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子育て

家と外で態度が違う!「子どもの二面性」の原因と解決策をプロがアドバイス

家と外で態度が違う!「子どもの二面性」の原因と解決策をプロがアドバイス

「二面性」という言葉はあまりいいイメージがないという方が多いかもしれません。とくにわが子となると、ドキッとしてしまうのではないでしょうか。そこで今回は「二面性がある子」をテーマに、そのパターンや注意した方がいいケースなどを、公認心理士である佐藤めぐみさんに解説していただきます。

子どもの二面性、よくある5つのタイプ

自分の子どもの二面性は、親としてとても気になってしまうようで、私の相談室でもお悩みとして持ち込まれることがあります。どのようなケースで悩むことが多いのか、タイプに分けて見ていきたいと思います。

タイプ1 家でダラダラ、外でしっかり
「家にいるときはだらしないのひと言。やればやりっぱなし、自分の好きなことだけやっている……。だから、つい小言が増えるし、イライラもしてしまいます。なのに学校では係もしっかりこなし、友だちの間ではリーダー的存在になっている」

タイプ2 家では反抗、学校では優等生
「私がちょっと注意すると、速攻反抗してきて、家では問題児。でも学校の成績はいわゆる優等生。とても同じ子とは思えない違いです」

タイプ3 家では元気いっぱい、外では貝のように
「家ではよくふざけるし元気いっぱい。むしろ活発過ぎるくらいだけれど、外に出ると、急におとなしくなってしまいます。足して2で割りたい」

タイプ4 いい子の知られざる顔が発覚
「親を困らせるようなことはこれまでなく、家では基本的にいい子。だけど、ある日万引きをしていたことが発覚し、もうどうしていいか……。親子で店に謝りに行きましたが、自分の育て方がいけなかったのだと責める日々です」

タイプ5 親には無愛想、友だちにはにこにこ
「親に対してまったく愛想がないし、ほとんど言葉を発さないけれど、部屋から聞こえてくる友だちとの会話ではケタケタと笑い声が聞こえる。もう少し親にもその明るさを向けてくれたらいいのに」

このように、二面性と言ってもさまざまですが、頻度として一番多いのは、タイプ1や2に見られる「家では問題児、外ではしっかり者」というケースです。あとは、タイプ3のような内弁慶タイプもよく聞きます。また、タイプ5は、思春期の子でよく見られるので、こちらも頻度としては多いと言えそうです。

二面性は必ずしも問題ではなく、見極めが大事

「二面性のある子」と聞くと、心穏やかではなくなるかもしれません。ましてや「わが子の二面性」となると、「なんとかせねば!」と思う方が多いようです。しかし、私たち自身を振り返ってみるとどうでしょうか? 家と外で顔が違うなんて当たり前ではないでしょうか?

「外だと穏やかな人で通っているけれど、子どもの前だと鬼のように怒ってしまう」
「家では肝っ玉母さん系、でも会社だと近寄りがたい雰囲気を出しているみたい」
「子どもには立って食べるなと口うるさく言うけれど、自分は立ち食いをよくやってる」

外向きの顔しか知らない人からしたら、「別人」と思われそうな言動、行動、態度を家の中でしている方は多いのではないでしょうか。逆に、家でも外でも1つの顔という人はいない気がします。

そう考えると、子どもたちだって二面性があって当たり前なのですよね。どこに起点を置くかで見え方は変わってくると思うので、まずは「二面性がある=問題」ではない、ということは頭に置いておいてほしいと思います。

しかし、そのままにしない方がいいケースももちろんあります。「二面性」という言葉に過度に敏感になる必要はありませんが、1つ1つのケースで問題が隠れていないかを見極めることはとても大事と言えるでしょう。

タイプ1や2の原因が「家で守るルールがない」場合も

「このくらいなら大丈夫」という二面性なのか、何らかの介入をした方がいい二面性なのかはケースバイケースですが、ここでは典型的なケースを使って、どんなところを見ていけばいいのかをお伝えしていきたいと思います。

たとえば、一番よく見られるタイプ1や2について。園や学校ではうまくやっている分、先生に相談しても「そうなんですか! 学校(園)ではしっかりやっていますよ。想像がつきませんね」「おうちだと自分らしく過ごせるんでしょうね」のような助言しかもらえず、どうしたものかと悩んでしまうことが多いようです。

たしかに家庭の中がホッとできる場所であることは、子どもたちにとってとても重要なことです。気持ちの拠り所であり、安全基地だと思えることで、子どもの心は健全に育まれます。しかし、のびのび過ごすことと、好き放題にやることは似て非なるものです。

タイプ1の「家でダラダラ、外でしっかり」もタイプ2の「家では反抗、学校では優等生」も、ダラダラや反抗が「おうちだと自分らしく」の範囲内なのか、それとも「明らかにひどいのか」を判断し、後者であればやはり改革していく必要があるでしょう。

たとえば、ダラダラして困るという場合。お悩みの多くは、「やることをやらないで遊んでいる」というものですが、「家庭の中に約束ごとやルールがそもそもない」というご家庭は案外多いものです。もしくは、その場その場で対応しているため、矛盾が出たり、一貫性に欠けたりして、「子どもが言うことを聞かなくて困っている」とご相談に来られるケースもよくあります。こういう場合、「学校ではちゃんとやっているんだから家でもできるでしょ!」と言ったところで、残念ながら事は改善しません。

・「やることをやる」ためのルールがないこと
・あったとしても、それが作用していないこと

はダラダラの大きな要因なので、そこの立て直しがカギになります。言うは易く行うは難しですが、生活リズムは親リードで導かないとなかなかうまくはいかないので、困るほどのダラダラであれば、できるだけ小さいうちにリズム改革をすることをおすすめします。

また、反抗がひどいという場合。甘えたい気持ちが満たされていないことで起きる反抗もあれば、強く出れば親が折れてくれるから反抗することもあります。背後にある理由が違えば、対処法も変わってくるので、反抗の要因をまずは分析することが大事でしょう。

一番注意したいのは「親の顔色を見て動く」タイプ4

今回ご紹介した二面性の事例の中で、一番要注意なのは、タイプ4のお子さんだと思います。もちろん1つ前でお伝えしたように、多少の二面性はあるものなので、ここで言うのは事例で出したような深刻なケースです。

「家庭でいい子」というのはよくても、「親の顔色を見て動く」というのはまた違います。その場合、親の威圧感だったり、期待だったりと、「うちの子をこうしたい」が非常に強くなってしまっていて、「親にとっての“いい子”でいないといけない」「機嫌を損ねるようなことをしてはダメだ」と顔色を見てしまうのです。親に自分ののびのびとした姿を見せていないのであれば、それこそ問題のある二面性になってしまいます。

事例のような万引き、あとはテストでのカンニングなど、親がイメージしているわが子とはかけ離れた問題行動が見られた場合、どこかに無理が行っていることが多いので、親の接し方を見直すきっかけにし、改善を図っていくことが求められます。
まずは、
・子どもを圧迫する過管理がないかを改めてチェックする
・期待値を高めることが逆効果になっている現状に気づく
・アンガーマネジメントを取り入れ、感情のコントロールを磨く

と自らの改革に着手していきましょう。

そして子どもとの関わりの場面では、
・食事の時間などを活用し、温かみのあるコミュニケーションを意識的に行う
など、子どもが「自分はどんな時も受け入れられている」という感覚を持てるよう心がけていきます。

「いい子に育ってほしい」と思うあまり、子育てに力が入ってしまうのですが、その力を緩めた方が結果的にいい感じに回ることは多々あります。子どもの隠れた顔に悩まないためにも、自分が過管理になっていないか、操作的になっていないか、今一度チェックしてみてください。

以上、さまざまな二面性に触れてきましたが、基本的には二面性はよくあることなので、自分に置きかえてみて、想定の範囲内であれば深刻に捉えなくて大丈夫です。ただ、親の接し方が緩すぎる場合や厳しすぎる場合に問題化することが多く、それが親からすると“二面性のある子”に見えてしまうことがあるので、やはり緩すぎず、厳しすぎずのバランスが大事と言えます。

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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