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幼児に「失敗力」は逆効果!? 9歳までと10歳以降で変わる「失敗力」の捉え方

幼児に「失敗力」は逆効果!? 9歳までと10歳以降で変わる「失敗力」の捉え方

最近ビジネス書などでもよく目にする「失敗力」というワード。これは子どもにおいても同じことが言えるのでしょうか?

そこで、幼児教育42年伸芽会の牛窪先生と、『1歩先行く中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)の著者、中曽根陽子さんにアドバイスいただきました。

ポイントは9歳までと10歳以降のようです。

まずは、中曽根洋子さんになぜ今「失敗力」が重要視されているのか、さらに親の関わり方についてアドバイスいただきました。

なぜ今「失敗力」が大事なのか

「失敗力」と聞いて、皆さんは何を思い浮かべましたか?

失敗というと、とかくネガティブなイメージがあるかもしれません。しかし、実はこれからの子どもたちにとっては、とても大切な力です。というのも、皆さんのお子さんは、これまで親が経験したことのないような、世の中を生きることになるからです。

例えば、人工知能の発達で、これから10年から20年で今ある仕事の49%が自動化されるリスクが高いというオックスフォード大学の研究チームの報告もあります。未来はいつでも不確実ですが、これまで以上に変化のスピードが速く、親の常識が当てはまらない事態が起きてくる可能性が高いということです。

その時に、子どもたちが幸せに生きていくためには、子ども自身が、変化に対応し自分で考え行動する力を身につけておくことが必要です。

失敗の経験を積むことが子どもの力を伸ばす

では、どうすればそのような力を育てることができるのでしょうか?

それは、子どもが親の手元にいる間に、できるだけ小さな失敗から立ち直り小さな成功にいたる体験をしておくことです。なぜなら、失敗というのは、何かにチャレンジした結果だからです。当然子どもは経験が少ないですから、最初からうまくいくわけではありません。

例えば、お子さんが初めて自分で歩いた時、皆さんはどうしていましたか? きっと、「こっち、こっち」と声をかけながら、応援していたことでしょう。お子さんも、歩けることが嬉しくて何度も転びながら歩き出したことでしょう。

皆さんもそのチャレンジを心から応援し、辛抱強く見守ったはずです。それは、最初からうまくいかないということを知っているからです。

夏休みは「失敗力」を育てるチャンス

「失敗を恐れないでチャレンジし、うまくいかないことがあってもそこから立ち直る力」、それが、私が考える「失敗力」です。

時間に余裕のある夏休みこそ、「失敗力」を育てる絶好の機会です。普段親がやってあげていることで、お子さんができそうなことをぜひ任せてみましょう。

例えば、着る服を自分で選ぶときに、暑いのにトレーナーを着ると言い張ったり、親がぎょっとするような取り合わせを選ぶこともあるでしょう。でもそれが「失敗力」を育てる絶好の機会です。「そんな服はおかしい」などと頭ごなしに否定するのではなく、まずは子どもの行動を見守ること。困ったことが起きたら、「今度はどうしたらいいと思う」と子ども自身が考えられるような質問をしてあげてください。

また、お子さんが自分で選びやすいよう、引き出しを取り出しやすい位置に入れ替えるという工夫もできますね。任せる時には、無理やり押しつけたり放任するのではなく、お子さんがやってみたいと思うような工夫や励ましをすることが大切です。

続いて、伸芽会の牛窪先生に幼児期の「失敗力」の注意点についてお話を伺いました。

幼児に「失敗させる」は要注意!?

長年幼児教育に関わってきて感じるのが、学習においては幼児に大人基準の「失敗力」を当てはめると逆効果になることもある、ということです。

たとえば、親御さんが中学・高校・大学受験のノウハウがあって社会的にも成功されている場合、それを幼児に持ち込むとします。中にはそういった負荷をかけても自然とできてしまう子が10人に1人くらいはいますが、大抵の子は自信を無くしたり失敗することがトラウマになりかねません。

ですから、私は9歳までの幼児期は「失敗させる」よりも「失敗に立ち向かうエネルギー」をいかに蓄積(貯金)するかが大事なのではないかと思うのです。

9歳までは「失敗に立ち向かうエネルギー」を花丸で貯金しよう

では、どのように「失敗に立ち向かうエネルギー」を増やしていけばいいかというと、日々の親御さんの声がけ、とくに「褒め方(花丸)」です。

「きれいに靴を並べてくれてありがとう」「自分で考えて行動できてすごいね」など、日々生活の中で、ちょっとしたことでいいので、お子さんを褒めていわゆる“花丸貯金”を増やしていきましょう。

このときポイントなのが、何かをしながら口先だけで褒めるのではなく、「お子さんの目を見て正対して心から褒める」こと。この“花丸貯金”の蓄積がお子さんの自信につながり、この花丸貯金が多いほど10歳以降の学習でも難しい問題にチャレンジしたり、失敗に立ち向かうエネルギーになるのです。

学習面においては、9歳までは「花丸にはじまり花丸で終わる」を意識しましょう(※課題の難易度を「易(得意)→難(不得意)→易(得意)」で行い、必ず「できた」と言う楽しい達成感を感じて終わると言うこと)。

幼児は、「出来た→楽しい→毎日やってみよう→身につく(定着)」となるのです。9歳以下の子に苦手科目ばかりさせたり、「明日までこの問題を考えてみて」と突き放すと、かえって勉強嫌いになってしまいます。こうした持久力は、花丸貯金がたまった10歳以降の学習方法なのです。

生活も学習も「伸びる子」の土台作りは9歳までが勝負!

花丸貯金だけではありません。例えば、9歳までに「耳で聞いたことを頭のイメージする習慣(癖)」のある子どもは、「文章を読んで頭のイメージ」できますから、算数・文章題が苦手になることは少ないですし、
9歳までテレビを見る時間が【1時間以内/1日】の習慣がついていれば、それ以降2時間以上テレビを見ていると、本人が「少し見過ぎたかな?!」と感じるようになるようです。

つまり、よくも悪くも9歳までに身についた生活習慣や学習習慣を10歳以降で変えるのは容易ではないということです。今からでも遅くはありません。ぜひご家庭で花丸貯金を増やしながらよい土台作りを作っていきましょう。

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著者プロフィール
中曽根 陽子

教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。子育て中のママたちの絶大な人気を誇るロングセラー『あそび場シリーズ』の仕掛人でもある。
“お母さんと子ども達の笑顔のために”をコンセプトに数多くの本をプロデュース。近著に『1歩先行く中学受験成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などがある。
教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップも行っており、母親自身が新しい時代をデザ インする力を育てる学びの場「Mother Quest」も主宰している。公式サイト:http://www.waiwainet.com/

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