子育てしながら共働きがしやすいドイツ!育児は生活の一部として夫婦で共有
ドイツでは育児休暇後も出産前と同様の雇用契約が適用され、約45%の女性が出産1年後に職場復帰をしています。
そのため共働きは当たり前とされているものの、やはりパートナーとの家事育児分担は不可欠です。ドイツの共働き夫婦がキャリアを保ちつつ、どのように家族との時間や自分たちが楽しむ時間を確保しているのか、彼らの生活スタイルを通じて紹介します。
目次
夫婦合わせて約3年間の育児休暇取得が可能
ドイツの育児休暇は夫婦合わせて約3年間取得できるうえ、職場に戻った女性が社会的地位を失わないように法律で守られています。
ただ、仕事をこなしながら育児や家事を両立していくには、やはり夫の協力が必須です。
出産後に母親が職場復帰し、代わりに父親が育児休暇を取るケースもドイツでは珍しくありません。3年間の育児休暇は両親で共有できるため、交代で取ることも可能なのです。
男性が育児や家事の主軸となることで父親としての自覚や自信が強まるうえ、育児の知識と経験が身に付き、その後長期間にわたる子育てによい影響を与えると言われています。
また、育児休暇が終わり共働きの状態になっても、ドイツでは家事や育児が女性の仕事という認識はほとんどありません。家事はタスクとして分担し、育児は生活の一部として夫婦で共有し合うことが基本です。
夕食を軽く済ませる食事スタイルで時間とストレスを軽減
家族の健康のために新鮮で栄養価の高い食材を使い、でき立ての温かい食事を複数品作るのが理想とされる日本とは異なり、ドイツでは独自の食習慣があります。
それは「Kaltes Essen (カルテス エッセン)」と呼ばれ、「Kalt=冷たい・Essen=食べる」の意味。夕食は簡単に済ませる食事スタイルで、現代でも日常化しています。
バター、チーズ、ハムやサラミはドイツの一般家庭では常備されているため、忙しい日やとくに食べたいものがない日は、各自がパンにそれらを好きなだけ乗せて食べます。
パンの種類も豊富ですが主にライ麦や全粒粉などで作られたBrötchen(ブローチェン)と呼ばれる固いパンが人気で、かぼちゃやヒマワリの種が入った健康的な種類のものが好まれます。
カルテスエッセンを取り入れることにより、「買い物」「料理」「後片付け」にかかる時間とストレスが大幅に軽減できます。
ドイツ在住で共働きの筆者も、子どもたちの習い事などがある忙しい日にはこの食事スタイルを取り入れたところ、ストレスがかなり減りました。
夕食の時間は仕事や学校、保育園から帰った家族が唯一揃って過ごせる貴重な時間。ドイツでは仕事で疲れてイライラしながら夕食の準備をするよりも、簡単に済ませる手法で家事の負担を減らし、子どもとコミュニケーションを取る時間を増やすことのほうが重要と考えられています。温かい食事を作る場合は、両親のうち料理が得意な方や時間がある方が用意するのがドイツ流です。
掃除代行人への「外注」はごく一般的
料理や掃除、洗濯以外にも“名もなき家事”は山のようにあり、とくに子どもがいる家庭ではたとえ夫婦で分担しても時間が足りません。そういった家庭でよく利用されているのが、掃除代行です。
ドイツではフリーランスとして掃除代行を請け負ったり副業にしたりしている人が多く、掃除業者に頼まなくても簡単に個人契約が可能です。
金額も安く、日程調整も直接話し合って決めることができます。日本では掃除代行を頼むといえば裕福層を想定しますがドイツではごく一般的で、「外注」は病気やケガ、妊娠中などの動きづらいときにもよく利用されています。
ドイツ人は気軽に依頼し合える関係づくりが得意
「外注」は、子育ての場面においても同様です。ベビーシッターを雇ったり、子どもの保育園や学校の送迎を頼んだり、数時間預かってもらったりなどは、共働き家庭にとってはごく当たり前なことと言えます。
忙しいときだけでなく、子どもを預けて夫婦で食事に出かけたり、自分の時間を作ってリフレッシュしたりすることも重要とされ、ごく普通に行われています。
ベビーシッターだけでなく、友達や近所の人の手を借りることも躊躇しないのが、ドイツ人の強みです。「子どもを預かってもらうからお礼をしなくては」とは考えずに、「困ったときはお互いさま」との発想で、気軽にサポートを依頼します。
また、「こんなことお願いしたら迷惑かな…?」と迷うことなく頼めるのは、「できない、したくないことは正直に断る」というドイツ人の考え方があるからではないでしょうか。信頼できる人との関係を築くこと、積極的に育児のサポートをし合うこと、一方で無理な頼み事や頼まれ事はしないスタンスを取ることが、柔軟にお付き合いできるコツのようです。
まとめ
育児休暇や雇用契約など法律で定められていることは無理でも、ドイツの事例のなかには日本の共働き家庭で取り入れられることもありそうです。
「仕事との両立をこなす方法」を探すよりも、「タスクを減らす見直しをする」ことによって、家族と過ごす時間や自分の時間を生み出せるかもしれません。
執筆者/ドレーゼン志穂
世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。