教育で人生は変わる。ノーベル賞受賞者が提唱する幼児教育「ハイスコープ・カリキュラム」 とは?【後編】
主体的に学ぶことにより、子どもの学力や非認知能力を包括的に伸ばす幼児教育「ハイスコープ・カリキュラム」。こちらの後編では、家庭での実践方法や、筆者が4歳の息子と1ヶ月間チャレンジした体験談を紹介します。
前編はこちらから。
目次
ハイスコープ・カリキュラムを家庭に取り入れよう!
ハイスコープ教育研究財団の公式サイトでは、家庭でも気軽に取り組めるアクティビティを紹介しています。今回は、そのなかから3つをピックアップして紹介します。
★準備
子どもが自主的に行動しやすいように、まず部屋をセットアップします。おもちゃや本、道具の定位置を調整する、引き出しにラベルを貼るなど、子どもが親の手を借りずに作業できるように準備しましょう。
1.「プラン→実行→振り返り」の3ステップ・アクティビティ
ハイスコープ・カリキュラムのメインとなる取り組みです。まず子どもに、その日の取り組み(遊び)を選んでもらいます。子どもと一緒に家のなかを歩き回り、何に興味があるのか、どこで何をするのかプランを決めましょう。本棚の前、楽器の前、折り紙の前、さまざまなエリアを回ります。
子どもが、例えば「お絵描きエリアで飛行機の絵を描く」と決めたのなら、どこへ向かう飛行機なのか、誰が乗っているのか、などの質問をして掘り下げていき、詳細なプランを立ててもらいます。この過程で、計画力、語彙力、相手に説明するスキルなどが鍛えられます。
子どものプランニングができたら、次は実行です。行き当たりばったりで遊ぶのと、自ら計画したプランに従って遊ぶのでは、集中力に格段の違いが出ます。周りの雑音に気が散ることも少なく、プランを実行しながら子どもは充実感や達成感を存分に味わえます。
子どもの作業が終わったら、計画通りに進んだのか、もし途中でプランを変更したのならばどのように変更したのか、などを親子で話し合いましょう。この3ステップを習慣化することで、物事に意図的に取り組む力やセルフコントロール力が養えます。
2.今日のスケジュール・アクティビティ
朝、今日はどんな予定があるか親子で話します。ひとりで作業する時間、みんなで過ごす時間、外遊び、買い物、片付け、昼ごはん。バランスのよいスケジュールを考えましょう。予定が決まったら、それぞれの予定を紙に1枚ずつ記入して、壁に貼ります。
紙に書いた予定の時間になったら、その都度紙にシールを貼り、今から何をするのかを話し合います。「これから公園にいくから、外遊びの紙にシールを貼るよ。帰ってきたら、次はお昼ごはんだね」と、順序の概念にも触れましょう。
1日が終わり、全ての紙にシールを貼り終えたら、それぞれの予定について今日はどんなことをしたか、どんな出来事があったかなどを振り返って話し合います。
3.食事中の会話・アクティビティ
食事の時間は、さまざまなテーマを投げかけ、子どもの興味をかきたてて対話を引き出しましょう。子どもの発達レベルに合った新しい言葉や概念を紹介することで、語彙力を向上させる効果もあります。
例)
・「このレタスはシャキシャキって音がするね。きょうのごはん、ほかにも音がする食べ物はあるかな?どんな音かな?食欲をそそる音だね。食欲っていうのはね…」
・「夜に幼稚園へ行くことになったら、どんな感じかな?夕方はまだ明るいけど、深夜は真っ暗だね。朝が近くなってくると明け方だよ。」
4歳の息子と1ヶ月間チャレンジ。ハイスコープ・カリキュラム体験談
今回、私も4歳の息子と一緒にハイスコープ・カリキュラムに取り組みました。どのように実行したのか、どんな変化があったかなどを紹介します。
★準備
おもちゃを種類ごとに透明の箱に分け、それぞれラベルを貼りました。4歳の息子はまだひらがなが全部読めないので、簡単なイラストも添えます。また子どもの手に届く場所に、クレヨン、色鉛筆、画用紙、折り紙などを用意しました。「使いやすくなったね!」と息子も満足そうでした。
1.「計画→実行→振り返り」の3ステップ・アクティビティ
親子で一緒にエリアを回ってプランを練るのは、非常に楽しい取り組みだったようです。「今日は粘土でジャングルを作ろうかな。本を書くのもいいな」と、毎回真剣です。おもちゃ箱のラベルをじっくり見るようになったためか、アルファベットやひらがなにも強い興味を持つようになりました。
作業中は非常に集中し、話しかけられないほどです。完成すると顔をぱっと輝かせ、得意げに解説してくれます。振り返りのステップでも、日に日に解説が詳細になり、語彙も増えたように感じます。振り返りは、今でも息子が一番好きなアクティビティです。
2.今日のスケジュール・アクティビティ
我が家では幼稚園から帰ってきた後の、午後のスケジュールを作成しました。着替え、片付け、自由時間、夕食、絵本の5枚です。また、ハイスコープ教育研究財団が公開している情報を参考に、毎日5つのなかで1つ、子どもが好きなものを選べることにしました。夕食なら息子が選んだ食べ物が1品メニューに加わる、着替えなら好きな洋服でファッションを楽しむ、といった感じです。
その日のスケジュールが全て終わったら、5枚の紙を見直しながら1日の出来事を振り返ります。「今日何食べたっけ?」など思い出せない時もありましたが、毎日繰り返すうちにすらすらと出てくるようになりました。面白かったことを思い出して笑ったり、次はこうしてみようとアイディアを出し合ったり。寝る前の時間が、貴重な親子のコミュニケーションタイムになりました。
3.食事中の会話・アクティビティ
最初は筆者がテーマを考えて話していたのが、2週目頃から子どもが「動物になれるとしたら、何がいい?」とお題を出してくるようになりました。さまざまなテーマを扱うことで、家族の会話が多様化したのは嬉しいことです。ドライブ中や病院での待ち時間などの隙間時間にも、この会話アクティビティを楽しんでいます。
まとめ
以上、家庭でできるハイスコープ・カリキュラムへの取り組みを紹介しました。
筆者の場合はカリキュラムの進め方に慣れていないこともあり、はじめの数日はかなりの時間を費やしたという印象です。アクティビティの最中は息子につきっきりなので、家事や仕事との両立が大変でした。
しかし、親子とも徐々に要領がわかってくると、時間にメリハリがつけやすくなりました。息子も率先してアクティビティに取り組み、1ヶ月の間に「自主的に学ぶ姿」をたくさん目にするようになりました。思った以上に日常生活に取り入れやすい内容だったことも、スムーズに実現できたポイントといえるでしょう。
質の高い幼児教育で子どもの能力を伸ばす、ハイスコープ・カリキュラム。そのエッセンスをあなたの家庭にも取り入れてみませんか?
<参照サイト>
https://highscope.org/active-learning-at-home/#strategies
世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。