過干渉、しつけの脱線、ママの自己肯定感低下。コロナ禍で悩み相談が増加!? 【ママたちのメンタルの保ち方】
「コロナ、コロナ」で1年が過ぎ、今もなお、私たち親も、そして子どもたちも日々さまざまな制限の中で生活をしています。そんなお互いの疲労が家庭内に悪循環を起こし、ストレスがいよいよ慢性化しているように感じています。
そこで今回は、長引くコロナ禍でのストレス対処や日々をなんとか回すためのヒントをまとめてみました。
目次
コロナ禍の不満、みんなのあるある
コロナ禍が予想以上に長引いているということで、だれもが疲れてきています。多くの方が感じている、コロナ禍の不満を聞いてみました。
ケース1
リモートワークで夫婦ともに在宅です。仕事の合間に家事ができるのは良い面もありますが、逆に、家の中で分刻みのフル稼働となり、ゆっくりできる自由な時間がまったくなくて息が詰まりそうです。
ケース2
緊急事態宣言により放課後の学童が閉鎖され、子どもが家の中にいる時間が増えました。漫画やオンラインゲームも悪くはないのですが、隣の部屋で仕事をしているとつい気になってしまって「遊んでばかりいないで勉強したら」と、小言が増えました。
ケース3
「できる限りお控え下さい」「自粛をお願いします」のようなお達しが多く、周りが取る行動がまちまちでそれもストレスです。守っている側からすると、守らない人にもやもやしてしまいます。
ケース4
休みの日に気軽に外食ができないのがツライです。土日くらい料理を休みたい日もあるのですが、Uber Eatsを家族分頼むのもなんだか気がひけてしまいます。
ケース5
他県に住む両親に1年以上会えていません。オンライン上では話したり顔を見てはいますが、毎年家族で帰省していただけに、長引くコロナに気持ちが落ち込んでいます。
ストレスには急性のものと慢性のものがありますが、コロナ禍のストレスはもはや慢性化状態。ワクチン接種も進まず、先が見えないことでどう心を保っていったらいいのか、多くの方が迷っています。
お家時間が増えたことで起こりやすい3つの悪循環とは?
私が運営している育児相談室でも、明らかに悩むママたちが増えたことを実感しています。過干渉、しつけの脱線、ママ自身の自己肯定感の低下……。このあたりがお悩みの訴えとして多いと感じています。なぜ、このようなことがコロナ禍だととくに顕著になりがちなのでしょうか。順に見ていきましょう。
その1 過干渉
子どもといる時間が増えると、余計にあれこれ目に留まってしまう分、ついつい口うるさくなってしまうというお悩みはよく聞きます。もともとよく気の回るママほど、子どもがそばにいると、あれもこれもと気づいてしまうのかもしれません。そして、気づいた以上は放置できず、つい手を出してやってしまい、さらに忙しくなってしまうというママも……。
その2 しつけの脱線
やることがあり過ぎる毎日で、子どもの生活リズムや習慣を守りきるのが難しいと感じることが多いようです。それをなんとか回そうとしても、子どもが反抗し、親子げんかに。制限のある中での生活で、子どもたちもストレスを抱えていることで、親の指示が素直に受け止めにくくなっていることも考えられます。
その3 ママの自己肯定感低下
家庭内での家事・育児を担っている割合が高いママほど、コロナ禍は大変になりがちです。時間的にも精神的にも圧迫され、ピリピリすることも増えるため、子どもを叱るときに言わなくてもいいひと言を発してしまうことも……。それにより、自分を責めてしまい、気持ちを落ち込ませてしまうという方が増えているのを実感しています。本当に少しでも早く、このコロナ騒動を抜け出したいとばかり願ってしまいます。
ここでは3つに分けてお伝えしましたが、これらは単独に起こっているわけではありませんよね。1つだけを悩んでいる方よりも、3つとも悩んでいる方の方がずっと多いはずです。
3つを合わせると、
家にいることが増え、近くにいるので色々と目につく
⇓
口出しが増え、最終的に強く叱ってしまう
⇓
言い過ぎて、自己肯定感が低下
こういうスパイラルが起きているように思います。
育児相談では、コロナ禍でなくても、このような負のスパイラルがご相談のきっかけになっていることが多いですが、コロナ禍ではそれがさらに凝縮されているように感じています。ママ友仲間と自由におしゃべりもできず、うまくストレスが発散できなければ、このような悪循環が起こりやすくなるのは大いにありえることです。
今日から実践できる! 親子のストレスケア
ここまでお伝えしてきたように、育児の悩みというのは、どちらか一方が困っているのではなく、親も子も困って、そこでの悪循環が起こりがちです。そのため、ママのストレスケアも、自分に対してとお子さんに対しての双方のアプローチをしないと結局ストレスは減らないということに。ここでは、その2方向で心がけていきたいことをまとめてみました。
その1 ストレスの「書き出し」で外に出す
心理学においては、ストレスは「外在化」することが大事とされています。実は、ふだん私たちが友だちとしているなにげないおしゃべりも、気づかぬうちに心の内を外在化しているわけです。今はコロナ禍での制限で、これまで外で友だちとおしゃべりして発散できたこと、解決できたことが、自分の中に留まり続けている可能性も。ふだんよりも、外に出す作業が滞っていることが多いので、意識的に外在化をしていくことをおすすめします。
おすすめなのは、「書き出すこと」です。
「ストレス」とは便利な言葉で、私たちが抱えるお悩みや困りごと全てに、「あ~ストレスだ」と使えてしまいます。何にでも使える便利な言葉の分、何もかも「ストレスだ」で片づけてしまうことがとても多いのです。「ヤバい」という言葉がなんにでも使われているのとちょっと似ていると思います。
何にでも当てはめられる便利な定義があると、ついそれを使ってしまいがちですが、それを続けると、その中身が何かが見えにくくなってしまいます。何がストレスなのか、何がヤバいのか……。
「あぁ何もかもストレス!」という状態だと、どこから手をつけたらいいのかわからなくなりがちですが、外在化は、「手のつけどころ」を見つけやすくしてくれます。早速やっていきましょう。
① 今、あなたがストレスに感じているのは具体的にどんなことでしょうか? 「私は今、○○がストレス」という形にまとめてみましょう。
例:
・1日3食作るのがストレス
・家の中が散らかっているのがストレス
・子どもがエンドレスにゲームをするのがストレス
② それらがどんな風になると理想的でしょうか?
例:
・食事のことを考えなくて済んだら理想的
・床にいっさい物が置かれていなければ理想的
・子どもが自主的にゲームを管理してくれたら理想的
①と②を見比べ、現実的にできそうなことはどんなことでしょうか? ①が今の具体的な困りごとで、②が理想形です。現実的になんとかできそうなことは、たいがい①と②の間にあります。どんなことだったら実践可能でしょうか?
例:
・朝ごはんをパターン化、昼はスーパーのお惣菜をもっと利用、夜だけしっかり考える
・今週末、1時間かけて床上を断捨離する。なにより物を増やさない
・子どもとしっかり1回話し合う。ゲーム機をママ管理にする?
1つ1つのことが、お団子状態になって大きなストレスになってしまっていることがほとんどなので、まずはそれを部品状態に解体し、その1つ1つに対して、「なにか工夫できないか?」と試行することはとても有効です。ほんのちょっとでもいいのでできることがあれば、まずやってみる。そういう試行が積み重なることで、ストレスは軽減していきます。
その2 子どもとの距離、無意識の甘やかしを見直す
コロナでおうち時間が増えたことでよく聞くのが、子どもへの接し方のバランスが崩れてしまったということ。
・自分が在宅勤務中、子どもがピタッと黙るので、タブレットを渡すことが増えた
・すっかりYouTubeやゲームにはまってしまい、今になって困っている
・家で一緒に過ごす時間が増えたせいか、「ママと離れたくない」が強くなった
・会う人が限られていることもあり、人見知りがいっそう激しくなった
このように、家庭内のルールや約束ごとがルーズになってしまったり、親子間の距離が近くなり過ぎたりといったお悩みが増えていると感じています。コロナ禍の対応は国がサポートしてくれている部分はもちろんありますが、結局は個人でやってくださいということが多いのが現状です。しわ寄せが家庭にきてしまい、家でやらなくてはいけないことが圧倒的に増えたので、本当に大変です。
今のご時世で、全てを思うように進めることは無理だというあきらめも大事だと感じています。こだわることと手放すことを分けないと、どれも中途半端になったり、ストレス過多で体を壊しかねません。
あとあと困る部分だけはこだわって、家事などの手放せるものは家電や外注を頼るのがなんとか回すためのやり方のように思います。
そのこだわるポイントとして、私が大事だと感じているのは、「気づいたら甘やかしていた」という部分を極力作らないことです。子育てにおいては、しっかりと甘えさせてあげることはとても大事ですが、それと「甘やかすこと」は似て非なるものです。
コロナ禍では、さまざまな制限を受けているのもあって、「子どもたちがかわいそうだ」という思いが出てくるものです。でも「かわいそうだから」と、子どもの言うことを何でも聞いてあげたり、本当は自分でできることまでやってあげたりすると、ママ自身が忙しくなるばかりでなく、家庭内でのバランスが崩れ、「王子様、お姫様状態」を作ってしまうことがよく起こります。
こういう状況は、半年、1年後など、あとになって「手に負えない!」ということになりがちなので、年齢相応の自立行動を身につけてもらうことは意識していかれることをおすすめします。物理的に距離が近くなりがちなコロナ禍だからこそ、「これを今やってあげることは、この子のためか」ということを自問することも大事なのかもしれません。
早く日常を取り戻せるのが何よりの願いですが、まだ先が見通せない今できることとして、できるところから意識してみてください。
育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:https://megumi-sato.com/