花粉症に食物アレルギー…。ちゃんと知っておきたい、子どものアレルギーのこと
花粉症、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、喘息など、アレルギーを発症する子どもが増えています。そんな幼児期のアレルギーについて、ママたちの知識は十分だと言えるのでしょうか。アレルギーに関する知識が豊富な『ポポロ小児科自由が丘』の竹内邦子院長に、子どものアレルギーの現状を伺いました。
1998年より小児科医として勤務。2015年より自由が丘に小児科・アレルギー科クリニックである『ポポロ小児科自由が丘』を開業。“ご家族のかかりつけ医”を目指し、子どもから大人まで診療。アレルギー疾患のある患者さんも多く来院中。『ポポロ小児科自由が丘』http://popolo.tokyo/
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子どものアレルギー疾患は増加傾向
お子さんのアレルギーは、かなり増えているという印象です。今の季節でいうと、花粉症のお子さんが多いです。暴露されるスギの花粉の量もあるかもしれませんが、年齢の小さいお子さんでも症状や検査結果でしっかりと花粉症が出ています。
さらに、食物アレルギー、とくにナッツ系のアレルギーも増えているような気がします。食べる食品の多様化、低年齢化もあるかもしれません。昔に比べてクルミパンなども手軽に買えるようになっているので、クルミ入りのパンでアレルギー反応を起こしてしまうお子さんもいます。
親から子へ、アレルギーの体質が受け継がれる
親御さんのアレルギー体質をお子さんも受け継いでしまうので、親子でアレルギーになる可能性は高いです。それは必ずしも同じアレルギー症状とは限りません。もちろん親子で花粉症ということもありますが、親御さんが花粉症でお子さんは食物アレルギーということもあります。
また、“アレルギーマーチ”とよく言われておりますが、これは年齢によって少しずつ形を変えてアレルギー疾患が出てくることです。
たとえば、赤ちゃんの頃は皮膚の荒れと食物アレルギーがあったお子さんが、成長過程で喘息を発症し、その後喘息はよくなったけど、花粉症を伴うようになってくるとか、ダニや動物などその他のアレルゲンに対してアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎になるとか、症状の出方が変化することが多くみられるのです。
体質的にアレルギーを持っているお子さんは、赤ちゃんの頃からのスキンケアがとても重要で、また将来的にダニに感作される可能性がとても高いので、環境整備も大切です。ポイントを押さえたやり方でのダニ対策はしておきましょう。
ダニもそうですが、花粉に関しても、環境上ゼロにすることはできませんので、ご家庭内でできることからやっておくといいと思います。
舌下免疫療法、経口免疫療法など、効果が期待できる治療法も
スギ花粉症やダニアレルギーには、5歳前後からできる舌下免疫療法も有効です。アレルゲンの原因物資のエキスを1日1回舌の下に含み、アレルギー反応を起こしにくい体質にしていく治療法ですが、私の実感としてすごく効果を感じています。
それぞれの症状がどのように変化したかは、もともと個人差があるのでどれぐらい効くのかということを数値などでお答えするのはなかなか難しいのですが、患者さんのお話では、鼻水がかなり減った、いびきがなくなった、息が楽になったなどのお声が多いです。
花粉に関しても、マスクやメガネ無しでも出かけられるようになったという喜びのお声をいただいています。現在、日本ではスギとダニしか薬はありませんが、この2つに対してお困りでしたら、まずは舌下免疫療法を行っている医師にご相談されるといいと思います。
ただ、3年から5年継続する根気がいる治療法なので、お子さんがどのようにしたら続けやすいか年齢に合わせて日々考えていくことが大切です。
食物アレルギーでは、アレルギー反応がでる食品を少量ずつ食べていく経口免疫療法もあります。これはアレルギー反応が強く出たお子さんに対して親御さんが自己判断でちょっとずつ食べさせていくというのは危険ですので、必ず医師の管理の下で行ってください。
食物アレルギーは重篤な症状がでることもあり、辛いアレルギーだと思いますが、成長と共に改善する場合もあります。しかし残念ながら改善しない場合には、年齢や生活様式に応じてしっかり対策を立てる必要が出てきますので、時々医師にご相談されるといいでしょう。
ステロイドは怖い?怖くない? 薬に対して誤解を持たず医師に相談を
アレルギーの薬について誤解している親御さんも多いと思います。とくに軟膏の塗り方などを間違えている方が多いです。
たとえば、アレルギー体質があるかもしれない場合は赤ちゃんの頃からのスキンケアが非常に大切ですので、皮膚が乾燥しないように軟膏をしっかり塗って保湿しておいたほうがいいのですが、薄く塗るものだと思っている方がいらっしゃいます。保湿の軟膏も症状が出ているところ用の軟膏もできればたっぷりと、患部を覆うように塗っていただきたいです。
また、ステロイドの入った薬は怖いという方も多いですが、使わないことで逆に悪化してしまうこともあります。そうなるとさらに強いステロイド薬を長く使わないといけなくなることも。思い込みで、薬を薄く塗ったり、ステロイドを塗るのをやめたりしないほうがいいです。
皮膚は体の一番外側にある大事な臓器です。皮膚の湿疹がジクジクしてくると体からたんぱく質なども漏れ出て、体のバランスを大きく崩し入院するお子さんもいます。
いまはアレルギーに関しても様々な情報がネットにでています。ワクチンの問題もそうですが、医学的な根拠がないのにさも根拠があるような勢いで広まる情報や、出どころが不確かなネットの情報などに惑わされないでください。アレルギーの症状も薬のことも、きちんと医師に相談していただきたいと思います。
集団生活が始まる前にやっておくべきこととは
入園・入学の際には、アレルギーに関する書類を提出することになっていると思いますので、アレルギーがある場合はきちんと記入して提出しましょう。
アレルギーのないお子さんが、わざわざ血液検査してアレルギーの有無を調べるようなことはしなくていいと思います。血液検査の数値はあくまでも補助診断にすぎませんので。
また、保育園などの給食で初めて食べる食品がないようにしておくのも必要かと思います。集団生活で何か起きたら大変ですし、できれば事前に献立表をチェックして初めての食品がでるようだったら、それまでに何回か食べさせておくといいでしょう。
初めての食品を食べる場合は、何かあったときすぐ病院にかかれるように、平日の午前中に食べるのが理想です。
卵や小麦だけでなく、果物や魚も、あらゆる食品がアレルギー反応を引き起こす可能性があります。お友達同士でのお菓子の交換や、保護者の方が他のお子さんにあげることもよくあると思いますが、食品をあげることを軽々しくとらえない方がいいと思います。
アレルギーは身近な問題として、お子さんと話しておくのもおすすめです。
竹内院長のお話を聞いて、アレルギーについてまだまだ知らないことも多いなと感じました。アレルギーは長い治療になることが予想されますので、親身に相談にのってくれるお医者さんを見つけたり、環境整備をしたり、親としてできることからやってあげたいですね。