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自己肯定感には2つの側面がある!真の自己肯定感を高めるほめ方とは

自己肯定感には2つの側面がある!真の自己肯定感を高めるほめ方とは

最近「子育て」に関わる人は、ほとんどと言っていいほど、「自己肯定感」「自尊感情」という言葉を使われるようになってきました。そして「いっぱいほめて、子どもに自信をつけさせ、自己肯定感を高めましょう」のような言葉も、耳にする機会が増えました。

教育や育児以外の場でも度々言われているのを聞くことがあります。それほど広まってきている「自己肯定感」を高めるために、子どもをほめる親も多いでしょう。

確かに、子どもはほめられると自信がつき、自己肯定感も高まります。ですが、ほめ方によっては、しっかりした自己肯定感ではなく、壊れやすい自己肯定感が育つこともあるのです。

今回は、「真の自己肯定感を高めるほめ方」、子どもへの接し方を説明していきたいと思います。

自己肯定感には2つの側面がある

もともと自己肯定感とは「self-esteem」を訳した言葉です。これは「自尊感情」と訳されることが多いのですが、米国のモリス、・ローゼンバーグ(Morris Rosenberg)が自尊感情を測定する尺度を質問紙に表し、その言葉は新たな広まりを増しました。

彼は「self-esteem」(自尊感情)にはvery good(とてもよい)と、good enough(これでよい)の異なる2つの側面があると唱え、その後多くの人により「self-esteem」の研究が進められています。

very good(とてもよい)は、他者との比較で、自分は優れてる、勝っていると感じることで、それに対し、good enough(これでよい)は、成功や優越とは関係なく、どのような時でも自分を尊重し、受容していける感情です。

その後、自尊感情を整理する研究が進められ、社会的自尊感情(社会的自己肯定感)と基本的自尊感情(基本的自己肯定感)とに分けて考える説が唱えられました。

その社会的自尊感情は他者との比較で得られる優越感のようなvery good(とてもよい)と似ており、基本的自尊感情は、成功や優越とは関係なく、あるがままの自分を認めるgood enough(これでよい)と似ていると言えるでしょう。

壊れやすい「社会的(social)な自己肯定感」

「社会的(social)な自己肯定感」とは他者との比較で、自分の優れたところを認める相対的な自信からくる自己肯定感で、優越感のようなものです。

例えば、「ボクの方が〇〇君よりかけっこが早い」「ワタシは算数の成績が、いつもクラスで1番!」などのようなものです。

ですので、状況が変化したり、失敗したり、叱られたりすると急に壊れてしまうことがあります。いわばフーセンガムのように、どんどん膨れていっても、少しの圧力などで萎んだり、破裂してしまうような感じです。

しっかり築かれる「基本的(basic)な自己肯定感」

「基本的(basic)な自己肯定感」とは他者と比較することなく、どのような自分でも受容でき、自己の存在をあるがまま認め、かけがえのない存在とするようなものです。

ですので、失敗しても、欠点があっても、環境や状況の変化があっても、自分自身を大切な存在として受容できるものです。

例えば「ワタシはワタシ、これでいい」「ボクは皆に大切にされている」などで、どのような時も自分を認められるようなものです。

これに対し、「諦めやうぬぼれともとれるのでは?」という質問が度々あるのですが、基本的(basic)な自己肯定感はそれらとは異なり、ありのままの自分を受容するような感覚です。

これはバームクーヘンのように、一層一層丁寧に積み重ねられ、しっかり築き上げなければ直ぐには高まらないものです。

社会的自己肯定感と基本的自己肯定感の違い

基本的な自己肯定感が高ければ、少々の困難にぶつかっても、乗り越えていけるでしょう。ですが社会的な自己肯定感のみで支えられている子どもは、叱られたり、失敗したり、他人との比較の中、劣り始めると崩れてしまうことがあります。

基本的自己肯定感を培うことは、一朝一夕ではできません。子どもが順調にいっている時も、そうでない時も、どのような時も受容していき、少しずつ丁寧に積み上げていくものです。ですが社会的な自己肯定感は、成功体験の後、褒めることで膨らみます。

社会的(social)な部分だけを高めるほめ方は危険

両方の自己肯定感が育っているのがベストなのですが、ともすれば社会的な部分、もしくは基本的な部分のみで自己肯定感が育まれている場合があります。

基本的な自己肯定感のみ培われている場合は、少しのんびりした子のように感じることもありますが、何か目標を持てば、一気にパワーを発揮し伸びていくでしょう。

ですが、社会的な自己肯定感のみは、何かつまづきがあると一気に萎んでしまいします。

このタイプの子どもは、いつも頑張っていて、叱られないように、いい子でいようと一生懸命でありながらも、いつ周囲に抜かされないか、大人の期待を裏切らないかなど、不安を抱いて生きていることも多いでしょう。

では、子どもの心に積み重ねたい基本的(basic)な自己肯定感を高めていくにはどのように接して行けばよいのでしょうか。具体的なほめ方や接し方を次に説明します。

基本的な自己肯定感を高めるほめ方、接し方

ポイント1 他者とではなく過去の本人と比べてほめる

「逆上がり、できるようになったね!」「漢字のテスト、20点も上がったね」とほめる時は、過去の本人と比べましょう。

ポイント2 結果ではなく過程をほめる

「マラソン大会に向けて、毎日よく練習頑張ったね」「一人でコツコツよく調べたね」と、努力した過程を認めてほめましょう。

ポイント3 失敗しても挑戦したことをほめる

「よく頑張ったね。次はきっとうまくいくよ」「失敗しても挑戦したあなたは立派!」と、失敗を責めるのではなく、どんな結果でもチャレンジした、その意欲ややる気をほめましょう。

ポイント4 子どもが安心して戻って来られる心の居場所になる

子どもの心は、不安になったり、時には折れたり、また悔しさ、悲しさ、いろいろあるでしょう。そのような時、親は子どもがいつでも帰ってくることのできる心のよりどころになりましょう。

ポイント5 無条件で受容する

理由はなくても「大好き!」と言って抱きしめたり、「あなたがいるだけで、ママは幸せ」と気持ちを言葉にして伝えたり、スキンシップをとりましょう。子どもを無条件で認め、受容しましょう。

子どもの存在を無条件でほめる

基本的な自己肯定感のみを「自己肯定感」として捉えられている場合もありますが、この「self-esteem」は形も見えず、成果もすぐに表れる訳ではないので、分かりにくいところもあるでしょう。

ですが、私たち大人は、しっかりと基本的(basic)な自己肯定感を高めるほめ方を心がけ、未来を担う子ども達の健やかな成長を応援したいものですね。

著者プロフィール
田宮 由美

公立幼稚園、小学校での勤務、幼児教室を7地域で展開、小児病棟への慰問、子どもの声を聴く電話相談など、多方面から多くの子どもに関わる。そのような中、子育てに熱心な
故に、その愛情が焦りとなり挫折、絶望感を抱いている親子が多いことに心を痛める。
「子どもの自立」「自己肯定感」「自己制御力」を柱とし、真に子どもの能力を開花させる子育て法を広める活動を2010年から始める。
現在、息子は大学病院で医師として、娘は母子支援の職場で相談員として勤務。実生活に落とし込んだ、親の心に寄り添う記事に定評がある。「難しいことを分かり易く、ストンと腑に落ちて行動に移せること」を理念とし、現在は執筆、講演、幼児教室を中心に幅広く活動中。
資格:小学校教諭・幼稚園教諭・保育士・日本交流分析協会 子育ち支援士
著書:『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』(株)KADOKAWA

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