が折れそうなときもあるかもしれませんが、親にきちんと受け止められた経験が、その子を思いやりのある人にすると信じています。成長の時だと思って大切に関わってあげてください。

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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