学校での子ども同士のトラブル、親がどこまで介入すべき?
言い争いからつい手が出た、仲間外れにされた、モノを取られた……。このような子ども同士のトラブルに、親がどこまで首を突っ込んだらいいのか、だれにどこまで言うべきなのかと迷うことは多いものです。ここでは、事例をもとに親がどう関わっていくかを考えていきましょう。
目次
事例1:娘のノートにいたずら書きが!どうすべき?(6歳女の子のママ)
少し前のことですが、娘のノートにいたずら書きがされていました。昼休みに外遊びから戻ったら書かれていたそうです。低学年でよくありがちな、「鉛筆を貸したけど返してくれない」のような状況では、娘は自分で友達に言って解決できているのですが、このときは、とてもショックだったようで誰にも言えずに帰ってきました。
連絡帳に書こうかとも思ったのですが、だれでも見ることができるため躊躇し、次の週に家庭訪問が予定されていたので、その時に先生に伝えました。ただ、それまでの1週間、私自身の気持ちがグラグラで、娘を言葉では励ましつつも、内心は、いじめに発展したらどうしようとか、さまざまな不安がひしめいていました。結果的に、先生は真摯に対応してくださったのでよかったのですが、やはり起こったらすぐに伝えるべきだったのかなと反省しています。
このケースにもあった貸し借りなどで起こりがちなトラブルは、まずは子ども同士での解決を促し、それでもダメなら子どもから先生に報告するのが望ましいと思われますが、いたずら書きのような事例は、それらと比べ悪質ですので、親の関わりが必要となってくるでしょう。
イヤな思いをした子は、それを解決したいけれど、先生に直接言うことで、「言いつけた」と思われたくない気持ちもあります。この事例のような場合は、親の方から、すみやかに先生に伝えておくのが望ましいと言えるでしょう。連絡帳に直接書かなくとも、封をした手紙で渡すほか、「都合のいいときに連絡がほしい」とだけ伝え、時間を設定してもらうこともできると思います。クラスの中のことは、先生も早い段階で情報を把握した方が行動を取りやすくなりますので、待たずに報告するのが望ましいと言えます。
事例2:学童で男の子につねられたと!どうすべき?(7歳女の子のママ)
学童でお友達につねられた跡が……。話を聞くと、男の子との口喧嘩に周りの男子たちが加勢してきて手を出したようで、中に「やれ」と命令した子がいたそうです。学童から連絡があり、先生が見ていなかったことを謝罪されましたが、手を出した子の保護者にしか連絡していないことが疑問で学童に再度連絡しました。こういうとき、命令をした子の親にこそ言わないと意味がないのでは、同じことを繰り返すのではと思い連絡したのですが、私は出すぎでしょうか?
このケースのように、命令する子⇒手を出す子と2層になっている場合、命令する側は、言葉でこそっと指示を出すために、周りには気づかれにくく、しかも「噛んだ跡」のような明らかな形での証拠が残らないために、「知らない」「何も言っていない」ととぼけてしまうケースも多いのが実情です。必ずしも伝えたことが即反映されるとは言い難いのが現実ですが、それでも声は上げていくべきと考えます。
なお、口喧嘩の内容や原因がここには明記されていませんが、どのような流れで口論に至ったのかを把握しておくことも連絡前にすることとして大切です。あらかじめ全体像を把握した上で、感情的にならないように、論理的に意見していくことが望まれます。
事例3:仲良しグループ内で仲間外れにされた!どうすべき?(6歳男の子のママ)
息子が仲良しグループの男の子から、しばらく仲間外れにされ、放課後のドッヂボールに入れてもらえませんでした。どうも息子がイライラしているなと思っていたものの、私には話してくれず、主人にだけぽろっと告白したことで判明しました。それまで幼稚園も一緒ですごく仲良く遊んでいた子に仲間外れにされていたと知って、私はショックでした。学校の先生に相談し、子どもたちは話し合いの場を設けてくれて解決しましたが(ちょっとしたことが原因だった)、問題は親。私だったら知りたいと思い、勇気を出してその主犯の子の親に事実を伝えました。知り合いのママだと言いにくいけれど、結果的に言ってよかったと思っています。
適切なご判断と行動だったと思います。
子ども同士の仲直りができればそれでよしという判断もあるでしょう。しかし、子ども同士は仲直りできても、親同士のわだかまりが残ってしまうことはよくあるものです。この事例にも「問題は親」とありますが、たしかに、先生は子ども同士の話し合いの場は設定してくださっても、そこで解決できれば、親同士の話し合いには至りません。
知り合いだからこそ、トラブル関連での話し合いは言いづらい面が多いと思いますが、言わずにため込むよりも、健全です。勇気がいる行動ですが、感情を抑え、主観を交えない事実関係を伝えると言いやすく、相手も受け入れやすくなるでしょう。
「でしゃばりすぎ?」「モンペと思われない?」と気になって…
ここまで、3つの事例を見てきましたが、いずれの場合も「親がトラブル対処に動いたケース」でした。あえてこれらをご紹介したのは、この記事を読んでくださっている方の多くが、言うべきか言わずにいるべきか迷い、後者を選んで、もやもやした気持ちを引きずってしまうことがあるのではと考えたからです。「自分はでしゃばりすぎではないか」「先生にモンペと思われないか」が気になり、言わずに飲み込んでしまうこともあるかもしれません。
でも、学校や学童、そして相手の親御さんに何か意見することが、モンペスターペアレントではありません。全体の状況を考えずに、わが子中心、ひいては自分中心に考えてしまう行動が、俗に言う“モンペ”になりうるのです。
子ども同士のトラブルの解消法は、絶対にこれが正解と言いきれないものもたくさんあります。ですので、親が介入すべきかすべきでないかについて、明確な線を提示することは難しいのですが、今後のために次のような目線を意識されると、判断がしやすくなるのではと思います。
介入を見極めるポイントは、イヤな思いの源泉が他者か自分か!
子どもの「イヤな思い」の源泉はどこにあるのか、これを考えることがポイントになります。
介入した方がいいのは、今回取り上げたような、他者から侵害を受けたケースです。これは発生源が相手にあるので、残念ながら、避けるのは難しいケースです。子どもだけで解決できればベストですが、それができないケースも多々あると思いますので、その際は、親が先生に報告するなどの介入が必要と考えます。
逆に、その「イヤな思い」が、主観性の強い性質のものであれば、まずは保留です。ここで指すのは、たとえば、「○○がイヤだからやりたくない」「○○をしたいのに先生がダメだって言った」のような、その子の欲求とのズレに対する不平・不満です。
モンスターペアレントの行動として特徴的なのは、わが子のイヤな思いをぬぐいとるために、そして少しでもいい思いができるようにと、大きくバランスを崩すまで介入してしまうことです。全体像を見られていない、状況を平等に比較できていない、不釣り合いなほどにわが子に重きを置いた解釈してしまう、このような場合は、言い過ぎといえ、モンペ化していく恐れがあります。
この記事を読んでくださっている方は、きっと前半にお伝えしたようなことで悩んでいらっしゃるのではと思います。多忙な先生に言っていいものかと迷うこともあるかもしれませんが、何も言わずにいて、事が大きくなってからいきなり報告するよりは、小さいうちから知っておいた方が先生も対応しやすくなります。
いずれにしても、学校、学童、相手の親御さんなどに伝える際には、
・全体像を把握した上で、事実報告を心がけること
・感情的な言い方にならないようにすること
・相手への一方的な要求にせず、自分の意向として伝えること
をポイントにすると、的確な関わりがしやすくなるでしょう。
育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/