発酵食品で家族の免疫力アップ! ウィルスに負けない体を作る“菌活”のすすめ
ウィルスの流行により、今まで以上に免疫力の向上が必要と考えられています。なかでも、納豆やヨーグルトなどの発酵食品に注目が集まり、スーパーなどで売り切れる現象も。ウィルスに負けない体を作るためには、どのような発酵食品を摂ればいいのでしょうか。麹料理研究家としても活躍されているおのみささんに、発酵食品の世界について語っていただきました。
おのみさ さん
麹料理研究家/イラストレーター。味噌作りをきっかけに麹菌の世界にハマる。2010年『からだに「いいこと」たくさん 麹のレシピ』(池田書店)を出版後、『麹巡礼』(集英社)、『おのみさの麹のよさを200%引き出すアイデア帳』(KADOKAWA)など、麹関係の書籍の累計発行部数は35万部! 2020年5月に初のコミックエッセイ『ゆる菌活』(パイインターナショナル)を発売。ブログ『糀園』(https://koujieeen.exblog.jp/)にも麹のレシピなどを掲載中。
目次
発酵食品にハマってからアトピーの症状が軽くなり、快便・快眠・快食に
__おのさんはどういうきっかけで発酵食品にハマったのですか?
10年ぐらい前にお味噌を手作りしたのが最初だったんですけど、麹菌の生きている感じが面白かったし、食べたら美味しいし、体にも良いしみたいなところでどんどんハマって行きました。
私の体感でいえば、発酵食品をアレコレ食べる前と今とでは、1割くらい元気になった気がしています。風邪も、まったくとは言いませんが、あまりひきません。もともとアトピー持ちでけっこうひどかったんですけど、デコルテにできてた謎のブツブツが自然と消えていったり、肌の痒みもカサカサもできづらくなったりしました。以前は便秘だったし、寝付きが悪いこともありましたが、いまは快便・快眠・快食で過ごせています。
味噌、チーズ、納豆、ワイン、かつおぶしetc.世界中に数多くある発酵食品
__まずは発酵食品について教えてください。
発酵食品は味噌、パン、ヨーグルト、チーズ、納豆、お漬物、かつおぶしなど、身近なところにいろいろあります。ワインやキムチもそうですし、日本に限らず世界中で食べられています。アジアの他の国にも甘酒があったりとか、納豆のようなものがあったりもするそうです。
発酵とは乳酸菌などの微生物が、人間にとって良い働きをすることです。茹でた大豆に塩をかけてもそんなに美味しいと思えないけれど、麹菌により発酵させると美味しい味噌になります。
__発酵食品にはどんな菌が含まれているのでしょうか?
醤油、味噌、みりん、お酢、お酒などの調味料は麹菌からできています。ヨーグルトやお漬物は乳酸菌、ビールやワインなどのお酒は酵母菌、お酢は酢酸菌、納豆はそのまま納豆菌などです。同じ乳酸菌でもいろんな種類がありますので、発酵食品の菌は数えきれないほどあると言えます。
発酵食品に含まれる善玉菌が腸内で増え、免疫スイッチを押す!
__発酵食品が腸内環境を整えてくれると言われていますが、それはどういうことですか?
腸内には善玉菌、日和見菌、悪玉菌の3種類の菌がいます。その中で一番多いのは日和見菌で約7割を占めています。日和見菌は善玉菌が増えると善玉菌の味方をし、悪玉菌が増えると悪玉菌の味方をして病気などをひきおこす原因になります。発酵食品に含まれる菌は善玉菌ですので、発酵食品を食べると善玉菌が増え、病気にかかりにくくなります。日和見菌は優勢になった方に行くので、常に善玉菌を多く保てるようにしておきたいですね。
__腸内の善玉菌が増えると免疫力アップにつながるのでしょうか?
大学の先生に聞いた話ですが、人間の腸内には、何種類もの免疫スイッチと言われるものがあるそうです。このスイッチが押されると、腸内だけではなく、全身の免疫系に作用するそうです。たとえば花粉症は免疫の暴走ですから、その暴走をとめて、免疫がきちんと働くようにうながしたりします。これが、免疫力が上がるということだそうです。
酢酸菌、酵母菌、麹菌などの善玉菌が免疫スイッチを押せるので、増やした方が健康維持につながるということになります。
いろんな発酵食品とバランスの良い食事、睡眠、運動を
__アラフォー世代のパパやママが摂ったほうがいい菌はありますか?
甘酒は、体内では合成することができない必須アミノ酸(細胞やホルモンなどを形成するもの)が摂れたり、ブドウ糖がたっぷり含まれているので脳が活性化してやる気や集中力が増したりします。健康維持に必要なビタミン群が多量に含まれているので、男性にも女性にもいいと思います。
あと女性でしたら、加齢と共に女性ホルモンが減っていくと言われていますから、豆乳ヨーグルトもいいかもしれません。私も毎朝、甘酒と豆乳ヨーグルトを食べています。
__1日の食事の中でどのように入れていくといいのでしょうか?
私は医者ではないので、食事療法的な詳しいことはわかりませんが、それぞれの生活の中で、無理なくいろんな種類の発酵食品を食べればいいと思います。朝食が和食なら納豆を加えるとか、洋食ならヨーグルトを足してみるとか、そのくらいでいいと思います。ただ、身体にいいからと言ってあまり摂りすぎると、人によってはお腹がゆるくなることもあるようなので、何事もほどほどがいいですね。
いろんな種類の発酵食品を食べ、そしてその善玉菌のエサになる食物繊維をとることが大事だそうです。発酵食品以外もバランス良く食べ、よく寝て、適度な運動をすることが何よりだと思います。
いろいろ使えて便利な「塩麴きのこ」、夏場には「ブルーベリー甘酒」もおすすめ
__発酵食品を利用した簡単なレシピがあれば教えてください。
塩麴は、料理に使いやすいと思います。唐揚げを作るときに下味に塩麴を使うと、冷めても美味しいので、お弁当のおかずにも良いです。
3種類ぐらいのきのこをさっと茹で、熱いうちに塩麴をまぶしておくだけの「塩麴きのこ」も常備菜におすすめです。塩麴の塩味と旨味、きのこ自体がもつ旨味がプラスされて美味しいですよ。卵焼きに入れたり、味噌汁やスープの具にしたり、うどんやそばにのせたり、パスタの具にしたり…と、いろいろ使えて便利です。冷蔵庫で1週間ぐらい保存できますが、次第に酸味が出てきますのでその点は注意してください。
これからの季節には、甘酒と冷凍のブルーベリーを一緒にミキサーにかけた「ブルーベリー甘酒」もいいのではないでしょうか。シャーベットのように食べるのもいいですし、手作りの甘酒を使うと濃厚でこってりした感じになると思うので、それを炭酸や牛乳など、好きなもので割って飲むのも美味しいです。ブルーベリーだけでなく、他のフルーツでも合うと思います。
__たくさんある市販の発酵食品の中から選ぶときのポイントはありますか?
市販のものは、菌を不活性にしているものがほとんどなので、例えば味噌なら味噌が呼吸できるような小さな穴があいてあるようなもの、キムチなら時間がたつと袋がパンパンに膨らむような、生きているものを選ぶのがおすすめです。でも不活性の菌でも、腸内の善玉菌がすくすく育つための必要なものがたくさん含まれているので、あまり気にしなくてもいいと思います。
ヨーグルトや乳酸菌のドリンクなども種類が多すぎて悩むと思いますが、市販品に含まれている乳酸菌は、たくさんの乳酸菌の中から選ばれた超エリートな菌ですから、自分の体調にあったものを選ぶといいと思います。
基本的に私は、市販品で買うのは納豆ぐらいで、他のものはほとんど手作りしています。初心者の方でも、塩麴、醤油麹あたりは簡単に作れます。とくに醤油麹は醤油と麹を混ぜるだけです。醤油麹にゆで卵を漬けると味付き卵になりますし、水切りしたお豆腐を漬けておくとちょっと発酵してチーズっぽい味になってお酒のおつまみにもなります。お好みでニンニクや生姜を入れておくと、カツオのたたきなどにピッタリです。
美味しくて体に良い発酵食品を、少しだけ意識して食べてみて
__最後に、これから菌活を始めるパパママたちへアドバイスをお願いします。
「何を食べるのが一番効果ありますか?」というようなことをよく聞かれるのですが、発酵食品は薬ではなく、ただ美味しくて身体に良いという食品です。あまり難しく考えたり、頑張って食べ続けようとしたりせず、でも少しだけ意識をして、納豆やヨーグルトなどの身近な発酵食品を食べるようにしてみてください。そして少し余裕があれば、お子さんと一緒に塩麹を作ってみたりしてみてください。時間によって発酵していく様子を見るのも、また実験みたいで楽しいと思います。
おのみささんの新著『ゆる菌活』が好評発売中です!
「どうしたらみんなが菌と仲良くなれるのかと考え、それぞれの菌をキャラクター化して、性質や役割をわかりやすく、ペットを飼うように楽しく菌と付き合えるように、マンガっぽく描いてみました。あとは“この発酵食品を作って食べたら、こんなに良いことがたくさんあるんだな”と思える効果もたくさん載せています。この本を読んで、みなさんが菌ちゃんたちと友達になれたらとても嬉しいと思います。」
『ゆる菌活』 https://pie.co.jp/book/i/5291/
おのさんの菌愛が伝わってくるお話はいかがでしたか。筆者宅でも3年前から子どもと一緒に手前味噌作りをやっています。今後も家族の健康のために、菌活を続けていこうと思います。