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人見知り、上がり症は親のポジティブな声がけで変わる! 心の強さ“レジリエンス”を高めよう

人見知り、上がり症は親のポジティブな声がけで変わる! 心の強さ“レジリエンス”を高めよう

目を合わせて話せない、自分から挨拶ができない、行事の前日は緊張して熱が出る、繊細で打たれ弱い……。特に、保育園や幼稚園に通い出してからお子さんがこのようなタイプでどうしたものかと悩んでしまっているという方は結構いるのではないでしょうか。

今回は、そんな“人前が苦手なタイプの子”が、少しでも楽に状況を乗り越えられるような“心の強さ・レジリエンス”を高めるヒントをお送りしたいと思います。

変えられるところと変えられないところを見極める

家族の中でワイワイと楽しく過ごしている分には悩みにならないことでも、家を離れ、保育園や幼稚園、小学校などの集団生活の場になると、途端に悩み化してしまうのが、人見知りをするお子さんです。

子どもが成長する中で、社会の中で生きていくことは自然の流れですから、親としては、人見知りの性格をなんとか克服してもらいたいと思っているかもしれません。

ただ、もしこの“克服”というのを「消極的な子を積極的に変身させる」と捉えてしまうと、親子ともに苦しくなってしまいます。なぜなら、「人見知りが強い」というのは、その子の持って生まれた特性であることが多く、変えたいから変えるというような簡単なことではないからです。

ですので、まずお子さんを理解する上で、変えられる部分と変えられない部分があること、よって働きかけに関しても、できることをしていくという形にシフトすることは大事なポイントになります。

そこで出てくるのが「レジリエンス」です。レジリエンスとは、ひと言で言えば、「心のバネ」のことで、逆境に置かれたときの跳ね返す力のこと。これは、生まれつき決まっているものではなく、日々の経験で伸ばすことができる力です。

立ち直りの早さにも通ずるので、たとえば、発表会で思ったようにできなくて気落ちしている場合でも、レジリエンスが高ければ早く復活しやすくなるのです。

・シャイな性格=もともと決まっている部分
・レジリエンス=生まれてから鍛えられる部分

このことから、人見知りだけれど、レジリエンスを高めることでカバーしていくという発想ができます。これですと、その子のもともとの特性を塗り替えようというような無理なプレッシャーをかけずに済むので、親子ともにやりやすいアプローチと言えます。

繊細な子の見え方を理解し、直球を投げない

では、どうやってレジリエンスを高めていくべきか。まず理解しておきたいのは、人見知りが強い子の見え方、感じ方です。

人前が苦手な子は、新しい人、新しい場所が好きではなく、目立つ場所に立つことを怖いと感じ、うまくやりくりできないのではないかという不安を感じやすい傾向があります。それに伴い、自分に対して自信がないことも多いものです。

これで分かるように、人より一歩下がった感覚で自分を捉えていることが多いのです。ただこれは主観的な感覚であり、実際に一歩下がっているわけではありません。実際にはクラスの中でとても優秀だったりしても、その子自身には「自分にはできない」「こわくてダメ」と思えてしまえばそれがすべてであり、周りがいくら励ましても、なかなか前に進めなかったりするのです。

たとえば、

・目を合わせて話すのが苦手な子に、「目を見て話しなさい」と諭したり、
・恥ずかしくて挨拶ができない子に、「ほら、おはようは?」と催促したり、
・行事の前日に緊張して熱が出る子に、「どうしてそうなのよ!」と突き放したり、

こういう直球を投げると、逆に固まって拒絶してしまうことは多いものです。うっかり挨拶を忘れている子であれば、「おはようは?」と言われて、「あ、おはよう」となることはあっても、もともとがもじもじタイプの子だと、「できるのが普通」「できないのは変だよ」という目線での助言は立場を辛くさせてしまうことになります。

なぜなら、その子たちの心の声は、「わかっていてもできないから困ってるの!」だからです。

その子には状況がどう見えているのかということを理解しておかないと、どんなにレジリエンスアップの働きかけをしても、苦手意識は強まるばかりで、前に進みづらくなってしまいますので、お子さんにとっては大きな壁なんだという理解はまず持ってあげて欲しいと思います。

楽観的な見方を親が伝えていく

それを踏まえた上で何ができるかということに話を進めていきましょう。

レジリエンスへの働きかけはさまざまありますが、人前が苦手な子に対しては、やはり楽観的な見方を親が伝えていくことが何より大事と言えます。なぜなら、このタイプの子には置かれた状況が普通よりも大ごとに見えてしまうことが多いからです。

・みんなの前で作文を読む
・教室で先生の質問に手を挙げて答える
・発表会のステージでセリフを言う

人前が得意な子であれば、何のプレッシャーも感じないかもしれません。でも苦手な子にしたら、こんな状況はできれば避けたい状況であり、立ちはだかる壁。おのずと、「最悪だ」「絶対ムリ」という恐怖感が出やすくなります。

この「最悪だ」「絶対ムリ」のような解釈は、心理学的にはマイナス思考に区分されるのですが、心の思い込みというのは、心の中だけに留まらず、ぶるぶる震えたり、ドキドキしたり、泣いてしまったりと体や感情にまで影響を及ぼしがちです。

人前が苦手な子は、切羽詰まった状況に置かれると、どうしてもこういう思いが出がちなので、その部分を親の働きかけで少しずつ和らげていけると理想的です。

と言っても、こういう状況のときだけ、

「最悪だ」という子に、「そんなことないよ」
「絶対ムリ」という子に、「きっと大丈夫だよ」

と和らげるだけでは、受け入れ難いと感じる子が多いので効果はありません。もっと別の場、つまり普段の生活の中で、楽観的な物の見方を浸透させていくのがおすすめです。

幸い子どもは、“親の発想”を”親の言葉“を通して吸収していくので、日々の親からの発話を楽観的に心がけることで、その子の心の強さとして浸透させることが期待できます。

ポジティブコミュニケーションで心のトンネルを短くする働きかけを

私が推奨しているポジ育メソッドでは、さまざまな状況におけるポジティブなコミュニケーション術をご紹介していますが、今回のような場合にとくに求められるのは、自分が窮地に立たされたときに、それを心の中で大きくしない術です。

プラス思考の人は、悪い状況に置かれたときに、
・この状況は長くは続かない
・この状況は広がらない
と捉えますが、

マイナス思考の人は、
・この状況はずっと続くにちがいない
・他のことも悪い方に転じるだろう
と捉えがちなことが知られています。

もし親がいつも、

「あ~もうだめだ」
「どうせなにをやってもうまくいかないんだ」
「次も失敗するに違いない」

このようなことを子どもの前で愚痴ったりしていたら、その子には、「イヤなこと、困ったことはずっと続くし広がるんだ」という考え方が刷り込まれていってしまいがちです

とくに人前が苦手な子は、こういう発言に敏感な傾向がありますので、お子さんの前でこれらの悲観的発言をしないように気をつけることは大事なポイントです。

さらには、「ママ、今日の○○、うまくいかなかったんだ。ま、こういうこともたまにはあるよね」とか、「パパ、○○しちゃってさぁ、今回はついていなかった」と自分にとっての負の場面を広げず、あえて小さく捉える発言ができると理想的です

お子さんの楽観性を促してくれるだけでなく、「パパもママも失敗するんだ」ということが気持ちを楽にしてくれるでしょう。

そのほかにも、

「今日は残念だったけど、次はママ頑張るよ」
「今回は○○がよくなかったんだと思う。次は~~するとうまくいくはず」

など。小さく捉えられると、次への対策も浮かびやすくなります。なお、こういうことは場数が多いほど、いい練習になるので、大きな失敗だけでなく、ちょっとしたハプニングでもどんどん使ってみてください。

「今日のパスタ、いまいちでごめんね~。次はちゃんと測って作れば成功するはず」のように、「小さく捉えて、次回に目を向ける」を日々の出来事に当てはめられると、お子さんもたくさんのポジコミに触れることができます。

思考パターンというのは、いわばテンプレートのようなものなので、日常会話の中でこういう発想が取り込まれ浸透していくと、いざというときにもそれが起動しやすくなります。つまり、シーンAで使われる思考パターンは、シーンBでも使われやすくなるというわけです。

発表会などの人前のシーンでも、少しずつ自分のことを信じられるようになったり、たとえちょっとつまずいても気落ちを長引かせずに済んだりといい形で働いてくれることが期待できるのです。

だれでも暗いトンネルがずっと続いていたら、気持ちまで暗くなり続けてしまいますし、だれでもすぐに抜けられるのなら、立ちあがる気力が湧いてきます。ならばできるだけ短いトンネルにしたいですし、それは心の捉え方次第で変えることができるのです。

人前が苦手な子は、学校などの社会生活で、普通の子以上に多くのドキドキを感じている分、トンネルを早く抜け出す術を身につけていると精神的に非常に楽になります。

親の影響力が大きい幼少時に、積極的に「悪いことは続かない、イヤなことは広がらない」の発想を届け、お子さんのレジリエンスを高めておきましょう。

著者プロフィール
佐藤 めぐみ

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/

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