東京/慶応教授が語るAI時代の教育~今、求められる小・中・高・大学の教育改革~
東京ビックサイトで行われた第10回教育ITソリューションEXPOより、東京大学/慶応義塾大学教授 鈴木寛氏による「AI時代の教育~今、求められる小・中・高・大学の教育改革~」の模様をお届けします!
東京大学教授、慶應義塾大学教授、社会創発塾塾長。Teach for All Global Board Member、元・文部科学副大臣、前・文部科学大臣補佐官。「どんな家に生まれても、どんな地域育っても、すべての子ども・若者の最善の学びを」をライフワークに、希望者全員奨学金、高校無償化、高等教育無償化、幼児教育無償化政策実現など、学習権の保障・充実に尽力している。
目次
日本の15歳はトップクラスに返り咲いた!
メディアでは、日本の子どもたちの学力低下ばかりは報じられていますが、実際は違います。日本の15歳の学力は2000年代に低迷するも、2012年以降世界トップクラスに返り咲いているんです。2015年の調査によると、OECD加盟国35ヵ国において科学的リテラシーは1位、読解力は6位、数学的リテラシーも1位です。日本の15歳は金の卵なんです。才能が開花すれば、未来の日本はAI時代をリードできると私は確信しています。ですから、この子たちをちゃんと伸ばせるよう、高校大学の改革にも国は力を入れているのです。
英語はさらに「話せる」を強化!
英語においては、まだまだ話す部分が足りていないのが現状です。英語の「聞く」「話す」は若ければ若い方が早く習得できますから、学校教育でも強化しいきたいと思っています。
とはいえAIの自動翻訳技術はかなり進んでいますから、日本語で論理的な文章が書ければいいんです。結局、何が一番大事になってくるかというと、母国語でもよいので、リアルタイムのネゴシエーションや、ディスカッション、プレゼンテーションできるか。気持ちを相手に伝えられる子です。
求められるのはAIでは解けない難問と向き合う力
今の世の中は、ものすごい勢いでイノベーションが起きていて、産業革命、市民革命からはじまった近代を卒業して、250年ぶりの大転換期だと言われています。そんな22世紀を作り、生きる子どもたちの土台を作るにはどうしたらいいか、が私たち大人の命題です。
例えば、AIが台頭すると、今ある仕事の半分はなくなると言われていますよね。今の小学生が大人になる頃は、彼らの6割が今存在しない仕事につき、誰もが起業家になる時代です。東日本大震災で、片田教授がマニュアルにとらわれない教育をしてきたおかげで、99.8%の子が生き残ったという「釜石の奇跡」をご存知でしょうか。これからの時代を生き抜くためには、こうしたさまざまな予測不能の世の中のリスクをどう考えていくかが大切です。
求められる能力や資質としては、データサイエンスが不可欠でしょう。慶應義塾大学のSFC研究所では情報を入試科目にしていますし、小学校ではプログラミング学習も導入されます。言われたことをするのはAIに任せればいいんです。人間には、AIでは解けない難問と向き合う力(意思、五感、感覚感性、過去にない価値の創造、責任を取る、想定外の修羅場と向き合い乗り越えられる力。PBLの重視)が問われます。
脱指示待ち人間になろう!
2020年より、小中高校にアクティブラーニング制度が導入されます。これは、一言でいうと「脱指示待ち人間になろう!」ということです。科目に関しても、高校では「理数探求」、「総合探求」という新たな科目が入り、社会に関しても歴史はこれまでの暗記科目ではなく、先人たちの苦闘を学ぶ「歴史総合」になり、近現代史が中心に。地理も世界で苦悩する人から学ぶことを取り入れるなど、学習内容も変化していく予定です。
マークシートから記述式の試験になるわけ
加えて、大学入試に関しては40年ぶりに、入試をマークシートから記述式導入に変えました。1文字を書かなくても国立大学に入れてしまう場合もあるという今の制度を、思考力を問うテストに変えます。理由としては、閉じられた学問ではなく社会に存在する問題に対して、学問が有効に機能することが大事だと考えたためです。
重箱の隅をつついて消去法で説くマークシートは減点主義であり、記述式は加点主義です。
都会の子はこれを小さいときから10年もやっているから、日本はクレーマーが多くなったのではないかと私は思っています。20世紀はこれでよかったのですが、これからは脱正解主義の時代です。荒けずりでもいいから、逆提案できる子を育てたいですね。
また、大学でもAO推薦入試を3割以上導入しますから(筑波大学は5割の予定)、高校では探究活動や課題活動が大事になってくるでしょう。
こうした改革が、私たちが目指す教育の目的です。今ある課題をひとつずつクリアしながら、子どもたちには22世紀を生きるためのスキルを身につけてほしい。そんな新しい日本人を、新しい世の中を作ってほしい。人間の可能性を予感し、近い将来実現できるであろうと実感しています。
いかがでしたか。「日本の教育は世界で後れを取っていまっている」と言うイメージを払拭させてくれるようなポジティブな言葉が新鮮でした。“日本の未来を担う15歳の金の卵たち”をどう伸ばすかが、私たち大人の課題ですね。
SHINGA FARM(シンガファーム)編集部が執筆、株式会社 伸芽会による完全監修記事です。 SHINGA FARMを運営する伸芽会は、創立半世紀を超える幼児教育のパイオニア。詰め込みやマニュアルが通用しない幼児教育の世界で、毎年名門小学校へ多数の合格者を送り出しています。このSHINGA FARMでは育児や教育にお悩みのご家庭を応援するべく、子育てから受験まで様々なお役立ち情報を発信しています。
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