「上手な子どものしつけ方」を幼児教育のプロに聞く!
子育てにおけるわが子のしつけについて、「いつから? 何をどこまですればいい?」と悩まれる方は多いはず。そこで、伸芽会の大西眞紀先生に、幼児教育におけるしつけの在り方や、親として意識したいポイントを伺いました。
目次
しつけとは?
__幼児教育におけるしつけの定義について教えてください
幼児教育におけるしつけとは「体の礼儀作法」と「心の礼儀作法」の目安を作ってあげることです。その目安は年代、国、地域によっても違ってきますが、伸芽会は「日本の良き礼儀作法が身につくようにしてあげること」がしつけだと考えています。
さらに、子育てにおける「しつけ=しかること」ではなく「整えること」だと意識することも重要なポイントです。たとえば、お庭作りをイメージしてみてください。
イングリッシュガーデンのような野の花的な整え方もあれば、日本庭園や盆栽のようにきちんと手入れされた美しさもありますよね(ちなみに、盆栽は枝の個性を見極めながらその長所を伸ばしたい方向に整えていくという手法だそうです)。
子どもの心もお庭作りと同じで、手入れしなければ雑草だらけでは、本来咲く花も咲きません。小学校受験では、学校によって盆栽寄りの整え方、野原寄りの整え方と求めるお子さまの姿が異なりますから、ご家庭の方針と学校の整え方が合致している学校を選ばれることをおすすめしています。
もちろん、人間社会における普遍的な善悪の判断力も、幼児期のうちに整えてあげたいものです。
しつけは何歳から何歳までにするべき?
伸芽会では、乳児期から既にしつけの土台づくりは始まり、就学前の幼児期にほぼ完了すると考えています。年齢別のしつけのポイントは以下の通りです。
0歳(乳児期)
安全に健やかに育てるために、視線を合わせて楽しい気分を共有する「いいね」「楽しいね」や「いけません」「ダメよ」の親のメッセージを豊かに伝えましょう。
1~3歳(幼児期前半)
本能のままに行動している時期ですが、「人間社会とはこういう約束事がある」と教えてあげましょう。
生きる上で欠かせない「知・徳・体」を育てることもしつけですが、中でも、3歳まではもっとも発育途上である「体」(四肢や体幹の正しい使い方)を整えていきます。
その際、2歳まではやってよいことと悪いことを伝え続け(まだ理由はわからないので)、3歳になったらいけない理由を説明してあげるのがポイントです。
3~4歳(幼児期中期)
まだまだ自分中心ですが、4歳を過ぎると「この世界は自分中心ではない」という気づきと共に社会意識が少しずつ芽生えてきます。
お友達や先生など身近な人との関わりの中で、「これをされたらお友達はどう思うかな?」など、相手の気持ちを考えながら、気づきの種をまいて「心」を整えることを意識しましょう。
5~7歳(幼児期後期)
たとえば、「お母さまの手を振りほどいて走ること」は、公園内ではOKでも病院など公共の場ではNGなど、「時と場所によって変わる」ということを理解できるようになる年ごろです。
「周りの人を不快にしない」など、しつけの価値基準を設けた上で、自分や、家族やお友達だけの身近な世界から「日本の〇〇という地域ではこんなことが起きている」など視野を広げてあげましょう。
幼児期に目指したいしつけの目安とは?
私たちは、しつけとは「自己抑制」(自分の欲望を場面に応じて我慢できること)であると考えています。人を不快にしないためのマナーも年齢相応に身につけましょう。
たとえば、使ってほしくない言葉(例:「うんち」「おしっこ」など)を覚えた幼児に対するしつけの目安は以下の通りです。
2歳:覚えた言葉を好き放題に使うのではなく、よくない言葉もあると伝える
3歳:相手の反応が楽しくて言ってしまうこともあるが、印象が悪い言葉もあると伝え、我慢をさせる
4歳以降:「楽しいのは自分だけ。聞いた人がどう感じるか考えるべき」と伝え、言ってよい場所(プライベート)といけない場所(パブリック)の区別をして、周囲に配慮できるよう促す
「どこまでがしつけ?」やり過ぎの見極め方
前のトピックで自己抑制がしつけの目安だとお伝えしましたが、お子さまが自己抑制をし過ぎるのは健全ではありません。なぜなら、「子どもの人生を豊かにする」ことではなく、「保護者の価値観の押しつけ」になりかねないからです。
たとえば、以下はやり過ぎの例です。
・自分が本当にやりたいことでも必ずお友達に「どうぞ」と譲らなければいけない
・どんなに疲れていても、目上の人からのお話は直立不動で聞かなければいけない
・別の子と遊びたくても「絶対一緒だよね」と特定の子の言いなりになってしまう
明確な線引きは難しいのですが、「人に拒否されるのを気にし過ぎて、自分の思いや願いを主張できない状態」は厳し過ぎるのではと考えます。
親としては、わが子にかける言葉が「自己満足になっていないか」「嫌みになっていないか」をチェックするのがおすすめです。また、タイミングも重要で、お子さまが行動する前に、先回りし過ぎて言葉をかけていないかもチェックしましょう。
年齢別のしつけの目安&効果的な伝え方
男女差や個人差はありますが、しつけにおける年齢別の効果的な伝え方をお伝えします。
1~2歳
「ダメです」「いけません」「立ちましょう」ときっぱりはっきり隙がないように伝える。
3歳
「危ないからやめましょう」「迷惑になるからやめてください」など簡潔に理由も添えて伝える。
4歳
「それでいいと思う?」「かっこいいと思う?」と周りの人からの見た印象に気づくように伝える。
5歳
「お母さんは許しません」などIメッセージ(アイメッセージ)で社会の許容度を示しながら、ある程度の叱責にも耐えられるメンタルを育てる。叱責の後には心を通わせる時間を必ず作る。
6歳
心の成長が早いお子さまは、自分の本音よりも親の期待を優先するなどIメッセージが逆効果なこともあるので、「靴を脱ぎっぱなしだね。きちんと揃えてください」と感情の言葉を絡めずに事実だけを言葉にする伝え方を意識する(ただし「大好き」「心配している」など心からの愛を伝えるIメッセージは別)。
なぜそうあるべきと考えるのかという理由も「物を大切に扱うため」「一生懸命作って届けてくださった方がいる」「整頓は災害対策でもある」と筋の通った伝え方をすれば理解できる年齢です。
親が何もかも「ダメ」の一言で済ませていると、お友達にも「ダメ」「ヤダ」と言う子になりかねません。
自分の言葉で相手に気持ちを伝えることは、言語化能力が発達し、心の作法も豊かになります。ぜひ親御さんの言葉掛けや、そのルールを大切にしたい真の理由も意識してみてください。
伸芽会が考える「小学校受験で求められるしつけのレベル」とは?
小学校受験におけるしつけのレベルは、学校によって違ってきますが、
・あいさつや返事ができる
・人の目を見て話せる
・体幹を意識したおじぎができる
・自分のことが自分でできる
・感謝、謝罪、依頼を正しい言葉選びで伝えられる
これらは、どの学校でも共通して求められるしつけのレベルだと言えます。
その上で、一例をお伝えしますと、
宗教ありの女子校
キリスト教系の女子一貫校の場合、たとえば幼稚園で「所作が雑で物音をたてるようだと親が注意される」「ごきげんようなどのごあいさつの言葉使い」「送迎時のブーツとサングラスは禁止」など、親も子も求められるしつけやマナーのレベルは、たおやかさや落ち着き重視と言えます。
無宗教の女子校
比較的のびのびした校風の学校が多いですが、「平均台を使ったリレーをする」「スカートのままでろくぼくを上る、クマ歩きをする」など、所作や人目をいとわずに目標に向かい夢中になるたくましさがあります。
男子校
男子の中で切磋琢磨する環境なので、自立心があることに加えて「嫌なことをされたら言い返せる」ような勇気や「多少の困難も諦めずに挑戦する」など、しなやかで強い気持ちを求める傾向があります。また、都内の男子校2校はいずれもキリスト教教育であり、「思いやり」の心はとても大切です。
詳しい学校の特徴や学校選びについては、こちらの記事をご覧ください。
【ゼロから始める小学校受験】第5回 失敗しない学校選び「共学・男女別学・宗教系」のメリット・デメリットを知ろう
まとめ
子育てをしていると「これはしつけなの?」「自分は親としてどうなんだろうか」と不安になることが多々あるかと思いますが、しつけとは家庭内ルールを作ることです。それを年齢とともに見直していけばよいのです。
もちろん、ご夫婦で意見が異なることもあると思います。3歳くらいまでは合致していることが理想ですが、4歳以降は“夫婦の価値観の違い”が多様な世界の気づきとなります。ご家庭のしつけのルールを定めていかれることをおすすめします。
「子を思う親心」がしつけの出発点だと思います。愛情たっぷりの子育ての中に、今回のしつけのポイントを散りばめて、あっという間に大きくなってしまうお子さまの幼児期を、それぞれのご家庭で楽しんでいただければと願っています。
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SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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