ポイントは“感情のラベリング!” 本番で失敗したわが子のフォローどうすべき?
1学年の総まとめとなる舞台を経験するお子さんも多い年明けのこの時期。普段以上の力を発揮できる場合もあれば、そうでないこともあります。もしわが子が、大舞台で失敗をしてしまったとき、親はどうフォローするのが望ましいのでしょうか?
目次
まず取りたいファーストリアクション
できることなら、わが子には何でもスイスイとこなしていってほしいと親は願うもの。子どもたちのポジティブな感情はいくらでもウェルカムですが、ネガティブな感情は、正直苦手です。とくに気落ちしているわが子を前にすると、どう声をかけたらいいか迷ってしまいます。
思うような結果が出ずに、子どもが落ち込んでいるとき、その状態から早く回復させたくて、「励まさねば!」と思う方も多いでしょう。しかし、「大丈夫、大丈夫」と励ますより前に、まずやるべきなのは、気持ちの受け止めです。
おすすめは、「感情のラベリング」という方法。これは、子どもの気持ちを察し、言葉で代弁してあげることを指します。お子さんが見せる「辛そうな表情」「悲しそうな様子」を、「辛いね、こっちへおいで」「悲しいね、ギューッ」と言葉で表してあげるのです。
気持ちを代弁してあげることで、「ママはボクの気持ちをわかってくれている」と感じ、自分を受容してもらっているという気持ちが高まります。とくに小さいお子さんは、自分の内部の感情を処理するのがまだ苦手なので、ママが上手に言語化してあげると、上手く外に出せるようになります。
そして、この次に来るのが、励ましです。子どもの気持ちを受け止めずに、「大丈夫」「だから泣かないの」「次またがんばろうよ」と言っても、「ママはわかってない」「大丈夫じゃないから泣いているんだ」と逆に距離を作ってしまうこともあるからです。
気持ちを受け止めてから、励ましの言葉をかけていく方が、ママの言葉を受け止めやすくなります。
とくに、受験や発表会や大会などの大きなイベントでは、親もその日にかける思いがいっそう強くなるので、思うような結果に結びつかないと、親の方が気持ちを引きずり、なかなか気持ちを切り替えられないことも多いもの。そこをなんとか踏ん張って、お子さんの感情を受け止めてあげてあげることがポイントになります。
ダメなのは「たられば」と「ダメ出し」
冷静なときなら、「それはNGでしょ」とわかっているような声かけも、親もショックのあまり、感情が高ぶると、うっかり言ってしまうことがあるので、備忘録として、ここにNGを2つ記しておきます。
その2つとは、「たられば」と「ダメ出し」です。
「もっともっと練習すればよかった」
「あのとき○○していたら、こんなことにはならなかった」
という“たられば”。
「○○しなかったからだよ」
「あそこはもっと○○できたよね」
という”ダメ出し“。
どこが良くなかったのかを振り返ることは、今後の大きな学びとなりますが、落ち込んでいる時期には、負の作用しかもたらしません。まずは気持ちの立て直しが先決、そこに集中していきましょう。
それまでの褒め方が実はカギに!
ここまでは、起こってしまった後の対応についてお伝えしてきましたが、実は、もっと大事なポイントがあります。それは、普段の褒め方です。
これまでに、「結果を褒めるよりも、過程を褒めよう」ですとか、「成果ではなく、努力を褒めよう」ということを聞いたことがあると思います。それがここでも大事になってきます。
もし普段から、「結果がすべて」という褒め方をしていると、その結果で失敗してしまうと、その子は、「すべてダメだ」という感覚に陥りやすくなります。
・良い点数を取る⇒褒める
・完璧にこなす⇒褒める
・1位を取る⇒褒める
のように、結果の出来ばかりに目を向けて、そこを褒める習慣があると、もし結果が伴わなかった場合、その子にとっては、全てが否定されたように感じられるからです。
「結果を出す=いい子」「結果を出せない=悪い子」と二元的に捉えてしまうと、結果が出せなかった自分自身を「ダメだ」と感じ、なかなか立ち直れなくなってしまいます。
もちろん、良い点数や1位を目指すことは素晴らしいことです。ただ、褒める際には、良い点数や1位を目指す際の“がんばり”や“努力”を褒めることが非常に大切になってきます。
心理学の研究でも、幼少時、がんばっている姿勢を褒めてもらっている子は、後に、「知性や行動は努力によって磨かれるものだ」という見方をする傾向があることがわかっています。
そのようなタイプであれば、もし失敗をしても、努力したことへの自負は温存できるので、自分を全否定するようなことはなく、結果、立ち直りも早くなります。
失敗を学びのチャンスにするために
「成功=いい子」「失敗=ダメな子」ではありませんし、「成功=いい親」「失敗=ダメな親」でもありません。
大人になって振り返れば、「あのとき失敗しておいてよかった」「逆にあれで奮起した」というような出来事がいくつもあると思います。
また、育児の場面でも、渦中にいると、「〇〇以外に道はない」「絶対に○○しなくては」と視野が狭くなってしまうのに、何年か経って、当時を振り返ると、「なんであんなに追い詰められていたんだろう」「もっと気持ちを楽に持てばよかった」と思うことがあります。
一歩引いて、別の角度から見れば、物事は違って見えることがよくあるのです。
わが子の辛さ、悲しさは、親にとってもしんどいものですが、そこで気持ちを強く持って一歩引けると、お子さんの気持ちを受け止めてあげられる余裕が生まれます。その受け止めで、お子さんはまた一回り大きくなり、精神的により強く成長してくれます。
失敗を学びのチャンスに変えるために、まずは親が自らをリセット。そして、「感情のラベリング」で子ども心を受け止めてあげてください。
育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/