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子育て

「自分で決められない子ども」原因と必要な経験、親の接し方

「自分で決められない子ども」原因と必要な経験、親の接し方

子どもに意見を求めると「ママ決めて」、忘れ物をすると「ママのせい」のように、わが子の他力本願な言動や行動で悩んでいるご家庭は少なくありません。そこで今回は「自分で決められない子ども」をテーマに、その原因や対策についてお伝えしていきます。

自分で決められない子は親にとって「聞き分けのいい子」!?

私が運営する育児相談室で一番よく聞くお悩みは、「言うことを聞かなくて困る」です。年齢的には2歳過ぎから、上は中高生までと幅広いのが特徴的です。一方で、小さいうちは見られないものの、5歳過ぎたあたりから出てくるのが、決断力、判断力、責任感などに関するお悩みです。

たとえば、
「うちの子、自分で決められないんです」
「どうするかと聞いても、『わからない』とか『ママ決めて』とか」
「何でも人任せで、何か起こると親のせいにする」

このようなご相談です。

お話を詳しく伺うと、「聞き分けがいい子」「言うことを聞く子」であることもよくあり、それまでは特に気になる悩みもなかっただけに、どうしたらいいものかと困ってしまうのです。

「決めるのが苦手」にさせてしまう親の特徴

もともとの性分で、自分の意見をアピールしたい子もいれば、もじもじしてしまう子もいますが、親の接し方との掛け合わせにより、「自分で決めるのが苦手」になってしまう子もいます。親がどのような接し方を続けると、子どもにどのような影響があるのでしょうか。ここで原因となりうる接し方について見ていきたいと思います。

タイプ①:親が決めてしまう
子どもの決断力が育たない背景に、親の意見が強過ぎる場合が挙げられます。日々の小さな決断(何を着るか、何で遊ぶか、何を読むか…)から、少し大きめの決断(何を習うか、いつどこでやるか…)、さらに大きい決断(どこを受けるか、将来どうするか…)まで、親が指示的に動いてしまうのです。

意見が強くなる理由としては、「忙しくて時間がないから、自分のやり方で押し通してしまう」という時間的な焦燥感もありますが、それは「子どもよりも自分の都合を優先してしまう」ということになり、さらには、「それがこの子どものため」と思っていることもあります。この場合、親にまったく悪気はなく、育児にも真摯に向き合っているため、なかなか気づきにくいと言えます。

親が代わりに決め、子どもはそれについていく形なので、親からすると「言うことを聞く子」に映ることがあります。

タイプ②:親がお膳立てしてしまう
2つめは、親の先回り傾向です。「子どもにはいつも笑顔でいてもらいたい」「イヤな思いをさせたくない」「泣かせたくない」と思うため、先回りして色々とお膳立てしたくなるのです。いわゆる“カーリングペアレント”です。また、これ以外にも、「面倒なことにならないように」「親がやった方が早い」という思いで先回りしていることもよくあります。

いずれにしても、すでに親が手はずを整えているため、子どもはそこをスイスイと渡っていくだけなので、「これは困った!」「どうすべきか」と迫られる場面に遭遇しにくくなります。

「自分で決められない」とどんな弊害がある?

親が整えた環境下では、その子が目の前のことに疑問を持ったり、考えたり、決めたりする機会自体が減ってしまうため、1人で向き合うような場面になると、「自分で決められない」「自信がない」ということになりがちです。それ以外にも、

・ 何かあると人のせいにする
・ 面倒なことや手間がかかることをやりたがらない
・ 自分の意見や考えが乏しい
・ 失敗を敬遠する
・ 自分から何かをやるという発想が出にくい
・ 将来についてのビジョンや夢がない

のような、他力本願な傾向も見られることがあります。

とくにこの中でも、人のせいにする傾向は、割と小さいうちから見られる気がしています。実際、私の相談室(4~6歳の子のご相談が多い)でもよく聞きます。
たとえば、習い事で子どもが1人になる場面で、ティッシュを忘れたら「ママのせい」、鉛筆が削られていなかったら「ママのせい」など。あらゆる管理をママがやってくれることに慣れてしまっている様子が伺えます。

毎日が“いい感じに回っている”のは共依存の可能性も

前述したように、「うちの子は自分で決められないタイプかも」と親が感じるのは、ある程度成長してからがほとんどです。早い段階で気づきにくい理由として、子どもは自分の親の接し方には疑問を持ちにくいという点が挙げられます。

とくに小さい子は他の家庭と自分の家を比較する機会もないため、親が度を越して指示的であっても、先回りでお膳立てをしてくれていても、それが当たり前と思ってしまうのです。また親側から見ると、自分のペースを大きく乱されることなく毎日がいい感じに回っていれば、「これで合っている」と思ってしまいがちです。

つまりこの状態は、子どもからしたら親がリードしてくれて、あれこれお膳立てしてくれるし、親からしたら自分の思うように事が進んでいる。どちらにも不都合がないため、共依存のような状態になりやすく、気づきにくいのです。

小学校半ば~中学生になり、「それくらい自分で決めなさい」という時期になって、「あれ?」と疑問を持つこともありますし、中にはそのまま大人になってしまう人もいます。「自分の意見がない」「自分ではなかなか決められない」という人が、自分が親になったことで「これではいけない」と感じ、私のところに相談に来られる事例はかなりあります。

大人になってから「自分を変える」というのは時間がかかるものです。それもそのはずで、もう数十年その形(決められない私)でやってきているのですから、明日から急に変わるというのは難しいのですよね。

なので、早く気づくということがとても大事です。たとえ今お子さんが言うことをよく聞くタイプの子であっても、子育て全般が“いい感じ”に回っているとしても、自分の接し方がタイプ①か②になっていないかをあらためて振り返ってみてください。

決められない子の対処法は「3つの経験不足」を補うことから

ここまで読んでいただいて、「もしかしたらうちの子はそのタイプになるかも」と感じた場合は、次の3つのポイントをチェックし、足りないものがあれば補っていきましょう。

1. 身の回りのことを自分でやる経験
自分で決めるなど「自分力」をつけていくために、朝のルーティン、持ち物の準備、予定の管理などを意識的に移管していきます。子どもがやると時間もかかるし、任せると漏れも出てきますが、メインはあくまで子どもで、親はサブに回りましょう。

その際は基本的にほめベースで。また、年齢相応の期待に留めることも大切です。欲張り過ぎてあれもこれも、となるとたいがいうまく行きませんのでゆっくり進めていきます。

2. 失敗する経験
親が作った軌道に乗って来た子は、色々とうまく行くことに慣れています。そのため、1回の失敗が普通より大きく響きがちです。自由意志で選び、挑戦し、うまく行けばラッキー、でも失敗することもある。

こういう経験が不足しているので、意識的に補っていきましょう。親はうまく進むよう励まし、失敗したときはねぎらい、「次うまくやるにはどうしたらいいか」を一緒に考える。親はここでもメインで走らず、あくまで伴走者です。親が子どもの失敗を怖がらないことも大切なポイントです。

3. 自分で考えて決める経験
これまで自分で決めてこなかった子は、どう決めたらいいのかも迷うことが多いので、日常の小さなことから決める経験を積んでいけるといいと思います。

何で遊ぶか、何を食べるか、何を着るか。迷うようなら2つの選択肢を親が作り、そこから選ぶ形だとやりやすいかもしれません。もう少し大きな決断であれば、候補となるアイデアを思いつくままにブレインストーミングのように書き出すのもおすすめです。

その際、「でも…」はナシで。決断の材料となるアイデアを出すこと自体がとてもいい練習になるので、否定はせずに進めます。可視化されることで1つ1つに向き合えるので、答えを出しやすくなると思います。決められないタイプの子の中には、親の正解が自分の正解だと思っている子も多いので、ここも親が前に出過ぎないように気をつけながら取り組んでみてください。

大事なのは親自身の振り返り!

そして何より大事なのは、親自身の振り返りです。親に悪気はないですし、わが子を思ってやっている方がほとんどですが、タイプ①も②も、大人目線で状況を最適化しているところがあるため、結果的に子どもの経験値を奪ってしまっています。

子育てでは、親が良かれと思ってやっていることが、子どもに悪い影響を及ぼしてしまうこともあります。思い当たる節がある方は、タイプ①と②からの脱却を試みていきましょう。

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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