小学生も悩む「友達依存症」の特徴や解決策を解説!診断チェックあり!
生まれてからの数年は親にべったりだった子どもたちも、成長とともに人間関係を外に広げていきます。その中でどんどんと大きくなるのが友達の存在。
プレ思春期である小学校半ばあたりからその傾向が強まり、思春期にはさらに友情が重要なものになります。これは、ごく自然な成長ですので心配は要りません。でも中には、過度に友達に依存してしまう子も……。ここでは、問題となりうる友達依存症とはどのようなものなのか、その要因と解決策を解説します。
目次
友達に依存するってどういうこと?
成長とともに、子どもたちは親から少しずつ自立し、子ども同士の絆を深めていきますが、中には過剰なまでに友情に執着する子もいます。
<友達依存度チェックシート>
1. トイレに行く時、登下校する時など、どこに行くのも一緒を求める
2. 1が叶わないと、不安になったり不機嫌になってしまう
3. 「私たちは親友だよね」と友情を確認したがる
4. 相手の行動を知りたくてSNSをチェックしその内容を見て落ち込むことがある
5. 人間関係の構築のバランスが悪いため、実際には親友と呼べるか自信がない
6. 相手にしつこくつきまとってしまうことで、引かれてしまう
7. スマホでの友達とのつながりに必死なところがある
8. コミュニケーションを追うのに疲れているのにスマホを手放せない
9. SNSやグループでの会話に縛られている感じがする
10. グループから外されることに恐怖感がある
11. 自分で何かを決めることが苦手で、友達に決断を委ねる
友達依存症は医学的背景があるものではなく、友達に依存し過ぎる様子につけられた呼称なので、明確な基準があるわけではありません。
でも上記のうち偶数番号に3つ以上〇がついた場合は、その傾向が高まりつつあると言えます。もしすべて当てはまる場合は友達にかなり依存している状態と思われます。
お互いがこのような状態であれば「共依存」※ということになりますが、中には片方が強く依存し、もう片方は依存される側という場合もあります。その場合、依存される側は、
● 「一緒にいたい」という意向を断りにくい
● 他の友達と遊びたくても嫉妬されてしまうのでできない
など、その子の交友関係の幅にも影響してしまう点が問題です。
本来、友情と言えば、喜び、楽しみなどのポジティブな感情が伴いますが、それとは相反する不安や嫉妬、焦りなどのネガティブな感情がつきまとうのも依存傾向の特徴と言えます。
※共依存についてはこちらの記事もご覧ください。
・親子の共依存とは?特徴と抜け出すための解決策を解説
友達依存症の背景にある3つの要因
先述したように、プレ思春期や思春期の子どもたちが、友達が大好きな状態になるのはごく普通のことであり、望ましい成長でもあります。
でも極端になると問題で、次のような状態だと、友達に依存したくなる思いが強まると考えられます。
その1 家庭での居心地がよくない
人間はもともと群れで生活する生き物ですから、よりどころとなる場所や愛着を示せる相手を強く求めています。
もし「家に誰もいない」「いても大切にされていない」「きょうだいをひいきする」「怒られてばかり」「親がケンカばかりしている」「厳し過ぎる」「期待が高過ぎてプレッシャーが強い」というような状況では、「どこか他の居場所はないか」と求めたくなるのも自然な思いと言えます。友達が救いになっている場合、そこに多くを求めていくことになりがちです。
また、親子関係が望ましい関係でない場合、そこに至る過程でその子は人間関係を作るノウハウを教えてもらっていない可能性もあります。
群れの最小版とも言える家族は、子どもにとっての人間関係のお手本になりやすい点でも影響しうるわけです。
その2 交友範囲の視野が狭い
別の視点では、子どもたちの視野の狭さも関係していることがあるでしょう。10歳と言っても、まだ社会全体を見て行動できるわけではありません。
視野が狭いために、「ここに所属していなければ大変なことになる」と感じやすいのも友達依存症になる要素として挙げられると思います。
その3 日本人特有の「一緒じゃないと不安」
さらに心理学的な話をすれば、日本人の「相互協調的自己観」も関係しているかもしれません。
この「相互協調的自己観」をわかりやすく言うと、「他者となじんでいる」「みんなと上手くやっている」と感じると、「自分は価値ある人間だ」と思える、そんな自己観です。
輪になじめていると居心地のよさにつながりますが、裏を返せば、「一緒じゃないと不安」「自分だけ浮いていないか」という目線にもなりやすいとも言えます。
友達依存症が進むと「自分探し」を妨げてしまう可能性も
心理学者のエリクソンが提唱したライフサイクル理論では、人生を8つの発達段階に分け、12~22歳を青年期としています。
それぞれの段階でクリアすべき課題があるのですが、青年期の課題は自我の確立です。「自分は何者なのか」に対する答えを見つけていく自分探しの時期ということです。
その過程で、友達の意見や発想、物の見方、やっていること、持っているものなどの大きな影響を受けながら、「ならば自分はどうなのか」を定めていきます。そういう意味でも、同年代の仲間の存在は重要なのです。
しかし、あくまで“主人公は自分”です。誰かが自分の人生を支えてくれていることはとてもいいことではありますが、「この子がいないと生きていけない」「このグループがなかったら人生意味がない」とまで思うようになると、“友達ありき”の人生になってしまうため自我の確立も危うくなってしまいます。
ライフサイクル理論については、こちらの記事でも解説しています。
・女子は8〜9歳から始まる子も!小学生の思春期と親の接し方を解説!ココロ編・カラダ編
親ができる子どもの友達依存症の解決策5つ!
ポイント1 家庭が安全基地になるよう意識する
家庭の居心地に問題を感じる場合は、その改善に努めましょう。直接話すとすぐケンカになる場合は、子どもの好きなごはんを意識的に夕食に盛り込むなど、間接的な関わりからスタートする方が始めやすいです。
ポイント2 親子の会話を増やす
友達に依存している子は、家にいても部屋に閉じこもってスマホで友達と話していることも多いので、なかなか親子の会話にならないかもしれませんが、できるだけ会話を増やしていきたいものです。
その際、友達づき合いのことを悪く言ってしまうと、さらに距離ができてしまうので、まずは親子の関係性をよくすることを心掛けてみてください。
ポイント3 小さなことから決断経験を増やす
友達に依存する子は自分で何かを決めることが苦手な傾向があります。日ごろから自分で決める経験を取り入れていきましょう。
決断と言っても志望校を選ぶといった大きな決断ではなく、何を食べるか、何を着るか、何を持って行くかなど、小さなイベントでまずは十分。自分で決める感覚がいい経験だと感じられれば、それが自信につながっていきます。
ポイント4 新たな体験をしてみる
特定の友達と仲良くなると、世界が狭まることは多いものです。それにより、新たな経験が不足することもあるでしょう。
習い事でも、単発のイベント(ボランティア活動や自治体の体験型ワークショップなど)でもいいので、新たな世界で視野を広げていきましょう。
ポイント5 人を助ける経験をする
少しハードルが高いかもしれませんが、人助けはとてもプラスに作用します。他者を助けることで、自分の価値を実感しやすくなるからです。親子でボランティア活動に参加するのもいいアイデアです。
親から見ると「友達に依存し過ぎ」と映る子でも、本人は問題だと思っていないことが多いので、もしそれをそのまま指摘してしまうと怒りを覚える子もいます。「依存はダメ」と真っ向勝負してしまうと逆効果なので、少しずつ進むつもりでサポートしてあげてください。
「自分で決められない子ども」原因と必要な経験、親の接し方
ネット依存の今どき子育てでハマりやすい落とし穴
育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/