食育って何歳から何をすればいいの?【年齢別で解説】おうちでできる「食育」と発達のこと
コロナ禍でお家時間も増え、親子で料理をという機会も増えたのではないでしょうか。そこで、元幼児教室講師であり、食育インストラクターの資格を持つ㈱ハックシー代表の高橋さんに、日常に取り入れやすい教育効果のある「食育」をご紹介いただきます。今日から実践できる1~6歳までのおうちでできる食育法と発達の関係は必見です!
目次
そもそも「食育」とは?
「食育」と聞くと、生産者さんの顔が見えるオーガニックの食材を使ってすべて手作り、そんなイメージはありませんか? でも本来「食育」とはそんなに特別なものではなく、自然と日常の中でやっていたことが実は「食育」だったりするのです。
「食育」については、国語や算数のように明確化されたものではないので、個人の捉え方によって定義が異なると考えて良いと私個人としては思っています。
農林水産省のホームページによると、
【食育は、生きる上での基本であって、知育・徳育・体育の基礎となるものであり 、様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実現することができる人間を育てること】とあります。
これを踏まえて、私の考える食育は「食を活用した教育」です。「食に関する教育」を「食育」と考える方もいらっしゃるので、本文に入る前に、まずは立場を明確化しておきたいと思います。私としては、どちらの解釈も決して間違いではなく、いろいろな解釈の仕方があるからこそ「食育」は面白く、また難しく捉えられてしまうのだと感じています。
今回の記事では、よくわからないからとっつきづらい、そんな「食育」について、少しでも身近に感じていただくことをゴールにしたいと思います。
好き嫌い(偏食)と食育の関係
お子さんの偏食については多くの親御さんが頭を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。そして、それを克服するために食育が有効ではと考える方も多いと思います。実際に、「野菜を食べられるようになって欲しいから」などと、自社サービス「ハクシノレシピ(ハクレピ)」を受講いただくことも多くありました。経営者としてはサービスをご利用いただけるのは大変ありがたいのですが、教育者として発言すると、その考え方はあまりおすすめできません。なぜなら、親御さんの「克服させたい」という無言のプレッシャーがお子さんの食を楽しむ機会を奪ってしまうことになりかねないからです。
実際に、改善させるためにサービスのご利用を開始してくださった方は3ヶ月程度経過すると「全然克服されないので辞めます」とおっしゃるケースがとても多くありました。一方、レッスンを純粋に楽しんでくれたお子さんは、これまで口にしなかった野菜を自然と食べられるようになったという事例もたくさんあります。
これはなぜだと思いますか? 答えはシンプル。改善するためにレッスンを開始すると、親御さんが無意識のうちに誘導してしまうケースが多いからです。私たちがサービス内で提供している料理コンテンツ、「ハクシノレシピ(ハクレピ)」は、レシピを使わずに、お子さんが使う食材や道具、味付けまで全て決めることが特長です。自分で考えて、決めて、実践するからこそ、達成感を味わうことができ、食に対しても興味を持てるようになるものです。ただプロセスに参加すれば興味が湧くわけではありません。
少し余談になりますが、個人的には偏食はそこまでして改善しなければならないものなのか? と考えています。偏食があるということは、食材に対する違いがわかっているということ。逆に言えば「食育」ができている状態と考えることもできますよね。「好き嫌いはいけません!」という当たり前を一度手放してみると、親子にとって豊かな食事の時間が待っているかもしれません。その結果、自然と偏食が改善されるケースも出てくる可能性もあります。子どもは、楽しい時間が大好きですから。
そのような前提の中で、具体的にすぐできる取り組みを一つお伝えします。それは親御さんが、楽しく美味しそうに食事をすることです。お子さんは親御さんの真似っこが大好きなので、ママやパパが美味しそうに食べている様子を見て、「自分も食べてみようかな?」という意識を持つきっかけになります。もちろん、離乳食期のお子さんなどはそうもいかないと思いますが、つかみ食べができるようになったら、どんなにぐちゃぐちゃになったとしても、ある程度自分で食べさせるよう働きかけをしてあげると良いと思います。
おうちでできる! 1~6歳の年齢別食育法
それでは、いよいよ「食育」の具体的な実践方法についてご紹介していきます。今一度おさらいですが、私のご紹介する「食育」は、「食を活用した教育」になりますので、そんなことも食育になるの!? と思われるかもしれません。「食育」は特別なことじゃない、それが伝わると嬉しく思います。また、今回ご紹介している年齢別の内容は、あくまでも目安です。基本的にはどの年齢にも通ずるものがありますので、お子さんの発達状況に応じてアレンジしながらご活用ください。
・1歳児の食育は「自分で食事ができること」
お子さんが食に興味を持てるか否かは「この時期にどれだけ自分で食事をしたか」にかかっていると言っても過言ではないかもしれません。
汚されるのも嫌だし、時間もない……食べさせてあげた方が親子共に楽ではありますが、この時期に自分で食べる癖がついていると、その後の食に対する意欲も変わってくると思います。ほぼ無意識のうちに癖になっていると、自分で食べることが「当たり前」になるので、その後自分で食べて欲しい年齢になった際などもスムーズに移行できます。また幼児教育の観点でも、指先トレーニングにつながるので大変おすすめです。
・2歳児の食育は「おままごとで楽しく!」
自我が爆発する時期で、食事に対してもイヤイヤが始まるかもしれません。そんな時は無理に食べさせようとしなくてOKです。偏食の箇所でもご紹介した通り、親御さんが楽しく、美味しそうに食べていれば問題ありません。
そろそろ「食育」をと考える時期かもしれませんが、無理に何かを学ばせようとする必要はありません。日頃おままごとを楽しんでいるようであれば、作ってくれたお料理に対しては大袈裟に反応してあげると良いでしょう。「これ美味しいな!どうやって作ったの?」などと、深掘りしてあげると、お子さん自身の興味関心にも繋がりますよ。その他、日常の中に取り入れやすい取り組みとして、色から食材を連想するゲームなどがあります。赤いお野菜なんだろう?などと一緒に考えたりすると、お子さんからするとクイズを楽しんでいるだけなのですが、無意識的に野菜に興味を持つようになることもあります。私は「どんな色が好き?」の歌を使いながらやることが多いです。
・3歳児の食育は「メニュー選びで自主性を高める」
物事の理解が進んでくる年齢なので、お子さんの自主性に任せることをおすすめしています。時間に余裕のある日などは、食事に関してお子さんの希望を聞くようにしてみてください。「今日の夜ご飯は何が食べたい?」など。はじめは知識がなく選びづらいかもしれませんので、いくつかの選択肢から選ばせてあげると良いですよ。次第に決めることに慣れていき、自分で選べるようになっていきます。自分で決めたことがアウトプットされることをお子さんはとても喜びますので、興味のきっかけになり、次第に自分で作ってみたいという意識に繋がっていきます。お料理に興味を持ったらぜひチャレンジさせてあげてください。お料理は火や包丁を使うのでやらせるのが怖いということもあるとは思いますが、やらせてみると意外としっかり取り組むことができたりするので、驚かれる親御さんが多いですよ。
・4歳児の食育は「どう思う?で興味を伸ばす」
もう立派に自分で考える力がありますので、何かをやらせようとする必要はありません。お子さんの興味があることに対して向き合ってやらせてあげましょう。例えば夕食のメニューでお子さんが気に入ったものがあれば、「これってどうやって作ったと思う?」などとクイズを出してみてください。お子さんなりに仮説を立ててもらうと、それを実践してみたいと自然と興味が湧くようになります。この時の注意点は、レシピ(正解)を提示しないことです。
それ以外の場面でも、とにかくお子さんに「どう思う?」などと考えてもらうきっかけの言葉を多くかけてあげることがおすすめですよ。実践したいとお子さんが言ったことは、親御さんも一緒にチャレンジしてあげてください。失敗しても大丈夫だという安心感を与えてあげて、お子さん自身に実験を重ねさせてあげることで、より意欲的な取り組みに繋がります。
・5歳児の食育は「好きなことに食のエッセンスを取り入れる」
自分の中の興味関心が明確になってくる時期だと思います。YouTube、ゲーム、お絵描き、それぞれ好きなものがあると思いますが、それでいいんです。それぞれのお子さんが好きなものの中にちょっぴり「食育」のエッセンスを入れればOK。
例えば、YouTubeが好きなお子さんだったら、「ママがお料理を紹介するYouTubeをやるとしたらどんなチャンネルがいいかな?」などと相談してみる。ママに頼られたことも嬉しいし、自分の好きなことを肯定してもらえたと感じることもできる。その上でお料理チャンネルを作るなら、って考えると自然と料理のことも調べますよね。そのように知ってみるとこれまでと意識が変わったり、興味を持つきっかけになったりするでしょう。もちろんそう簡単にいかないこともあるかもしれませんが、とにかくどのようなものでも、お子さんの興味があることを尊重しながら「食育」のエッセンスを取り入れることがポイントです。
・6歳以降の食育は「スーパーでのお買い物での気づき」
この時期に差し掛かると、大人から与えなくとも、お子さんは自らいろいろ気がつき考える力を持っています。そのため、親御さんがするべきことは、興味を持つ機会を提供することだと思います。畑へ行ったり、植物を育てたり、そんな特別なことでなくていいんです。
おすすめなのは、一緒にお買い物へ行くことです。それも、できれば定期的に行ってほしいなと思います。野菜などの値段を毎回チェックしていると、同じ商品でも値段が変わったりすることに気がつきます。そのようなことに気がつけば、なぜ違うのか知りたくなりますよね。そのような疑問を持つ機会があれば、お子さんは自ら「食育」に取り組んでくれますよ。
「食育」は決して特別なものではないということがお分かりいただけたでしょうか?
確かに少し手間がかかり、面倒な部分があるかもしれませんが、まずは月に一度からでも「ちょっとやってみるか」と思っていただけると嬉しく思います。