オーストラリア式「叱らない育児」は子どもと対等に接する!

オーストラリア式「叱らない育児」は子どもと対等に接する!

最近、「叱らない育児」という言葉を耳にすることが増えてきました。日本でも「海外のように叱らない育児を取り入れるべきだ」といった声が聞かれますが、その実態はどのようなものなのでしょうか。オーストラリアで保育士をしている筆者が、現地の「叱らない育児」について紹介します。

相手が子どもでもしっかりと意見を伝える

少し意外に感じるかもしれませんが、オーストラリアの大人は日本以上に子どもに対し厳しい姿勢で接しています。

たとえば、1歳の子が机の上にある果物を取って床に投げた場合、日本であれば「まだ小さいから仕方ない」と考え、「やめようね」など優しい言葉をかけるかもしれません。

しかし、オーストラリアでは同じ状況でも「投げるだけならどうして取るの?」など、しっかりした言葉で伝えます。

また、ときには「聞き分けがないなら赤ちゃんの部屋に行く?」「友だちのものを投げるなら、あなたのものも投げてみようか?」といった具合に、子どもに対して強い口調で意見を伝える場面もあります。

感情で叱らず相手を“小さな大人”として扱う

感情で叱らず相手を“小さな大人”として扱う
このように聞くと、「結局叱っているのでは?」と思われるかもしれませんが、オーストラリアにおける「叱る」という言葉の意味は日本とは少し異なります。

「叱る」とは感情的に怒りをぶつけたり、「あなたはダメ」などの否定的な言葉を用いたりすることを指します。

こうした行為は好ましくないとされ、代わりに「どうしてその行動をしたの?」と問いかけます。

子どもの返答に対して「それなら赤ちゃんの部屋で少し落ち着いてみようか」「その行動は素敵じゃないよね」と、大人の意見として伝える方法が推奨されています。

オーストラリアでは、子どもを小さな大人として扱う姿勢が一般的です。そのため、暴力的な態度や子どもを否定するような「叱り方」はせず、行動の理由を聞きながら大人の意見を伝えます。こういった接し方を通じ、子どもが自分で判断し、成長できるようサポートしているのです。

そして子どももまた、「どうして?」「自分はこうしたい」といった意見を伝えることができます。このとき、大人はまずその意見を否定することなく受け入れ、その後に自分の意見を伝えるようにします。

気持ちを整理し落ち着く術を身に付けさせる

気持ちを整理し落ち着く術を身に付けさせる
ただ、すべての子どもがこのような意見のやり取りをスムーズにできるわけではありません。大人の「赤ちゃんの部屋に行こうか?」といった言葉にパニックを起こして泣き出す子もいます。

こういった場合でも、オーストラリアでは泣く子どもをすぐに抱き上げたりせず、安全な状況で見守ります。

「子どもが泣いているのに抱っこしないのは冷たいのでは?」と思われるかもしれませんが、泣いても見守っている間に子どもは自身の気持ちを整理し、落ち着く術を身に付けると考えられています。

それでも、物を投げる、ほかの子に危害を加えるなどの行動をする子どももいます。そのような場合、最終手段として「隔離」を行います。これは、子どもを1人だけの空間に置き、周囲の大人が見守ることで、自分で落ち着く機会を与える方法です。

ここで注意したいのは、恐怖を与えるような暗い部屋や狭い空間に閉じ込めることはせず、必ず子どもが落ち着ける空間で行うということです。

いずれの方法においても、最も大切なのは子どもが落ち着いた後に愛情を持って接することです。しっかりと抱きしめて愛情を伝え、なぜ大人が見守りや隔離といった対応をしたのかを説明することで、子どもは安心することができます。

まとめ

オーストラリア式の「叱らない育児」では、子どもを対等な存在として扱い、彼らの行動の背景を理解しながら対応する姿勢が重視されています。しかし、実際の家庭生活では「そんな余裕はない」「つい感情的になってしまう」と感じることもあるかと思います。

そういったときはまず、ぜひご自身のケアを心がけてください。オーストラリアの多くの親は「親自身が幸せであることが子どもの幸せにつながる」と考え、ベビーシッターや家族に子どもを預けて自分の時間を過ごすこともあります。

自身がリフレッシュすることで、より余裕を持って子どもに向き合えるようになるでしょう。

執筆者/トラン摩耶

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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