子どもが本番に強くなるには? 4つの性格別でアドバイス!
これからの時期は、発表会や受験などで、人前で実力を披露する機会が増えるとき。緊張するのは大人も子どもも一緒ですが、「失敗してもへっちゃら」と腹をくくれる度胸のある子とプレッシャーに押しつぶされて涙してしまう子の違いとは?
本番への強さをアップするためのコツを、お子さんのタイプ別に心理学的視点から解説します。
目次
失敗しても平気な子とプレッシャーに押しつぶされてしまう子の違い
「いざ本番」というとき、その空気に強い子と弱い子がいます。どのような違いが「本番の強さ」に影響しているのでしょうか?
心理学的に見ると、本番に強いか否かは、次の2つの要因が大きく関係しています。
・気質の違い:積極的か、引っ込み思案か
・思考スタイルの違い:楽観的か、悲観的か
これらを組み合わせると、
① 積極的×楽観的タイプ
② 積極的×悲観的タイプ
③ 引っ込み思案×楽観的タイプ
④ 引っ込み思案×悲観的タイプ
に分けられ、その子が、4タイプのどこに属するかで、本番の強さがある程度見えてきます。
この中で、もっとも本番に強いのは①の子、そして、もっとも本番に弱いのが④の子です。②と③のタイプの子は、その時の空気や本番に求められる技量などによって、強くなれるときもあれば、そうでないときもあるという状況です。
気質は生まれつきだが、思考は生まれた後の経験で習得していくもの
気質と思考スタイルは似ているようで、違います。もっとも大きな違いは、気質は遺伝要素が高いのに対し、思考スタイルは環境要素も大きく関わっているということです。
「それだと、もともとの気質が引っ込み思案だと、親は何もサポートしてあげられないのでは?」という気がしますが、そうではありません。引っ込み思案な子は、自主練習を繰り返すことで、本番でも同じようにこなせる自信をつけることができます。要は、場慣れを起こしてしまうのが、一番の策です。
③の「引っ込み思案×楽観的タイプ」の子には、この方法が有効です。④の「引っ込み思案×悲観的タイプ」の子には、このアプローチに加え、思考スタイルへの働きかけも大事になってきます。次項で、その方法について触れていきます。
「がんばってね」「いつも通りね」は逆にプレッシャーを与えかねない?
心理学の研究により、幼少時の親とのコミュニケーションが、その子の思考スタイルの発達に影響を及ぼすことが分かってきました。簡単に言ってしまえば、親がポジティブな言葉を使っていると、子どももポジティブシンキングを会得しやすく、ネガティブな言葉にさらされると、ネガティブシンキングになりやすいということです。
親が発する言葉の質が、子どもの思考スタイル形成のカギになっているのです。
ある程度の年齢になると、その子の思考スタイルは固まってきます(小学校中学年くらい)。それ以降は、その思考スタイルを通じて、物事を考えるようになります。
思考スタイルは、言うなれば、心のろ過装置のようなもの。ただ、それぞれにクセがあるため、同じものを注いでも、抽出のされ方が違ってきます。楽観的なフィルターを持っている子は、本番の空気を楽観視し、悲観的なフィルターを持っている子は、それを悲観視します。
つまり、親が同じ言葉をかけても、楽観的な子と悲観的な子では受け取り方、感じ方が違ってくるのです。
たとえば、
「がんばってね」
「いつも通りね」
という声かけ。
楽観的な子は、その言葉に、「ボクなら大丈夫、きっとできる!」と反応します。しかし、悲観的な子は、「絶対にうまくやらなくては」「失敗したら大変だ!」と捉える傾向があるため、逆に、頭が真っ白の状態を作りかねません。
悲観視にも色々な種類があるのですが、本番の強さは、「絶対視」をしてしまうかどうかが大きく影響します。よって、「絶対視」を解いてあげる声かけの方が、悲観視タイプの子には心地よく響き、本番での成功率を高めてくれるのです。
悲観視タイプの子への声かけのポイント
②「積極的×悲観的タイプ」と④「引っ込み思案×悲観的タイプ」の子たちは、「絶対に〇〇しなくちゃいけない」「失敗は許されない」と結果の白黒を強く意識する傾向が見られます。
より高いものを目指す完璧主義者といえば、聞こえがいいかもしれませんが、実際には、「絶対に成功しなくちゃ」と思えば思うほど、「もしも失敗したら」のことが気になり、自分で、本番へのプレッシャーを高めてしまうことになります。
先ほどもお伝えしたように、親の言葉は子どもの思考スタイルに影響します。ですので、ママが普段から、「絶対に〇〇しなくちゃいけないよ」という口調で子どもに話しかけないことは非常に大事。悲観視タイプのお子さんには、
「うまくいけばラッキー♪」
「失敗したってたいしたことにはならないよ」
くらいの「ダメだった時の着地点」を準備しておいてあげると、余計なプレッシャーを感じずに済みます。
普段からポジティブな言葉選びを
思考スタイルは、今回のテーマ「本番への強さ」のみならず、日々のあらゆる出来事に影響を及ぼします。
できることなら、悲観視傾向が見られる子は、楽観視へと変えてあげたいですよね。それには、ママの影響力が大きい幼少時に、できるだけ、ポジティブな言葉を選んでコミュニケーションを取るのがおすすめです。
心理学的に言うと、ポジティブシンキングの人は、次のような考え方をしています。
・いいことは、長く続き、広がっていく
・悪いことは、長くは続かない、広がらない
これを活用し、お子さんが成功したときは、「この前もできて、今回もできた、きっと次も大丈夫♪」と長く捉えるほめ方をし、逆に、何かに失敗したときには、「今回は残念だったね」と短く捉えるようにします。
親が、「今回ダメだったということは、次もダメに違いない」「どうせいつまでもできるようにはならない」と考えていると、それが言葉に乗って出てしまい、お子さんの思考スタイルに影響してしまうので、注意しましょう。
育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/