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子どもを無視したり、夫婦間の暴言を見せるのも心理的虐待になる!ちゃんと知っておきたい「虐待」の定義

子どもを無視したり、夫婦間の暴言を見せるのも心理的虐待になる!ちゃんと知っておきたい「虐待」の定義

最近は耳にしない日の方が少ない虐待のニュース。では、「児童虐待」の正式な定義はご存知でしょうか? ここでは、政府が定義する4タイプの虐待から、自らの振り返りを行っていきたいと思います。

児童虐待には4つのタイプがある

児童虐待防止法では、児童虐待をその特徴から4つに分類しています。厚生労働省のホームページに掲載されている「児童虐待の定義」を見てみましょう(*)。

【身体的虐待】

殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる、首を絞める、縄などにより一室に拘束するなど

【性的虐待】

子どもへの性的行為、性的行為を見せる、性器を触る又は触らせる、ポルノグラフィの被写体にするなど

【ネグレクト】

家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かないなど

【心理的虐待】

言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子どもの目の前で家族に対して暴力をふるうなど

そして、以上のことが、「起こっているかも」と思ったら、“189”に電話し、いちはやく通報することが国民の義務になっています。「かも」と書きましたが、2004年の法改正で、通報する基準が、「虐待を受けた児童」から「児童虐待を受けたと思われる児童」に改められています。

というのも、家庭の中で起こっている虐待は、外側にいると「絶対そうだ」という確証が得にくいため、どうしても通報が遅れてしまいがちだからです。法改正により、「かも」の段階での通報が義務化されたのです。

一番起こりうるのが心理的虐待

「虐待」というと、自分とは遠いことのように感じる方も多いかもしれません。ただ、上の定義でも伝わってくるように、虐待にも幅があり、暴力だけが問題ではありません。ニュースで見るようなひどい体罰や育児放棄だけが虐待ではないのです。

とくに注意すべきは、心理的虐待です。身体的虐待、性的虐待、ネグレクト、この3タイプはみなさんが思っている”虐待“に合致する内容だと思いますが、心理的虐待はどうでしょうか?

厚生労働省の児童家庭局によれば、
・子どもを無視したり、拒否的な態度を示すこと
・子どもの心を傷つけることを繰り返し言うこと
・子どもの自尊心を傷つけるような言動をすること

も心理的虐待としています。

つまり、
・言葉で脅したり、悪態をつくのもダメ
・子どもを無視するのもダメ
・差別をするのもダメ
・子どもに夫婦間の暴言・暴力を見せるのもダメ

決して、他人事とは思えない、起こりうることではないでしょうか。実際、児童相談所での虐待相談の内容別内訳を見ても、心理的な虐待がもっとも件数が多くなっており、一番気にしなくてはいけない虐待のタイプとも言えるのです。

ちょっと叩くくらいなら許されるのか

また、身体的虐待については、「しつけのための体罰」なら、それに当たらないのかという問題があります。

2019年現在、世界の57の国々が、子どもへの全ての体罰を禁止する声明を出しています。しかし、このリンクにあるページで「Japan」と入力すると出てくるように、現在の日本は、学校での体罰を禁止しているものの、家の中での体罰はある程度黙認されている状態です。

2017年に、公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが行った調査でも、子どもに対するしつけのための体罰を容認する人が56.8%と、日本はいまだに体罰を「あり」とする意識が根強いと言われています。

そんな中、昨今の児童虐待の深刻な状況を鑑み、2020年4月には保護者による体罰の禁止が法律に明記されることになりました。ただそこに含まれる体罰の定義は、今後検討されることになっている状態です。

でも、頭をコツンとしたり、おしりをちょっと叩いたり、このような痛くない程度の体罰なら許されるのかというと、決してそんなことはありません。理由は3つで、

・強い力で圧しても子どもの正しい学びにはならない(怖いから従うだけ)
・しだいに叩く強さや頻度がエスカレートしていく傾向がある
・子どもに力で圧することを教えている

と子どもに良い行動を教えるしつけにはつながらないからです。

悪態や体罰をエスカレートさせないためにも正しい知識を

虐待事件を起こすような家庭でも、いきなり激しく叩いたり、蹴ったりしているのではありません。はじめは口で注意したり、ちょっと叩いたりではじまるのです。子どもを力で抑え込もうとすると、いつかエスカレートを起こします。

虐待のニュースをテレビで見るたび、「なんてひどい」「かわいそうに」と自分の家では起こりえないこととして捉えがちですが、決して対岸の火事とは言いきれません。

「これだけ言っているのに聞かない」となると、「ならば痛い思いをしないとダメだ」と手が出てしまう。それで子どもが言うことを聞くと、「やはり叩くのは効果がある」と誤解し、その頻度が上がっていく。こうやって力で言うことを聞かせるしつけはエスカレートしていきます。

私は子育て心理学を普及する活動をしていますが、「しつけの心理学」を学んでくれたママたちは悪態や体罰がいかに悪影響かを知り、そこから脱すべく方向転換を図っています。

子どもは小さければ小さいほど自分でSOSを発することができません。大人の方がその悪循環に気づき、正しい知識で舵を取り直していきましょう。その際は、自分だけで解決しようとせずに外にサポートを求めてほしいと思います。

子育てサークル、インターネット、育児相談、今はたくさんの情報が得られる時代です。知ることで解決できることは多いので、1人で抱え込まずに周りを頼ってほしいと切に願っています。

ちなみに東京都では、2019年4月より「東京都子供への虐待の防止等に関する条例」が施行されています。たとえば、保護者から

・叩かれたり、蹴られたりすること
・怒鳴られたり嫌なことを言われること
・ご飯をたべさせてもらえなかったり、学校へ行かせてもらえないこと
・服で隠れるところを触られたり、見られたり、写真を撮られたりすること

を虐待とし、秘密はまもるから、いつでも相談してねと子どもにも保護者にも呼び掛けています(0120-874-374)。

*参照:厚生労働省ホームページ

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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