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子どもの語彙力格差はママとの会話で決まる!

子どもの語彙力格差はママとの会話で決まる!

最近、小学校の先生たちの間でも子どもの語彙力格差が問題になっているという。そこで、長年幼児期における英語と日本語の習得について研究されている、玉川大学大学院 佐藤久美子教授にお話を伺いました。キーワードは「未就学児のママとの会話」。今日から実践できるヒントが満載です!

近頃の子どもたちに広がる“語彙力格差”そのわけとは?

__先生が子どもたちと接する際に、語彙力格差を感じることはありますか?

子どもの語彙力格差は、私どもの研究でも日々感じていますが、小学校の先生たちも懸念していると聞きます。実際にあった例を申しますと、年長さん(6歳児)を対象にしたボキャブラリーテストで、語彙力の差が2歳~11歳までと、9歳もの差がありました。一体何が違うのかを見ていく中で気づいたのが、発話量(話す言葉の量)でした。語彙力が高い子=発話量が多く、語彙力が低い子は発話量が少なかったのです。

幼児の語彙力格差は発話量が重要となるということは、母親と過ごす時間が密接な未就学児の語彙力は、母親との関わりがカギであると言えます。

さらに調べていくと、語彙力を伸ばす母親の関わり方には3つのポイントがあることがわかりました。

その1 応答するタイミングが早い
その2 母親が聞き役になっている
その3 言葉をゆっくりクリアに発音する

お子さんに対して、お母さんが一方的に早口で話をしたり、適当に相槌を打って聞いたりしていることはありませんか? それらは、わが子の語彙力を伸ばす機会を奪ってしまっているのです。

語彙力が高い子は何が違うのか

__幼児期の語彙力とは生まれもった力?それとも環境によるもの?

子どもが語彙を獲得する力は、生まれ持った平等のものです。そこで、語彙力に差が出るのは、その後の育つ環境による影響が大きいのです。今からでも遅くありません。上記の3つのポイントを意識すれば、何歳からでも今日からでも語彙力を伸ばすことができます。

__語彙力は男女で差がありますか?

私の長年の研究を見る限りでは、男女差と語彙力は関係ありません。それよりも、長男長女の方が語彙力は高いという研究結果があります(第一子は保護者と関わる時間が長いため)。幼児期において女の子の語彙力が高いように感じるのは、お母さんは同性である女の子との遊びの方が慣れているためではないでしょうか。おままごとやごっこ遊びなど女の子が好きな遊びはお母さんの方が上手ですよね。もちろん、男の子との遊び方が上手なお母さんもいます。そんな男の子たちの語彙力は高いことが多いです。

__「この子は語彙力が高い」と感じるの子は、どんな力が高いのでしょうか?

語彙力が高い子は初めて聞く言葉の“反復力”が高いです。たとえば、「まねきねこ」という言葉の語順を変えて、初めて聞く日本語の「ねきねこま」を真似して言えるかテストすると、こうしたテストで反復力が高い子は、語彙力も高いです。反復力のアップは、語彙力アップの訓練にもなります。もちろん、そのためには集中力や聞く力も大事になってきます。

__言葉を話し始める時期や、話す速度と語彙力は関係ありますか?

言葉は1歳台で話す子もいますし、2歳児になってやっと話す子がいますが、それは成長の個人差なので、語彙力とは別の話です。話す速度に関しても、母親や兄弟の影響が大きいので、早口=語彙力があるということではありません。

__幼児期の絵本の読み聞かせの量と語彙力に関係はありますか?

これは多いにあると言えます。初めて見る言葉を聞く、見る、絵やものにタッチする、話す。絵本は、初めての言葉に触れる絶好の機会です。また、幼児の絵本は言葉を繰り返す表現が多いので、先述した言葉の反復力を促すことができます。

語彙力を伸ばすために親ができること

__何歳から意識すればいいですか?

語彙力アップに年齢制限はありませんから、0歳からでも伸ばすことができます。たとえば、「あーあー」というクーイングも親が同じように繰り返してあげることで、赤ちゃんはとても喜びます。まだ言葉が話せなくても、積極的に話しかけたり一緒に絵本を見たりすることは、脳にとってもいい刺激になります。そうした言葉のシャワーを積極的に浴びせていくと、2歳児でも大好きな絵本を音で覚えて、絵を見ながら読んでいるかのようにめくれるようになり、自然とひらがなを覚えていきます。幼児の暗記力はすごいのです!

__語彙力アップの際に特に大事なポイントはありますか?

絵本の読み聞かせや新しい言葉に触れる機会は語彙力アップにおいてとても効果的です。しかし、楽しまないと意味がありません。何かを覚えさせることを強要したり、目的にしないこと。子どもはそれをお母さんと読んだり見たりしている時間が楽しいと言うことを忘れないでください。

__日々の関わりで、語彙力を妨げる“NGの接し方”はありますか?

お子さんの話を無視すること。反応が遅いこと。お子さんに対して無関心では、語彙力はもちろん、親子のコミュニケーションも削がれてしまいます。たとえば、お子さんが好きなゲームも、ゲーム自体がダメなのではなく、一人で部屋にこもってやるのがよくないのです。一緒に親子で情報を共有して対話しながらゲームを楽しめば、たくさんのことが得られ、学びにつながるはずです。大切なのは、お子さんの興味があることで語彙力を伸ばしていくことです。

幼児期に英語を学ぶと、日本語の語彙力もアップする!?

__英語と日本語の語彙力は何か関係がありますか?

これは多いに関係があります。未就学児に習う英語はapple、book、など単語を繰り返し発音しますよね。その反復力は短期記憶力を鍛える訓練になりますから、英語の反復力が高いお子さんは日本語の反復力も高いという相関関係があります。そして、日本語の反復力が高いお子さんは日本語の語彙力も高いのです。つまり、幼少期に英語を学ぶと日本語の語彙力もアップするという可能性がある、ということなんです。よく、早期の英語教育は母語に悪影響があるなんていう話も聞きますが、最新の研究では悪影響どころかいい影響があるのです。

ポイントは楽しみながら“言葉力”を鍛えること!

__これからの時代を生きる子どもたちが日本語や英語を学ぶ上で意識すべきことを教えてください

忘れてはいけないのが、言葉はコミュニケーションの道具であるということ。これからのグローバルな時代において、日本語も英語も同様に使える方が、より世界の多くの人とコミュニケーションが取れますよね。思っていることを人前で話せたり聞けたり、言葉は使えなければ意味がないのです。ですから、学校でも日本語や英語を使う場面をもっともっと増やしていってほしいと思っています。

__最後に子育て中の親御さんにメッセージをお願いします

振り返ると未就学児の時期はあっという間です。私にも息子がおりますが、小学校高学年にもなると、特に男の子は一緒に遊びたくてもお母さんと遊んでくれません。お子さんとの貴重な今の時期を楽しんでほしいです。そのためにはお子さんをよく見て、話を聞いて、一緒に感性を高めて豊かな心を養ってください。

私が監修しているEテレ『えいごであそぼwith Orton』では、“音の見える化”をテーマにしています。よく言われるLとRの発音は、生後5ヵ月では日本人の子も英語を母語とする子と同様に聞き取れるのですが、それ以降違いを聞き取るチャンスがないために低下していくのです。日本語も英語も言葉は使うもの。ぜひ楽しみながらたくさんの言葉に触れてみてください。

いかがでしたか。幼児期に英語を学ぶと日本語の語彙力もアップする!というのは意外でした。佐藤先生の著書『イラスト図解 小学校英語の教え方25のルール』(講談社)では、英語が苦手な方や、英語を習い始めのお子さんを持つ親御さんにもぜひおすすめです、とのこと。興味を持った方はぜひ読んでみてください!


佐藤久美子さん(玉川大学大学院 名誉教授) 
津田塾大学大学院文学研究科博士課程修了。ロンドン大学大学院博士課程留学。乳幼児の言語獲得・発達研究に従事し、その科学的成果に基づく英語教育の提案や日本語の獲得についても研究している。1998~2015年度まで「基礎英語」の講師をつとめ、2012年度よりNHK Eテレ「えいごであそぼ」「えいごであそぼwith Orton」の総合指導もつとめる。2007年度より町田市教育委員会の委託を受け42校にカリキュラム配信など、小学校英語研修講師、講演多数。小学校英語指導者認定協議会理事。https://satokumiko.com/
著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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