幸福感が高まる研究結果も。ヨーロッパに学ぶ“個を大事にする子育て”とは
筆者のヨーロッパでの生活も17年目。その間に妊娠、出産、子育てを経験しました。
今回は、育児コンサルタントとしてだけでなく、母親としても気づかされた、「ヨーロッパ流・個性を伸ばす子育て」の魅力についてお伝えしていきます。
目次
人との違いを楽しみ、センスに生かす
以前、我が子がフランスの小学校に通っていたとき、ポケモンカードが大流行しました。
このようなブームは、日本と同様にフランスでも、「みんなが持っているからぼくもほしい」となります。
しかし、全てみんなと一緒がいいかというとそうではなく、大人も子どもも、人と違うことをよしとして、それを上手にアピールしていることに気づきます。
たとえば、フランスの学校には制服がありません。
それぞれ似合うものも好きなものも違うという考えがあるためです。通学風景を見ても、親子ともに、自分の体形や肌、髪、目の色などにあったものを身につけているのがよく分かります。
あるブランドのある商品がどんなに流行っても、「自分に似合わなければ要らない」と捨てられる潔さがあるのです。
日本はマルチプレイヤー、欧米はスペシャリスト
この潔さは、子育てにも反映されています。
欧米全般に言えることだと思いますが、子育てや教育では、苦手なものを克服する以上に、得意なものを伸ばすことを大事にしていて、「強みを伸ばすこと」に重きが置かれています。
何でもできる“いい子”に育てるのではなく、その子にしかできないことを引き出す目線を、親と教師、双方が持っているのです。
親のみならず、教師も、というのがポイントで、学校の個人面談では、その子の強みや得意なことを中心に話が展開することが多く、それにより親も客観的に我が子のどこを伸ばせばいいのかに気づくことができるのです。
一方の日本はというと、「ほめて伸ばそう」「良いところを見つけよう」と思いつつも、どうしても苦手克服や弱み解消の方に力が入れられがちです。
これは、日本人の持つ「相互協調的自己観」というものが影響しているように思われます。
この自己観は「人と協調できている自分」をよしとする傾向のことで、和の文化で育った私たちは、周りの人と協調できている状態を好みます。
だから、苦手や弱みなどで「枠から外れている」と感じると、みんなと同じ枠に入ろうという心理が働きやすいのです。
両者を比べると、日本の育児は“マルチプレイヤー“を求め、欧米は”スペシャリスト“を求めている、という違いがあるといえるでしょう。
その子の強みを引き出して、個性を生かした子育てを
苦手や弱みに焦点を当てた場合、うまく克服できればいいのですが、ときにその過程で強く叱ったり、子どもの心を傷つけたりして、全体のモチベーションまでも下げてしまうことがあります。
その点、強みを引き出すアプローチは、その子の個性を尊重しているため、ポジティブなスパイラルが起こりやすく、デメリットが見当たりません。
具体的な例で示すとこうなります。
A子ちゃんが、
恥ずかしがり屋(=親が思う弱み)だが、協調的(=親が思う強み)な性格の場合、
A子ちゃんのシャイな部分を親が四苦八苦して変えようとするのではなく、すでにある協調性を生かして友だちの輪を少しずつ広げていき、やがてクラスに馴染んでいく、これが強みに特化したアプローチです。
ここでは「苦手なことはあって当然」と受け入れることがポイントになります。最近の心理研究でも、強みを伸ばすと幸福感も高まることが立証されていますので、おすすめできるアプローチの1つといえるでしょう。
育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/