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「子どもの留守番」が課題のドイツ、看護休暇制度で共働き家庭を応援

「子どもの留守番」が課題のドイツ、看護休暇制度で共働き家庭を応援

近年のドイツでは共働き家庭において子どもをひとりで留守番させるケースが増え、子どもの安全をどう確保するのかが大きな課題となっています。海外では子どもの留守番について法律で厳しく規制されている国もありますが、ドイツでの規則や回避するための対策について紹介します。

「親は子どもの監督義務を果たす」ことが最優先

親は子どもの監督義務を果たす」ことが最優先
生活全般にわたりなにかと法律や規則で定められたことが多く、固いイメージのドイツですが、実は「子どもを一人で留守番させること」については具体的な年齢制限が法的に設定されていません。

その理由の一つとして、「固定的な年齢制限を設けることは適切ではない」との考えが挙げられます。子どもが何歳であっても、親はその子どもの成熟度や独立性を考慮し、留守番をさせるかどうかを判断するというものです。

その代わりにドイツでは、「親が子どもの監督義務を果たすこと」が法律で強調されています。親が子どもの利益を最優先に考え、子どもの成長のために必要な監護(=子どもの世話や安全を守ること)と教育を行わなければならないという内容です。

この法律は、親が自分の都合ではなく、常に子どものために最善を尽くすよう求めており、もし親がこういった義務を怠った場合、法律で罰せられることもあります。たとえば子どもを危険な状態に放置したり、必要な教育を受けさせなかったりすると、親が責任を問われることになります。

留守番の例でいうと、4歳の子どもを一晩家に一人で放置した場合、明らかな監督義務違反として親は罰せられます。

どのような子どもでも、当然ながら4歳ではすべての困難な状況に自力で対処することはできません。その結果、子どもは危険な状態にあるとされ、親は監督義務を果たしていないことになるのです。

子どもを一人で留守番させる際のガイドライン

ただ、年齢制限の法律はないものの、さまざまな機関が子どもの年齢や成長度に応じて「留守番のガイドライン」を提供しています。下記はその一例となります。

・3歳までの子どもは常に監視を必要としているため、決して一人で家に残さないでください。
・4歳〜6歳の子どもは15〜30分間は一人でいられるようになります。ただし、これは子どもの安全が確保され、親がすぐに家に戻ることのできる場所にいる場合にのみ適用されます。
・7歳頃からは、家で2時間まで一人で過ごせるようになります。

しかし、これらはあくまでも目安です。常に子どもの発達を観察し、子ども自身が「約束を守って留守番ができる」という意思を持っていることが重要となります。子どもが留守番に不安を感じている場合は一人で家に残すべきではないとされています。

働く親をサポートする「子どもの看護休暇」制度

働く親をサポートする「子どもの看護休暇」制度
たとえ小学生になっているとはいえ、風邪などで具合の悪い子どもを家に残して仕事にでかけることはやはり不安です。
ドイツでは、親が病気の子どもの看病を行うために仕事を休む権利が法的に認められていて、「子の看護休暇(Kinderkrankengeld)」の制度があります。詳細は以下の通りです。(2024年現在)

〇対象: 法定健康保険に加入している親、および12歳以下の子ども
〇日数: 親一人につき年間最大15日、片親家庭の場合は年間最大30日
 子どもが複数いる場合は親一人につき最大35日、片親家庭の場合は年間最大70日
 ※2024年からは、子どもの入院治療が必要とされた場合に親は子の看護休暇を日数制限なく取ることが可能になりました。
〇条件:親が仕事を休む必要があることを証明する医師による診断書が必要
〇支給額: 給与の90%

このサポート制度は親が安心して子どもの看病をするための重要な施策となり、子どもを一人で留守番させなければならない状況を回避するための大きな助けとなっています。

さらに子どもが病気になった場合、一般的には母親が仕事を休んで看病するケースが多いですが、この制度では両親が平等に休暇を取得できることが魅力の一つです。

さらにドイツでは、子どもの病気時に親が仕事を休むことはもちろん、テレワークや柔軟な勤務時間制度を導入している企業も多く、子どもの看病をしやすい環境が整えられています 。

まとめ

このように、ドイツでは子どもの留守番について法的規制を厳しくするよりも、子どもの留守番そのものを回避するための制度やサポート体制を整えることが重視されています。

家庭と仕事の両立を図るうえで非常に役立つこの制度は共働き家庭の大きな助けとなり、ドイツの女性就業率が高いという要因につながっているとも言えます。

日本でも2025年に予定されている「育児・介護休業法の改正」で子どもの看護休暇の対象年齢が引き上げられるなど、育児とキャリア形成の両立に向けた施策が進んでいます。ほかにも、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するためにさまざまな措置が盛り込まれるため、積極的な活用をおすすめします。

執筆者/ドレーゼン志穂

<参照URL>
https://www.mhlw.go.jp/content/001222652.pdf
https://familienhandbuch.de/familie-leben/recht/ehe-familie/Kinderalleinlassen.php
https://www.kanzlei-landucci.de/ratgeber/sorgerecht/aufsichtspflicht-darf-man-kinder-und-jugendliche-alleine-zu-hause-lassen/
https://anwaltauskunft.de/magazin/leben/ehe-familie/eltern-darf-man-kinder-und-jugendliche-allein-zu-hause-lassen
https://www.bundesgesundheitsministerium.de/themen/praevention/kindergesundheit/faq-kinderkrankengeld
https://familienportal.de/familienportal/familienleistungen/weitere-leistungen/kinderkrankentage-und-kinderkrankengeld

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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