ママが働いていることは、子どもの発達にマイナスか?【ワーキングマザーという選択 第1回】
自分のキャリアと家族の健康管理、子どもの将来…。SHINGA FARMでは多忙な日々を送るワーキングマザーの現状と両立の秘策をさぐるべく、さまざまな専門家にお話を伺っていきます。
第1回は、2015年9月に開催されたmave(まーぶ)セミナーでの講演「ワーキングマザーという選択~その時考えるべき子どもの心理とは~」より、お茶の水女子大学基幹研究院教授 菅原ますみ先生によるワーキングマザーにとって知っておきたいエピソードが満載です!
国立精神・神経センター精神保健研究所地域・家庭研究室長を経て、2006年より現職。子ども期のパーソナリティの発達や精神疾患などの不適応行動の出現に影響する環境や、家庭や教育・保育施設・メディアや居住環境など広範囲な要因について研究する。「個性はどう育つか」「保育の質と子どもの発達」「ママというオシゴト」「子ども期の養育環境とQOL」など著書多数。
目次
母親が働いていることは、子どもの発達にとってマイナス?
小さい子どもを持つ女性の就労率が2~3割の日本。海外に比べてまだまだ大変低いのが現実です。その理由のひとつが、いまだに根強い「3歳児神話~子どもが3歳になるまでは母親が子育てに専念すべきだという考え~」。
しかし、海外の発達心理学研究では、母親が働いているかどうかは、子どもの発達にネガティブな関連がないことがすでに明らかになっています。
学術の世界では“3歳児神話”はもはや「風説」。「働いていること」は決してマイナスではないと結論付けられています。
一緒にいる時間の長さよりも、関わり方の質が問題。子どもとのよい関わり方とは?
母子関係に大切なのは、一緒にいる時間の長さよりも、関わり方の「質」。ここでは、成長段階に応じた関わり方のポイントをおさえましょう。
3歳まで
愛情を肌で確認する愛着形成期。子どものこころの”安全基地”として養育者との良好な関係を作ることが大切です。
育休を取得することももちろんよいことですし、お仕事の関係で無理な場合は、子どもに愛情を注いでくれ良質な保育を提供してくれる預け先を見つけましょう。
ゆったりとした環境の中で五感を活かした遊びに集中し、しっかり食べてぐっすり眠ることが大切です。
保護者と保育者それぞれの心の安定と適切なケアにより良好な愛着関係を形成し、子どもを真ん中にしたよい信頼関係を築くことがポイント。
子どもの前で保育園の先生の悪口を言うのはNGです。
出かける前は、子どもに分かることばで、きちんとコミュニケーションをとってあげましょう。
毎朝「ママはお仕事に行ってくるね。夕方のお迎えは、ばあばが来てくれるからね。先生やお友だちと楽しく遊んでね。また夜に一緒にご本みようね。」と笑顔で言えるか、これはとても大事です。
幼児~小学校低学年
他者の気持ちが理解できるようになるなど「心」が発達する時期。
ワーキングマザーの子どもは、小さい頃からたくさんの友だちや先生と一緒に過ごすことが多く、言葉や社会性の発達という点で強みがあります。
親に対する思いやりや遠慮も出てくる一方で、「もっと早く帰ってきてほしい」「〇○に行きたい」など自己中心的な主張も強くなってきます。
子どもの声にきちんと耳を傾け、こちらの事情も説明しつつ、出来る範囲で叶えてあげるとよいでしょう。
温かさと厳しさを持って子どもの行動を適切にコントロールできる「権威ある親」であってほしいと思います。
学校行事などへの参加はできる限り大切にしつつ‘うちはうち’‘わが家はこうする!’というペースに親が自信を持つことも重要です。小学校に入るころには時間は短くとも一緒に宿題や翌日の準備をする時間を持ちましょう。
児童期後期・思春期
小学校高学年(児童期後半)になると、身体も心も大人に近づき、家庭や親の事情も理解できるようになってきます。
母親の仕事にも評価や尊敬、感謝の気持ちが芽生えてきます。
一方で、善悪の判断はまだ単純で未熟。一緒にいたい気持ちと葛藤することもあります。適切な距離感を心がけ、手がかからなくても目を配り、心を寄せることが大切な時期です。
一緒にお料理したり映画をみたり、といった共同の活動も大切にしましょう。
中学生~高校生
この頃になると母親のこれまでのキャリアが生きてきます。
働く人生の先輩として、進路決定や就職活動の際は、会社の有能な部下の次世代育成をするようなつもりで子どもの相談にのってあげましょう。
女優のように、ママとして先生として、アドバイザーとして、さまざまな役になりきりながら“コンシェルジュマインド”で子どもに接してあげてください!
菅原先生のお話では、ママとして、働く女性として、妻として。女優のように役を演じ分けていくことが両立のカギという言葉が印象的でした。また、「養育するのが母親でもそれ以外でも子どもの発達に変わりはなかった」という結果も出ています(日本子ども学会)。
日本社会においては、いまだに「母親は子どもが幼い頃は一緒に過ごすべき」という考えが根強く残っており、働くことに罪悪感を感じてしまうママたちも多いのではないでしょうか。しかし、大切なのは関わる「時間の長さ」ではなく、「関わり方の質」です。子どもの成長としっかり向き合い、接し方を工夫すればママが働くことは子どもにとって決してマイナスにはなりません。
さて、次回はワーキングマザーが抱える様々なストレスへの対処方法について、おなじく菅原ますみ先生の講演からお伝えします。
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