【フランス】子どもから大人まで集まる夏至の音楽祭「フェット・ドゥ・ラ・ミーュジック」とは

【フランス】子どもから大人まで集まる夏至の音楽祭「フェット・ドゥ・ラ・ミーュジック」とは

毎年6月21日の夏至の日、「フェット・ドゥ・ラ・ミーュジック」と呼ばれる音楽祭がフランス全土で開催されます。アマチュアからプロまで、楽器を持っている人であれば誰でもどのようなジャンルの音楽でも演奏できるという毎年の恒例行事です。今回はフランス初夏の風物詩である「夏至の音楽祭」についてご紹介します。

屋内外であらゆるジャンルの音楽イベントを無料開催

1年で最も昼の時間が長い夏至の日、フランスの街を歩くと、ギターやトランペット、ピアノ、ドラム、バイオリンなどのさまざまな音色があちこちから聞こえてきます。この日のフランスでは毎年国を挙げて無料の音楽祭が開催され、1日を通して国中が音楽に包まれるのです。
楽器を持っていれば場所を問わず演奏することが許され、市民は彼らの演奏を無料で楽しむことができます。ジャズ、クラシック、ロック、シャンソン、テクノ、ポップ、ラップ、民族音楽などジャンルは多種多様で、駅や広場、路上、カフェ、教会など、屋内外のあらゆる場所が演奏会場に変身。学校や美術館、病院、さらには刑務所などでも実施されます。街中に響き渡る音楽に合わせ、道行く人々も歌い出したり踊り出したりと、終日にわたって心から音楽を楽しみます。

このように、「夏至の音楽祭」とは特定の場所でプログラム通りのコンサートを行う催しではなく、誰でもどこでも自由に演奏したり聴いたりして音楽を楽しめるお祭りなのです。毎年この日はフランス全土で数えきれないほどの音楽イベントが無料で開催され、仕事や学校が終わる夕刻になると、街は一気に盛り上がりを見せます。

屋内外であらゆるジャンルの音楽イベントを無料開催

文化省の後押しで1982年にスタート

夏至の音楽祭が始まったのは、今から40年以上も前の1982年のこと。当時、フランス文化省が行った「国民の文化的習慣」にまつわる調査によると、フランス国民のうち「500万人が楽器を演奏している」という事実が明らかになりました。しかし、このうち音楽イベントなどで演奏できる人はほんの一部に限られ、多くのミュージシャンは活動機会がなかったのです。

そこで、すべてのミュージシャンが自己表現できるような一大イベントを開こうと、当時の文化大臣ジャック・ラング氏が1981年に提案したのがこの音楽祭。人々が音楽を身近に感じて市民間やコミュニティ間のつながりを深めることや、芸術的または文化的活動を促進するといった目的でした。作曲家のモーリス・フルレ氏が責任者に就任し、「音楽はどこにでもあるが、(計画された)コンサートはどこにもない日」とのコンセプトで企画しました。

こうして、ジャンルや発祥地などにとらわれず「あらゆる音楽を楽しむ1日」としてスタート。開催日に夏至の日が選ばれたのは、「北半球では1年で最も昼時間が長い象徴的な日だから」という理由からだそうです。

文化省の後押しで1982年にスタート

ブームとなって欧州中心に世界120カ国へと拡大

第1回目の音楽祭当日、フランスでは何千もの音楽イベントが行われ、ミュージシャンたちは夜遅くまで、街の至るところで音楽を楽しんだといいます。音楽祭の準備を進めるなかで、フランス文化省は当初こうした試みが受け入れられるのかどうか見当がつかなかったそうですが、その心配は杞憂に終わりました。

こうして初回に大成功を収めた夏至の音楽祭は、その後毎年開催される国民的行事となったのです。音楽祭のムーブメントはさらにフランス国外にも広がり始め、あっという間にヨーロッパを中心に世界中で開催されるイベントに発展。現在は120カ以上もの国々が、夏至の日を中心に自由な音楽イベントを開催しています。

まとめ

夜9時頃まで日が沈まない夏至の日に音楽祭が開催されると、フランスの人たちは本格的な夏の訪れを感じて心が躍るそうです。最近は日本でも夏至に音楽祭が開催される場所があるので、機会があれば夏の幕開けを音楽とともに楽しんでみてはいかがでしょうか。

執筆/Mariko Dedap

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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