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叱らない・怒らない子育ての落とし穴

叱らない・怒らない子育ての落とし穴

最近よく耳にする「叱らない子育て」が誤った解釈で一人歩きしているように感じます。

「電車の中で、子どもが走り回っていても、親は注意をしない」、「公園で、子どもが他の子のおもちゃを取り上げ泣かせても、親は何も言わない」、「レストランで、子どもが大声で騒いでいても、親はママ友とおしゃべり」…。このような子どもの言動を叱らない親は、一見、子育てに無関心のようにも感じますが、中には、その容認が「叱らない子育て法」だと思っている親もいるようです。

今回は、本来の「叱らない子育て」や、その具体的な方法にについて説明していきたいと思います。

「叱らない子育て」とは「叱る」という手段を使わない事

「叱らない子育て」を考える前に、「叱る」とはどういうことか考えてみましょう。

叱るとは、「子どもを正しい方向へ導くために、注意すること」です。これは子どもを自立させ、将来社会へ送り出すことを考えれば、とても重要なことです。「叱らない子育て」であっても、「子どもを正しい方向に導く」ことは、しなければなりません。

つまり「叱らない子育て」とは「叱る」という手段を使わずに、「子どもを正しい方向に導く」ということを指して言うのです。

「叱らない子育て」とは、決して、子どもを「放っておくこと」「何も言わないこと」ではないことを理解しておきましょう。

「叱る」べきポイントは「危険」と「他者への迷惑」

子どもの健やかな成長には、叱るべき時は、叱らなければなりません。ですが常に叱ってばかりいては、子どもは抑圧され、子どもの自主性や自信、意欲と云った面が育まれないでしょう。ではどのような時が、「叱るべき時」なのでしょうか。次の2つの場面をポイントに考えてください。

・危険が生じる場合

・人に迷惑がかかる場合

これらの場合は、理由を説明し、注意を促し、きっぱりと叱らなければなりません。

子どもは自我の芽生えと共に、さまざまなモノへと興味関心を持ち、行動範囲も広がり、親はハラハラドキドキする場面も増えるでしょう。また社会経験も未熟な子どもは、規律やルール、マナーを守ることも身についていませんから、友達への関わりも上手に意思表示ができず、トラブルになる場合も。

それらは、親や大人が教え、指導していかなければならないと言えるでしょう。

「叱らない子育て」とは、それらを叱らずに教えることです。ではどのようにすればよいのでしょうか。それには「褒める」や「教える」といった手段を使うとよいでしょう。

具体的にその子育て法を言いますと、

おとなしく座っていられた時、お友達と仲良く一緒におもちゃを共有できた時、お買い物にきちんとついてこられた時、レストランで静かに食事ができた時、これらのよい行いをした時にまずは、褒めてあげましょう。

日常的に「褒める」働きかけをしていたうえで、人に迷惑をかけるようなことをした場合は

「他の人に迷惑がかかるでしょう」

「電車を降りるまで、静かに座っていようね」

「お友達とおもちゃで一緒に遊べば楽しいよ」など指導する言葉をかけてください。

そして最後にまた、できればまた褒めることも忘れず行ってください。「静かに座っていられたね」「お友達と仲良く遊べて楽しかったね」など、子どもの言動を認め、褒める言葉をかけてあげましょう。

つまり「注意」や「教え」を、「褒め」でサンドイッチする感じですね。

そしてこれを繰り返している間に、やがて子どもは、自分で判断し、親が叱るようなことは、しなくなることが、叱らない子育て法です。

叱らない子育てとは、決して子どもの叱るべき言動を容認するのではなく、このように手段をかえ、叱らなくてもよい子どもに育てることです。誤った解釈ではなく、「叱らない子育て」の本来の意味を理解し、上手に「褒め」と「注意」を使って、子どもを正しい方向へ導く子育てをしたいですね。

最後に、自分の子以外を叱る際の注意点もお伝えしておきましょう。

他の子を叱る時の5つの注意点

他人の子どもを叱る場合も、基本はわが子を叱る時と同じなのですが、難しいのは、親御さんの考えや、各家庭によって子育て方針が違うため、その子どもとの信頼関係が出来ていないと、思わぬトラブルに発展することもありますので、その辺りも念頭に置いて対応することが大切です。

では他の子を叱る時の注意点を簡単に5つにまとめ、お伝えします。

ポイント1 叱るべき行為を起こしたその場面で、すぐに叱る!

後になって、「あの時は、、、」など持ち出すのではなく、叱るべき行為を起こしたその場面ですぐに叱りましょう。

ポイント2 行為のみを叱る

行為そのものだけを叱りましょう。ちなみに「叱る行為」もわが子の場合と同じで「危険な行為」「他人に迷惑をかける行為」です。

ポイント3 使う言葉や声のボリュームを考えて叱る

人格の否定や個人を罵倒するような言葉はもちろん使ってはいけません。また叱られ慣れていない子どもの場合、大きな怒鳴り声に恐怖を覚えるかもしれませんので、適切な声の大きさを考えましょう。

ポイント4 顔を見て、きっぱりした口調、態度で叱る

叱る時は、その子どもの顔を見て、きっぱりとした口調で、端的に叱りましょう。

ポイント5 各家庭の方針や親の考え方には触れずに叱る

あくまでも叱るのは、「危険」や「迷惑」の行為のみです。その家庭の子育て方針や、親の考え方には、決して触れないでおきましょう。それはその子の責任でもなく、変えられるものでもありません。また親を悪く言われると、反発心を抱き、余計にその注意を聞き入れないこともあるでしょう。

他の子を叱ることは結構難しいものです。ですが、わが子にも「危険」や「迷惑」の基準をハッキリ示すことができます。ですので、勇気を持って、正しく叱ってあげたいですね。

著者プロフィール
田宮 由美

公立幼稚園、小学校での勤務、幼児教室を7地域で展開、小児病棟への慰問、子どもの声を聴く電話相談など、多方面から多くの子どもに関わる。そのような中、子育てに熱心な
故に、その愛情が焦りとなり挫折、絶望感を抱いている親子が多いことに心を痛める。
「子どもの自立」「自己肯定感」「自己制御力」を柱とし、真に子どもの能力を開花させる子育て法を広める活動を2010年から始める。
現在、息子は大学病院で医師として、娘は母子支援の職場で相談員として勤務。実生活に落とし込んだ、親の心に寄り添う記事に定評がある。「難しいことを分かり易く、ストンと腑に落ちて行動に移せること」を理念とし、現在は執筆、講演、幼児教室を中心に幅広く活動中。
資格:小学校教諭・幼稚園教諭・保育士・日本交流分析協会 子育ち支援士
著書:『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』(株)KADOKAWA

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